「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「ほうちゃく草」

2009-05-12 13:30:36 | 和歌

 「うつろ庵」の玄関脇の木陰に、「ほうちゃくそう・宝鐸草」がひっそりと咲いた。

 蘇芳梅や金木犀は、この季節には木の葉が茂って、根方には殆んど木漏れ日も届かないが、
「ほうちゃく草」はそれを意にも介さぬ態で、花を付けた。植物学はとんと素人の虚庵居士であるが、
この花は照りつける陽ざしよりは、むしろ木漏れ日ていどか或は柔らかな日陰を好むのであろうか。

 人間様でも、陽のあたる目立ちたがり屋も居れば、どちらかと云えばスポットライトの当たらない、目立たない処が居心地がいいと云う人間もいる。草花も人間も、それぞれの個性を見極めて、それぞれに
見合った環境を設えてやることが肝要だ。

 ところで、我々の日常生活の中では、「宝鐸・ほうちゃく、ほうたく」或いは「風鐸・ふうたく」など殆ど目にしないが、風鐸の出土品が歴史文化財として、教科書に掲載されていたのが思い出される。

 重層建築の軒先の四隅に吊り下げられ、風に揺られて荘厳な響きを奏でるあの飾が、風鐸・宝鐸だ。垂れ下がって咲く花の姿が、この宝鐸に似ていることから、古人は「宝鐸草」と呼んだのであろう。

 「宝鐸草」は、セワシイ無宗教の生活を送る現代人に、仏教文化と身近な生活を送っていたであろう
昔の人々が、草花に託す感性に思いを致せと、呼びかけているのかもしれない。





             木のもとにひそと咲くかもほの白き

             ほうちゃく草は花をつり下げ


             宝鐸の花咲くそばに佇めば

             伽藍に響くをこころに聴くかも