「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「八戸えんぶり」

2010-02-19 00:29:25 | 和歌

 八戸工業大学で開催した「学生とシニアの対話in八戸」に参加し、請われて基調講演をさせて頂いた。青森県は東北電力の東通原発、Jパワーの大間原発、六ヶ所村の原燃サイクル施設、むつ市の使用済核燃中間貯蔵施設、更には東電の東通原発計画などが目白押しだ。この様な一大原子力拠点のニーズに応えて、八戸工業大学は「チャレンジ原子力体感プログラム」を実践してきたが、今年度もプログラムの一環としてシニアとの対話会を開催したものだ。

 2月17日は、「八戸えんぶり」の開幕日で賑わっていたが、この祭と重ねて「対話会」を開催した意義を、基調講演の冒頭で学生諸君と共に考えてみた。

 約800年の歴史を誇る国指定の重要無形民族文化財「八戸えんぶり」であるが、「伝統の技と心」の
伝承と、市民が一丸になって盛りあがる「祭」は、考えようによっては「原子力の技術伝承」と相通じるものがある。「知の創造と蓄積」或いは「高度の技術」は、いかに優秀な技術者であっても一人では成し得ない。原子力の高度な総合技術は先人の知恵と技術を如何に伝承するか、更には先輩達の心血を注いだ「こころ」を如何にバトンタッチするかが、極めて重要な課題だ。「八戸えんぶり」の伝統も、この様な伝承がシカと受け継がれて来たことに思いを致して、「対話会」の意義を改めて確認した。

 熱のこもった対話を重ねた後は、ささやかな懇親会で打ち解け、くだけた交流のひと時を楽しんだ。





 懇親会がはねて、八戸市々庁前広場で催されていた「かがり火えんぶり」を観覧した。
幸いにも舞台最前列に一人分のスペースが残っていて、そこに座を占めた。 お隣には土地の老医が、既に御酒を愉しみつつ「えんぶり」を待っていたので、彼に倣って「熱燗」を手に入れて「地摺」をまった。
シニアの呑助同志はたちまち意気投合して、話がはずんだ。初めて観覧する「えんぶり」は、謡の言葉も地摺の動作も全てが奇異に感じられたが、老医が丁寧に解説して下さってので、おお助かりであった。





 太夫が手にもつ「ジャンギ」の音、「手平鐘・てびらがね」の独特な音色と拍子、横笛や小太鼓などの
お囃子もほど良く酔いが回った体に心地よく響き、「招福舞」や「えびす舞」などの祝福芸も笑いを誘って、親密感が溢れる「えんぶり」であった。4歳か5歳ほどの子供も祭の衣装を着飾って楽しそうに踊る姿には、じじ・ばばも目を細めて手を打つに違いあるまい。

 根雪がとけない北国に春を呼び寄せ、五穀豊穣を願う「えんぶり」は、この土地ならではの冬の祭として、永く受け継がれてきた。土地の皆さんのその思いが、胸にじわーっと伝わってきた。






            目を瞠り耳を澄ませて講演を

            聴き入る姿に思いを託しぬ


            「えんぶり」と原子力との相関を

            共に語りぬ伝えるこころを


            「えんぶり」を熱燗酌みつつ語らえば

            たちまちにして爺も朋かな


            化粧して祭の衣装に身を包み

            踊る子供に託す夢かな