「うつろ庵の」裏庭の片隅に、「ときわつゆくさ・常盤露草」の清楚な花が一輪咲いた。
空色の露草は、空き地などでよく見かけるし、紫錦露草は園芸種として多くのお宅の庭先に植えられているが、純白のこの花は初めての出合いである。偶然にも「うつろ庵」に根を下して、虚庵居士を愉しませてくれるとは。
花の名前すら知らぬのを恥じて、早速、花図鑑で調べた。「常盤露草」、瑞々しい緑が一年を通して保たれるゆえに、「常盤」との名前が付けられたという。別名、野博多唐草(のはかたからくさ)とも呼ばれるが、その謂れについては解説が見つけられなかった。
いずこより訪なひ来たるや我が庵の
庭に咲くかも ときわつゆくさ
薫る風に ときわ露草 きらめくは
黄金の六星 髪の飾りか
「うつろ庵」の庭だけに遣わされた、気高き神の使者かと誇らしく受け止めていたが、お隣のつつじの花が枯れた合間にも、同じ「常盤露草」が咲いていた。こちらの花は、莟を二つ伴なって両手よろしく、どこか「お茶目」な女の子を思わせる。
しろたえの常盤つゆくさ花殻を
衣片しく春の寝ざめか