「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「黒龍の実」

2014-08-22 07:03:06 | 和歌

 「うつろ庵」の玄関先の寄せ植えの中で、「黒龍」に黒い実が生った。

 「黒龍」は植物図鑑などでは、常緑多年草と区分されるが、ご覧の通り細長い葉は緑を幽かに湛えた黒色だ。細い茎は、稔った実の重さに堪えかねて枝垂れているが、黒光りしている実も僅かに緑色を湛えた、ごく稀なものだ。



 庭や鉢植えの草花は、昨今では圧倒的に外来種が多いが、黒龍の原産地は、歴とした日本産だ。「リュウノヒゲ」とも呼ばれるが、黒く細長い葉を、仮想の動物「黒龍」の髭に見立てたものであろう。

 晩春に黒龍の花の写真を撮ったことを思い出して、写真集を探したら、寄せ植えの写真が見つかった。薄紫色を帯びた白い小花が、黒龍の花だ。

 花穂の脇に寄り添って若葉が立ち上がっているが、若葉は緑がかなり濃いようだ。日を経てしだれる様になると、葉の緑は黒に変色する様が見て取れる。




           ベゴニアの手弱女の花咲くその傍に

           黒ひげ靡かせ黒龍みのりぬ


           つややかな黒き実房に見惚れけり

           「黒龍」躍るを瞼に描きて


           黒龍は玉を抱くや一つならず

           するどき手爪に実房をこぼして 


           いにしえの人々何を夢見るや

           黒髭の葉と黒き珠玉に


           わぎ妹子は寄せに植えにし龍の髭を

           たずねまほしき託す思ひを