川端裕人のブログ

旧・リヴァイアさん日々のわざ

指輪物語とインターネット

2008-06-10 17:59:15 | 雑誌原稿などを公開
これは、2004年くらいに共同通信か時事通信に書いたエッセイ。

言及されるのは、指輪のDVDなど。
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指輪物語とインターネット

 ファンタジーの大作「指輪物語」とインターネットが密接な関係にあると言うと多くの人は驚くだろう。でも事実である。いや「史実」といった方が正確か。
 
 実は北米で「指輪物語」が爆発的に読まれていた時期とインターネットの草創期は重なる。ベトナム反戦運動が盛んだった頃だ。「指輪」は超大国の強大になりすぎた「力」を捨てる物語に読み替えられ「ガンダルフを大統領に!」を合い言葉にデモに参加する者が続出した。
 
 その一方、大学の奥深く(?)で一部の研究者に独占されていたコンピュータを有効利用できるよう、ネットを繋げた初期ハッカーたちも「力」の独占に批判的なヒッピー的民主主義者だった。
 
 だから、当時のネットユーザの多くが「指輪」の熱心な読者だったことは、ごく自然なことなのだ。電子メールのアドレスや、ネットに繋がったコンピュータの「名前」に相当するドメイン名には、フロド、ガンダルフといった「指輪」由来ものが競ってつけられ、メーリングリストでは「指輪」について大いに議論されたという。
 
 こういった「史実」に加え、「指輪/ネット」の連合が、我が国のサブカルチャーに直接影響を及ぼした経緯もある。インターネットの「本質」である経路制御プログラムを開発したハッカーは「指輪」をモチーフにした卓上ゲームのファンで、それをコンピュータでプレイできるプログラムを書いた。これがパソコンゲームを経て、「ドラクエ」や「FF」など、「ロールプレイングゲーム」の原形となったのだ。
 
 ここ数年、オンラインRPGが流行している。複数のプレイヤーがインターネットを介して「もう一つの世界」に接続し、そこで冒険を楽しむ。「エバークエスト」など代表的なタイトルをプレイすると、確かにここには「指輪」を読んで「中つ国」にどっぷりと浸かり込むのと似た感覚がある。結局、ネットと「指輪」は、草創期の「史実」を超えて、今も親和性が高いのだと印象づけられた。
 
 さて、「指輪物語」の映画化作品「ロード・オブ・ザ・リング」は、北米では「ハリーをしのぐ」人気だそうだ。そこでぼくはインターネットとの関係がふたたび気になり始めている。
 
 反戦運動の中で「指輪/ネット」が結びついたように、今回は同時テロ後の愛国ブームにわく時代背景だ。そういえば、9月11日直後「愛国の言説」に支配されたアメリカで、唯一「報復の連鎖を断て」と正論を提示しえたのは、既存マスコミではなくインターネットの小メディアだったとぼくは認識している。
 
 これは何を意味するのか。「力を捨てる」指輪の物語が今、多くの人に観られることが、悲劇の無限連鎖をくい止めるための「気付き」となるためには、マスコミではなくやはりネットが鍵を握るということだ。「指輪」と「ネット」の関係は、今まさに我々の世界のとても本質的な部分にかかわろうとしている。
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追記@2008
まあこれも有る意味で、スープネタなですよね。
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