「うつろ庵」の近くの海棠が、今を盛りと咲き誇っている。
虚庵居士の心の友人、蘇軾先生・東坡居士は、海棠の熱烈なファンでした。
拙著「千年の友」からの抜粋です。
海 棠 蘇東坡 詩
東風渺渺泛崇光 香霧空濛月転廊
只恐夜深花睡去 故焼高燭照紅粧
春のおぼろ月夜。時の経つのも忘れて海棠をめで、夜も深けて霧が立ちこめてきました。
「海棠が睡ってしまいはせぬか・・・」と恐れた先生は、何と、燭台を高く掲げて、紅の花を照らし続けたと自ら詠うのですから、恐れ入ります。
夜も深けて たなびく霧に 海棠の
睡るを恐れ ともしびかかげぬ
蘇東坡先生の七言絶句に歌を和した当時は、海棠の花自体は知っていましたが、何せ盆栽仕立てでしか鑑賞したことがありませんでしたから、斯くも見事に咲き誇るとは、つゆ知りませんでした。このように誇らしげに咲くのでしたら、蘇東坡先生ならずも、入れ込みたくなるのがよく理解できます。改めて、彼と一献酌み交わしたい気分です。
海棠の斯くも誇れば千年を
超えて酌みませ 東坡居士どの
海棠を誇る住み人偲ばるる
蘇東坡ならずも愛ずる心を