素数に憑かれた人たち ~リーマン予想への挑戦~ 価格:¥ 2,730(税込) 発売日:2004-08-26 |
ぷはーっと、読み終わって深呼吸。
濃い本でした。
ゼータ関数、素数定理、リーマン予想。
素数をめぐる数学者たちの知的格闘の歴史。
そもそも、リーマン予想。
ζ(s) の自明でない零点 s は、全て実部が1/2の直線上に存在する。
と言われても、問題そのものがフェルマーの最終定理ほど分かりやすくなくて、たぶん多くの人にとっては、意味不明じゃないですか。
だから、この本は、予想がどのようなものなのか、理解するための道具について、ひとつひとつ説いていき、最終的には「予想」を理解した上で、それが含意する豊穣な世界をかいま見せる、ところまでいくわけです。
これ以上、分かりやすくはできないだろうというくらい、懇切丁寧に書いてあって、もう感動的なんですよ。
ほんと、いくつものセンスオブワンダー。数論が代数学や解析学に繋がっていくカタルシス。
正直に言うと、19章と21章の後半、置いて行かれたところがあるのだけれど、それでも大満足。
なんで、ゼータ関数が、物理学と関係してくるのか、長年疑問に思っていたことも、大まかなイメージを掴むことが出来たし。
いや、本当に数学恐るべし。
あと、訳文がいいです。
日本語として、こなれているというのではなく、原文の論理性をうまく移し替えている、という意味で。
特に、関係代名詞の訳し方なんて、絶妙だと思う(原文を見ていないけれど、コンマで区切られたゆるい関係代名詞をよく使う著者だと想像)。
論理的な筆捌きが何かに似ているなあ、と思っていたら、この前読んだ「感染症疫学」かもしれないと思い当たりました。
ちなみに、「博士の愛した数式」の副読本にいいかもしれない。
いや、どっちが「主」なのか分からないけれど。
さて、課題。
和算でリーマン予想は表現できるか……複素数を導入しなきゃならんですね。
あるいは、素数定理はどのように表現できるか……。
追記
アマゾンの書評をぱらぱら見ていたら、本書の翻訳がひどい、という主旨のものがあった。
やっぱり!
そう思う人はきっといるだろうと、感じていた。
たしかに、日本語としてはこなれていないところはたくさんあるのだ。
ただ、原著のロジックをすごく上手に掬い上げていると思う。
だから、とてもすんなり頭に入ってくる。変にこなれるよりも、こっちの方がいい。
ぼくはむしろ素晴らしい訳だと感じた。