「うつろ庵」の藪椿の下で、遅咲きのクリスマスローズが咲き初めて二・三週間ほど経った。 この花には様々な種類があるらしいが、クリスマスの頃から早春にかけて咲くので、この冠名が付けられた様だ。
クリスマスローズは俯いて咲くので、上からの目線では綻びすら識別し難い程だ。虚庵夫人は鉢に植え、尚且つ60センチ程の高さのスタンドに据えて、花の位置を 高くしているが、それでも花の蕊にご挨拶するのは難儀だ。
寒中に咲くクリスマスローズを、もっと早い時期に写したかったが、咲き初めから 花が十分に開くまでに、ほぼ半月を要してやっとカメラに納まって呉れた。
ほとんどの種類の花は、開花とともに「見て観て」誇らしげに訴えるのが一般的だが、クリスマスローズに限っては不思議なことに、極めて控えめで、慎ましやかだ。
何ゆえに、こうべを垂れて咲くのだろうか。 対面する相手の顔を覗き込むのは凡そ失礼千万だが、「うつろ庵」の同じ住人故に、ご無礼をお許し願ってカメラに収めた。
路地植えのクリスマスローズは、先に咲いた福寿草に顔を寄せて、恰も話かけて いる様な風情であった。カメラに写すのを一日伸ばしに遅らせていたら、福寿草は「待ちきれませんよ」 と宣て、ハラリと花びらを散らせ、「イガクリ頭」が後に残った。
「クリスマスローズとイガクリ頭」では、どんな会話が交わされるのだろうか?
遅咲きのクリスマスローズの開花から
半月待つかな 笑顔を観むとて
何故ならむ こうべを垂れて咲く花の
こころを聴かむと蕊に問ふかも
咲く花の後ろ姿は寂しとて
我妹子高みに鉢を据えにし
藪椿の足元に咲く福寿草に
顔寄せ囁くクリスマスローズは
福寿草とクリスマスローズの語らひを
写さむと待てば黄花散るかも
クリスマスローズの花に寄り添ふて
イガクリ頭は何語らふや