社会保険は長らくいわゆる正社員またはそれに近い労働者を適用対象としてきたが、健康保険・厚生年金保険は(各種要件はあるものの)週20時間以上就労する者が強制適用となり、その要件が今年10月にさらに緩和(適用拡大)される。
また、雇用保険も、週10時間以上就労する者を被保険者とする改正法(令和10年10月1日施行)が先ごろ成立した。
こうした動きを踏まえて、自社内におけるワークシェアリングを考えている会社もある。 というのも、これまでワークシェアリングを躊躇させていた「従業員各人の業務量(端的に言えば労働時間)を減らすと社会保険の適用から外れてしまう」というボトルネックが解消されるからだ。
「ワークシェアリング」は直訳すれば「仕事を分け合う」ことであり、「1人に任されていた業務を複数人で分ける」と説明されることもあるが、イメージで言えば「3人の業務を4人で分担しなおす」というのが現実的なところだろう。 これにより1人あたりの業務量は25%減となる計算だ。
もっとも、業務量が25%減ったからと言って賃金を25%減額するのは労働者が納得しないだろうし、それまでは不要だった“調整”業務が増え、また当然“引き継ぎ”も必要になるだろうから、経営者としては「ワークシェアリングは短期的にはコストアップにつながる」と理解しておかなければならない。
それでも、ワークシェアリングには以下のようなメリットがあるとされる。
まず、マクロ的には、雇用を創出すること、育児中・介護中の者や高齢者等がそれぞれの意欲と能力に応じて働けるようになること、ひいては人口減少社会にあって労働力不足に対処できるようになる、といった効果がある。
個々の企業においても、従業員の健康保持が図れ、組織の連携や一体感醸成にも寄与しうるといったメリットがある。 また、ワークシェアリングを進める過程で業務プロセスの見直し(リエンジニアリング)が必須であることから業務が効率化することも期待できる。 さらには、副次的な効果として、従業員が“自分の時間”(それが自己啓発であれ副業であれ)に得たものが会社にフィードバックされる可能性もある。
もちろん、市場が縮小している業界においては「雇用が維持できる」という最大のメリットがあるわけだが、上に挙げたようにワークシェアリングには他にもさまざまなメリットがあるので、業績が好調であっても、積極的な活用を考える価値があるのではなかろうか。
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