お隣の白木蓮が、将に満開を迎えようとしている。
梢の丁度真上辺りを太い電話線が横切って、風情を邪魔しているようにも思えるが、住宅街の花木にとってはごく当たり前の環境で、何の屈託も無い姿に救われる。
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下から見上げると、どの蕾も精一杯に膨らんで、将に満開に備えているかのようだ。面白いことに、蕾の南側のお腹を膨らませて、頭を北側に反らせる姿は、号令を掛けたかとも思えるように揃っているではないか。南側からの陽光が、蕾の南側の発育を促し、日陰になる北側の発育が遅れる結果であろうか。
白木蓮の花は、開花するとかなり大きな花びらを拡げる。この時節は、春何番かの風が吹き荒れるので、純白の花弁に疵が付き、忽ち薄茶色に変色するのが気の毒だ。開花直後の純白の姿が、彼女らにとっては最も晴れやかの数日なのだ。
白木蓮の花咲く季節には、春の嵐には控えて貰いたいものだが、その様な気候が好みで咲き乱れる白木蓮ゆえに、虚庵居士はそんな無理な願いは捨てて、花弁の散り敷く様をも愉しませて貰うことにしている。
見上げれば白木蓮咲く春日かな
葉の一つだに無くて咲くとは
蕾らは頬寄せ合いてささやくや
開花の時を相談するなれ
誰からの号令ならむや蕾らの
ふんぞり返る姿勢に微笑む
純白の白木蓮の花びらを
な疵つけそ 春の嵐よ
白妙の木蓮の花見上げつつ
春日に華やぐ君と語りぬ