「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「蘇東坡ならずも」

2006-04-04 00:04:17 | 和歌

 「うつろ庵」の近くの海棠が、今を盛りと咲き誇っている。

 虚庵居士の心の友人、蘇軾先生・東坡居士は、海棠の熱烈なファンでした。
 拙著「千年の友」からの抜粋です。

     海 棠      蘇東坡 詩

     東風渺渺泛崇光  香霧空濛月転廊
     只恐夜深花睡去  故焼高燭照紅粧
 
 春のおぼろ月夜。時の経つのも忘れて海棠をめで、夜も深けて霧が立ちこめてきました。
「海棠が睡ってしまいはせぬか・・・」と恐れた先生は、何と、燭台を高く掲げて、紅の花を照らし続けたと自ら詠うのですから、恐れ入ります。



             夜も深けて たなびく霧に 海棠の

             睡るを恐れ ともしびかかげぬ


   





 蘇東坡先生の七言絶句に歌を和した当時は、海棠の花自体は知っていましたが、何せ盆栽仕立てでしか鑑賞したことがありませんでしたから、斯くも見事に咲き誇るとは、つゆ知りませんでした。このように誇らしげに咲くのでしたら、蘇東坡先生ならずも、入れ込みたくなるのがよく理解できます。改めて、彼と一献酌み交わしたい気分です。



             海棠の斯くも誇れば千年を

             超えて酌みませ 東坡居士どの



  




             海棠を誇る住み人偲ばるる

             蘇東坡ならずも愛ずる心を