これほどに様々な名前を持っている植物は、稀だろう。
英語では”Dollar Plant”と呼ぶそうだ。肉厚の葉がコインに見えることからの呼び名であろう。日本では「金のなる木」、或いは「成金草」などが一般的だ。穴あき硬貨の五円玉や五十円を新芽に載せておけば、穴を通して葉が成長して、やがて「お金がなる」状態になる。
「お金」にまつわる名前は、庶民には裕福になった気分が味わえるので、洋の東西を問わず、「お金」にまつわる呼び名が付けられたのであろう。
一方では、「花月・かげつ」或は「縁紅弁慶・ふちべにべんけい」との和名もある。
植物図鑑に依れば、この多肉植物は弁慶草(べんけいそう)科に分類されるそうだが、冬から初春にかけて、葉の縁が見事に紅色を帯びるので、「縁紅弁慶」との命名は頷ける。「花月」の由来は調べてないが、想像できる範囲の命名で、優雅な名前だ。カメラに写しつつ虚庵居士は咄嗟に、「紅の爪先」との呼び名が頭に浮かんだが、如何なものであろう。
それにしても、これ程沢山の呼び名があるのは、世界中の皆さんに可愛がられている証しであろう。 子供の頃から現在に至るまで、皆さんも様々なニックネームや 呼び名を賜わったことであろう。それらは皆さんが頑張った、人生の勲章だ。大いに誇りにしたいものだ。
凍えつつ降り立つ庭には紅の
爪先透けて花月はいとしも
縁紅の弁慶草の緑葉は
おしゃべりするかな春の陽に透け
紅は 爪先ならず 乙女らの
唇ならむか 声きく心地す
あまたなる呼び名・あざなや ニックネームは
此の世に励んだ証しと誇れや