「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「蘇芳梅と緑萼」

2010-02-15 17:32:21 | 和歌

 「うつろ庵」の蘇芳梅と、お隣の白梅「緑萼」が道路を挟んで相対して咲いている。

 深紅の蘇芳梅が若干速めに開花して、後から咲く白梅を待つのが例年のことであるが、この時節は東風(こち)が吹いた後など、紅白の花びらが舞い散って、あたりは殊のほか風情にあふれる。庭掃除では落ち葉だけを掃いて、紅白の花びらは風の吹くままに任せ、余韻に酔いしれる虚庵居士である。


 


 お隣の白梅が植えられるまでは、「うつろ庵」の八重咲きの紅梅だけが早春の彩であったが、今では紅白が対になって咲くので、格別の趣が醸しだされている。お隣さんからご相談があったわけではないが、場所的にも紅白が対峙する位置を選んで植えて下さった。「蘇芳梅」は若枝までもが深紅の皮で覆われるが、お隣の白梅は萼も若枝もが緑色の「緑萼」だ。八重咲きの深紅の梅花に相対するには、緑が白い花びらを際だたせる「緑萼」を選んだものと思われるが、お隣さんと植木屋の感性に感謝している。





 梅の季節が過ぎてやがて暖かな春を迎えれば、「うつろ庵」の周辺はつつじの咲き乱れる住宅街に変貌するが、その際もお隣さんとは道路を挟んで向う側がピンクのつつじ、こちら側は白つつじのフラワーベルトの対になって、見応えがある。
このつつじの対比は同時期に宅地造成した業者の、「遊び心」の遺産だ。

 普段は言葉を交わす機会も少ないお隣さんであるが、競い合うのではなく、花同志がお互いに惹きたて、盛りたて合ってくれるお隣さんである。






            七重八重 あつきこころを蘇芳梅は
            
            咲きてほてりを寒気にさらすや


            老いたれば漂う梅が香の聞き分けも

            侭ならぬ身のかなしかりけり


            緑萼と緑枝に咲くかな白妙の

            梅が香りをきかまほしけれ


            仰ぎ見れば無限の蒼穹うめ尽す

            梅が花木の虜か翁は