「うつろ庵」の「ぐみ」が、ひっそりと咲いた。
目立たない花ゆえに、道行く人は殆ど気にも掛けないが、近寄って見れば、小さいながらも己の花に誇りを持って、気品を保って咲いているのに心うたれる。虚庵居士は、華やかな花も好きだが、「これ見よがし」なのはどうも魅力を感じない。どちらかと言えば、控えめに咲く花に、心惹かれるものがある。
「ぐみ」の花には華がないが、それなりに気品を湛えて咲く姿、自然の偉大さに訓えられる。
行く人も気づかぬ「ぐみ」の小花かな
ただひたすらに咲くぞいとしき
白妙の「ぐみ」の小花ぞ ちはやぶる
神も見てしか気品を備えて
梅雨時の赤き「ぐみ」の実わすれめや
口に含めば甘くも渋きを