今年もまたうつろ庵の「ぐみ」が、小枝一杯に花をつけた。
花は目立たない素朴なもので、人に言わせると「華がない」などと悪たれ口を叩く向きも向きもあるが、近寄って観ると、なかなか気品がある。
ガレージの隅の、ほんの僅かなスペースから身を乗り出すように、小枝を伸ばして、花を咲かせている。「茱萸・ぐみ」の木には気の毒ではあるが、毎年かなり大胆な剪定をするのだが、それでも又新たな枝を伸ばし、花をつけ、赤い実をつける逞しい生命力には感服させられる。この「茱萸」からは、「斯く生きよ」との無言の訓えを頂戴し、大切にしている。
ぐみの花 写さむものと 構えおれば
何の花ぞと 老夫 問いにし
あの赤き ぐみの実の花 初めてと
目を輝やかす 老いたる夫妻は
ぐみの花の華やぐかんばせご覧あれと
夫妻にかざしぬ小枝を撓ませ
改めて 老眼鏡を 取りいだし
感嘆もらしぬ 小じわの口元