先日、ある商業施設のトイレを利用し、化粧スペースを含めた全体の広さにまずちょっと驚いた。
そのような公共のトイレ設備に関しては大抵慣れているのだが、この時ばかりは随分と大きな所だなと感じた。 だいたい新しいホテルのロビーや百貨店の婦人用化粧室というものは、昔に比べて格段にデカい空間が割かれている。 それをふまえても広かった。
個室は左側にズラリと並んでいるのだが、右側に化粧及び身なりを整える空間が、どど~んと拡がっていてそちらのほうが特筆すべきなのだった。 壁際に “女優鏡”みたいな照明が付いた椅子掛けの化粧台が一直線に10台ほど並んでいるうえに、荷物も置けて立ったまま鏡で上半身をチェック出来る鏡台がアイランドキッチン仕様で(喩えが変か?)配置されている。 動線部分が狭かったら窮屈といえるけれど充分な通路も確保されている。
さて、自分が化粧台を利用していた時、ほぼ貸切り状態だった。 直後に手洗いを終えた60歳代ぐらいの3人組が、鏡台の側にやってきた。 すると彼女達は口々に慌て始めたのである。
「あれ? 出口どっちやった?」
「えー、こっちと違うの?」
「……どこから入って来たっけ」
「えええっ、ちょっと判らへんやんっ」
「あはは~、ホンマ判らんわ」
「私ら、迷ってるワ、嘘みたい!」
んもう大騒ぎである。
振り向いて教えてあげようかとした瞬間、ひとりのかたが気づいたようで
「こっち、こっち♪」
と、ようやく去ってゆかれた。
改めて見廻せば、確かに広大な面積だけでなく、矢鱈と明るいボール・ランプが壁全体にも貼られた鏡に反射して、光っているわ己が姿が映るわで、出入口が本当に見当たらなくなりそうだ。
何かに似ていると思えば――
『燃えよドラゴン』の最終決戦場所だった。
そのような公共のトイレ設備に関しては大抵慣れているのだが、この時ばかりは随分と大きな所だなと感じた。 だいたい新しいホテルのロビーや百貨店の婦人用化粧室というものは、昔に比べて格段にデカい空間が割かれている。 それをふまえても広かった。
個室は左側にズラリと並んでいるのだが、右側に化粧及び身なりを整える空間が、どど~んと拡がっていてそちらのほうが特筆すべきなのだった。 壁際に “女優鏡”みたいな照明が付いた椅子掛けの化粧台が一直線に10台ほど並んでいるうえに、荷物も置けて立ったまま鏡で上半身をチェック出来る鏡台がアイランドキッチン仕様で(喩えが変か?)配置されている。 動線部分が狭かったら窮屈といえるけれど充分な通路も確保されている。
さて、自分が化粧台を利用していた時、ほぼ貸切り状態だった。 直後に手洗いを終えた60歳代ぐらいの3人組が、鏡台の側にやってきた。 すると彼女達は口々に慌て始めたのである。
「あれ? 出口どっちやった?」
「えー、こっちと違うの?」
「……どこから入って来たっけ」
「えええっ、ちょっと判らへんやんっ」
「あはは~、ホンマ判らんわ」
「私ら、迷ってるワ、嘘みたい!」
んもう大騒ぎである。
振り向いて教えてあげようかとした瞬間、ひとりのかたが気づいたようで
「こっち、こっち♪」
と、ようやく去ってゆかれた。
改めて見廻せば、確かに広大な面積だけでなく、矢鱈と明るいボール・ランプが壁全体にも貼られた鏡に反射して、光っているわ己が姿が映るわで、出入口が本当に見当たらなくなりそうだ。
何かに似ていると思えば――
『燃えよドラゴン』の最終決戦場所だった。