ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

「振替休日を取らせる」という表現の危うさ

2014-07-03 15:09:32 | 労務情報

 従業員に休日出勤させた場合には、基本的には、休日手当を支払うことになる。
 これについて、「休日出勤させても代休を取らせれば、休日手当の支払いは不要」と考える向きもあるが、それは厳密には正しくない。と言うのも、休日出勤させたのが法定休日(原則として週1回)にあたる場合は135%の休日手当を支払うべき(労働基準法第37条)であるので、代休を取らせたとしても、割増しの「35%」の部分については、支払い義務が残ったままになるからだ。

 一方で、「休日出勤させて代休を取らせる」のでなく、「休日と労働日とを振り替える」という形で所定休日に出勤させる方法もある。
 これは労働契約(適法に制定された就業規則を含む)に規定されていれば可能であるし、こういう形にすれば、上述の「割増し部分」も支払わなくて良い。なぜなら、振替えによって「休日」であった日は「労働日」に変わったわけで、そこには「休日出勤」という概念自体が発生しないからだ。

 ところが、これを誤解してか、「振替休日を取らせるので休日手当は支払わない」としている会社も少なからず見受けられる。
 言葉尻を捉えるのは本意でないが、「振替え」とは「特定の休日を労働日に変更し、同時に、特定の労働日を休日に変更する」ことなのだから、「振替休日を“取らせる”」というのは、日本語としておかしいのだ。
 事実、そういう表現を用いている会社では、振替日を予め特定しないまま休日出勤させるという実態が多く見られる。それは「振替え」とは呼べないし、しかも、休日手当を支払わないのだから、すなわち「賃金不払い」ということでもある。また、“代休”が取れないまま働き続けることから、従業員の健康管理の面でも問題がありそうだ。

 「休日の振替え」は上手に利用したい制度であるが、正しい知識に基づいた運用が求められる。


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