川端裕人のブログ

旧・リヴァイアさん日々のわざ

適応なのか、適用なのか、それとも適合なのか

2005-02-07 02:10:54 | 日々のわざ
最近、医学系の文献を読むことが多くて、ちょっと気になっていること。

あなたは(あなたの症状は、状態は)、この手術(この薬の)適応です、といふうによく言うでしょう。

普通の日本語なら、「この手術が適用できます」とか、「適合しています」とか言いそうなものだけど、それを「適応」という。

広辞苑でみてみたら、「適応」という言葉自体には、そう使える要素はないわけじゃないけど、薄い感じがするわけです

ただ、

てきおう‐しょう【適応症】(‥シヤウ)
薬剤・手術その他の治療法について、それが適用されて効果をあらわす疾患または症候。

という用例があって、つまり、「あなたは○○の適応」というのは、「○○が効果をあらわす適応症」という意味で使われているわけなんだろうなあと理解。

また、薬剤について「適応と禁忌」という対の言葉でも使われているのもよくみるし、一応、医学用語として、納得できるかな、と。

でもね、それが、日常用語としての、「適用」や「適合」を浸食するわけですよ。

たとえば……先日、レーシックの検査を受けた南青山アイクリニックのパンフレットには、「この処置は、保険の適応になります」というような記述があるのだけれど、さすがにこれは「適用」じゃないでしょうか。それとも、保険だから、医学用語の「適応」なわけ?

このクリニックの例はたまたま最近見たから挙げただけで、ほかにもいろいろあります。これが特に「ひどい用例」というわけじゃありません。

とうなんでしょうか。
気になってるのはぼくだけ?


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11 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
適用は法律用語。生物学的には適応(進化する過程... (sionoiri)
2005-02-07 07:53:56
と、云われてみて、初めて考えてみるが?
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書くことを仕事にしている人って、とても言葉に敏... (リャン)
2005-02-07 10:30:56
最近川端さんの書いたものを読んでいると、全然知らない言葉とか、言い回しとかがあって、思わず辞書で調べてしまう事があるのですが、日本語にはいい表現がまだまだあるんだなと再認識しています。
(私の書く文はとても変なんだろうなぁと反省・・・だけ)
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sionoriさん、生物学用語的な「適応」だとしたら、... (本人)
2005-02-07 11:27:34
生物学的「適応」って、システムとシステムの相互作用の中で、創発的になにかが選択的に決まっていく時に使うような気がします。だから、「適応と禁忌」の適応も、「この治療法は、あなたの適応である」というのも、すごく違和感があります。
むしろ、医学特有のジャーゴンと割り切った方が、すっきり理解できる、と思った次第。最初に誰がこの言葉をこういうふうに使ったのか興味深いです。
ちなみに、適用って法律用語なんですか? もし、出自がそうでも、一般に使われており、その使われ方を気にしております。法律用語だとしたら、ますます保険については「適用」である気がしてきました。

りゃんさん、辞書って大事です。って、そういう話ではないけど、複数の辞書をひくと楽しいです。
別に辞書に「本当のこと」がかいてるわけではなく、言葉はダイナミックに変化するものであるがゆえ。
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本当だ、広辞苑によれば、まず法律用語としての「... (本人)
2005-02-07 11:32:02
てき‐よう【適用】
(法律・規則などを)あてはめて用いること。「新税法を?する」「労災保険の?」

というふうに。
でも、用例から、やっぱり保険は「適用」なのね。
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うちの上司のレーシック治療について聞いてみまし... (浅野耕一郎)
2005-02-07 11:35:28
うちの上司のレーシック治療について聞いてみましたところ、wave-frontではなかったそうです。「ave-Frontのほうが新しい技術で、ものすごく近視のきつい人でもできるようになったらしいんだけど、私の視力だといままでので問題ないということだったのででそれにした。料金も10万くらい違うといわれた」とのこと。というわけで本人曰く「普通の」レーシックだったそうです。参考にならなさそうですみません。
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ジャーゴンというか専門用語です。indicationの訳... (中澤)
2005-02-07 13:01:19
adaptationの適応とは違います。
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研究社の中辞典によれば…… (本人)
2005-02-07 13:24:23
*in・di・ca・tion /*nd*k****n/→*
**
1 * [具体的には *]
a 指示(すること); しるし,兆候 [of].→*
b *+that*指示; しるし,兆候.→*
2 * (計器の)表示(度数), 示度 [of].
*INDICATE+-ATION*


つまり、その「指示」に近い意味でのindication?

いずれにしても、専門用語としての「適応」が、「適用」や「適合」がより「適している」ところにまで、混同されて使われているのは事実であると思いました。

そうそう、ジャーゴンって、日本では隠語、みたいな意味で使われることが多いですか? 英語のjargonって、もちろん「素人には分からない」という意味で隠語なんだけど、専門用語に使うことが多いような印象があります。
ま、印象。
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あ、浅野さん、どうもありがとうございましたー。 (本人)
2005-02-07 13:39:04
まだまだwave-frontは症例が少なく、本当にいいのか、分からないのが悩みの種のようです。
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英語のindication自体がmedical technical termと... (中澤)
2005-02-07 13:45:27
意味があって,日常用語のindicationとは違うようです。

ステッドマン医学大辞典では,
indication
[L.
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大変、腑に落ちる、説明ありがとうございます。 (本人)
2005-02-07 13:51:12
ぼくはエッセンシャリストではないので、こういう「歴史的理解」やら「いきがかりの理解」を得ることの方が、腑に落ちる感じがするようです。

「適応」の起源と定義がわかったことろで、あとは、医学な領域の人たちが、適用やら適合と、上手に使い分けてくれたらいいなあ、と。別に目くじら立てることじゃないけど、なんかもぞもぞと気持ち悪いんですよねぇ。
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