って、多くの人に何がなんだか分からないと思うので、解説します。
著作権の話題です。音楽CDのコピープロテクト、いわゆるCCCDの問題とかに興味を持っていた方などなら、こちらも興味を持って読んでいただけるかもしれません。
まずことのきっかけは……自分が書いた本を、目の見えない視覚障害者に楽しんでいただくために録音で提供(メディアはCD-ROM)したり、という許諾はこれまでもしてきたのですが、さらに進んで、テキストデータそのものをディジタルメディアに乗っけたいという許諾願いが、ぼくのところに届いたのです。
視覚障害者の中でも大きな文字なら見える弱視(ロウ・ヴィジョンというそうです)の人たちには、録音書籍よりも、こちらの方がより適しているとのこと。また、学習障害の人が読みやすいように使えたり、「音と文字」を同時に提供できることで、なかなか書籍を読みにくい人たちに届きやすくできる、とのこと。
いい話です。基本的にはオーケイです。
そこで、どんな形で、ということになるのですが、その規格がマルチメディアデイジー。デイジーとは、Daisyで、Digital Accessible Information Systemの略。さまざまな形態のディジタルデータにアクセスするための規格、ということなっていいます。これまでのところは、デイジーといえば、視覚障害者のために録音したものをディジタルデータとして、CD-ROMで貸し出す、ということが多かったため、デイジー=ディジタル化された録音図書、というようなものだと思われいてるようです。
今回許諾の打診があった「マルチメディアデイジー」では、音だけではなく、テキストや画像をのっけられるようなります。実はデイジーの元々の定義では、これこそ本当のデイジーです。まさに、Digital Accessible Information System。メディアはCD-ROMであれ、フラッシュメモリーであれ、ネット上での配信であれ、論理的にはなんでもあり、です。
で、当然、問題になるのは、コピー問題ですね。テキストデータをディジタル化するわけだから、そのあたりどうなるのか。かつて、音楽CDが直面したのと同じことが、かなり小規模ではあるけれど、本質的な部分では同じ問題としてやってきたわけです。
あ、当然のこととして書きませんでしたが、許諾は無償です。点字訳なんかと変わりません。つまり、無償でテキストデータを出回らせる、ことになるわけです。
せっかくなので、それについて、少し調べ、考えました。
さてさて、何から書いていけばいいか。
まずマルチメディアデイジーという規格(http://www.daisy.gr.jp/daisy/daisy.html)のコピー対策について。
デイジーを用いたマルチメディアシステムなどの開発を行っている会社(株式会社エルザ、http://www.elsa.co.jp/)に電話したりして、技術者の方に教示願いました。
そうしたら、もうこれがまるっきりのノーガードなんです。
テキストデータは、本当に生のテキストデータ(htmlで記述される)であって、コピーガードはいっさいなし。違法コピー対策もなし。というようなシロモノなのですね。
ここまで来るとすがすがしいです。
また閲覧ソフトもオープンソースでやっていくことになっていたり、GPLに準じるライセンスをうたっていたり、つまり、かなり、オープン指向の思想のもとに開発されてきたものなのですね。
実はこれは結構好きです。
編集者に相談してみると、どちらかといえばネガティヴな意見が多し、です。まあ当然です。たしかにコピー自由のフォーマットで、なおかつ無料で、自作のテキストを流通させてしまっていいのだろうか、と。
これって、音楽CDを違法コピーされるのを心配するミュージシャンと同じとはいわないけれど、似た立場なわけですね。そういえば、moonridersだったか、くるりだったか、triceratopsだったかが(すごい記憶が曖昧!)が、ライヴに来たお客さんに未発表曲のCDを配って、ネットではばらまいたりしないでね、と良心に訴えた(?)みたないことがあったけれど、あれに近いようで……やっぱり、似ていたとしても、同じではないです。
で、悩んだわけです。細かいたことは飛ばして、先に結論をいうと……
いいんじゃないかな。
マルチメディアデイジーソフトの制作を許諾しようと思っています。
今、許諾を打診されている、四作、許諾するつもりです。
「夏のロケット」
「クジラを捕って、考えた」
「緑のマンハッタン」
「今ここにいるぼくらは」
なぜか、というと、今の時点で、テキストデータをCD-ROMで貸し出したからといって、カジュアルコピーをする人はいるかもしれないけれど(いや、するでしょう。ぼくならすると思う)、それで、本が売れなくなるとは考えられない、ということ。逆に、何十万部も売れるようなベストセラーだったりすると、潜在的な本の売れ行きを阻害する可能性はあるかもしれないわけですが(なにしろ、話題本をタダでつまみ食いできるわけだから)、そこまで売れれば、食うに困らぬ印税は入ってくるわけで、問題なし、ということにしようか、と(その前に、何十万部売れる本をきみが書くのかとツッコミあり)。
それに、一番基本的なことなんですが……、物書きにとって「勝利」というものがあるとすれば、それは多くの人に読まれることなのです。なかなか届きにくい人たちに、わざわざ人が労力を使って、届けやすい形に変換してくれるのを歓迎したいという部分が大きいです。
ただ、ネット配信は、今のところ留保。
現状では、ネットでのマルチメディアデイジーのサービスの提供はほとんど進んでいないようだし、今後、本格化してきたときにあらためて考えます。
マルチメディアデイジーのテキストデータのネット配信って、かなりネットでの通常の作品販売とバッティングするんですよね。いずれもまだ未成熟な状態であって、どんな形でこれらが妥協点を見いだすかというのは、ごく近いうちに動きがある気がします。ひょっとして、今の出版者側の電子出版の枠組みの中で、現在のマルチメディアデイジーのユーザが簡便に利用できるサービスができることだってありえるわけだし(そんなに難しいことじゃないです、きっと)。
デイジー側か、ネット出版側か、どちらが先に現実的な配信スキームを提供できるか。その時になってから、考えても遅くないと思うのです。
まあ、いずれにしても、権利権利と言い立てるのは、あんまり本意ではないし。どんなかたちであれ、「届けられない人」がいるなら、届けてほしいです。
なんて、考えていると逆にワクワクしてきましたね。
で、最後、一つだけ問題が。
これらのことを許諾する権利は基本的にぼくにあるということになっているらしいです。
でも、各版元との契約の内容によっては、何かとバッティングする可能性はあるわけで、そのあたりをきちんと確認しておきたいわけですね。
というわけで、このエントリを、上記の本の編集者さんたちに読んでもらって、検討していただこうか、と。
まあ、たぶん大丈夫、ですけど。
著作権の話題です。音楽CDのコピープロテクト、いわゆるCCCDの問題とかに興味を持っていた方などなら、こちらも興味を持って読んでいただけるかもしれません。
まずことのきっかけは……自分が書いた本を、目の見えない視覚障害者に楽しんでいただくために録音で提供(メディアはCD-ROM)したり、という許諾はこれまでもしてきたのですが、さらに進んで、テキストデータそのものをディジタルメディアに乗っけたいという許諾願いが、ぼくのところに届いたのです。
視覚障害者の中でも大きな文字なら見える弱視(ロウ・ヴィジョンというそうです)の人たちには、録音書籍よりも、こちらの方がより適しているとのこと。また、学習障害の人が読みやすいように使えたり、「音と文字」を同時に提供できることで、なかなか書籍を読みにくい人たちに届きやすくできる、とのこと。
いい話です。基本的にはオーケイです。
そこで、どんな形で、ということになるのですが、その規格がマルチメディアデイジー。デイジーとは、Daisyで、Digital Accessible Information Systemの略。さまざまな形態のディジタルデータにアクセスするための規格、ということなっていいます。これまでのところは、デイジーといえば、視覚障害者のために録音したものをディジタルデータとして、CD-ROMで貸し出す、ということが多かったため、デイジー=ディジタル化された録音図書、というようなものだと思われいてるようです。
今回許諾の打診があった「マルチメディアデイジー」では、音だけではなく、テキストや画像をのっけられるようなります。実はデイジーの元々の定義では、これこそ本当のデイジーです。まさに、Digital Accessible Information System。メディアはCD-ROMであれ、フラッシュメモリーであれ、ネット上での配信であれ、論理的にはなんでもあり、です。
で、当然、問題になるのは、コピー問題ですね。テキストデータをディジタル化するわけだから、そのあたりどうなるのか。かつて、音楽CDが直面したのと同じことが、かなり小規模ではあるけれど、本質的な部分では同じ問題としてやってきたわけです。
あ、当然のこととして書きませんでしたが、許諾は無償です。点字訳なんかと変わりません。つまり、無償でテキストデータを出回らせる、ことになるわけです。
せっかくなので、それについて、少し調べ、考えました。
さてさて、何から書いていけばいいか。
まずマルチメディアデイジーという規格(http://www.daisy.gr.jp/daisy/daisy.html)のコピー対策について。
デイジーを用いたマルチメディアシステムなどの開発を行っている会社(株式会社エルザ、http://www.elsa.co.jp/)に電話したりして、技術者の方に教示願いました。
そうしたら、もうこれがまるっきりのノーガードなんです。
テキストデータは、本当に生のテキストデータ(htmlで記述される)であって、コピーガードはいっさいなし。違法コピー対策もなし。というようなシロモノなのですね。
ここまで来るとすがすがしいです。
また閲覧ソフトもオープンソースでやっていくことになっていたり、GPLに準じるライセンスをうたっていたり、つまり、かなり、オープン指向の思想のもとに開発されてきたものなのですね。
実はこれは結構好きです。
編集者に相談してみると、どちらかといえばネガティヴな意見が多し、です。まあ当然です。たしかにコピー自由のフォーマットで、なおかつ無料で、自作のテキストを流通させてしまっていいのだろうか、と。
これって、音楽CDを違法コピーされるのを心配するミュージシャンと同じとはいわないけれど、似た立場なわけですね。そういえば、moonridersだったか、くるりだったか、triceratopsだったかが(すごい記憶が曖昧!)が、ライヴに来たお客さんに未発表曲のCDを配って、ネットではばらまいたりしないでね、と良心に訴えた(?)みたないことがあったけれど、あれに近いようで……やっぱり、似ていたとしても、同じではないです。
で、悩んだわけです。細かいたことは飛ばして、先に結論をいうと……
いいんじゃないかな。
マルチメディアデイジーソフトの制作を許諾しようと思っています。
今、許諾を打診されている、四作、許諾するつもりです。
「夏のロケット」
「クジラを捕って、考えた」
「緑のマンハッタン」
「今ここにいるぼくらは」
なぜか、というと、今の時点で、テキストデータをCD-ROMで貸し出したからといって、カジュアルコピーをする人はいるかもしれないけれど(いや、するでしょう。ぼくならすると思う)、それで、本が売れなくなるとは考えられない、ということ。逆に、何十万部も売れるようなベストセラーだったりすると、潜在的な本の売れ行きを阻害する可能性はあるかもしれないわけですが(なにしろ、話題本をタダでつまみ食いできるわけだから)、そこまで売れれば、食うに困らぬ印税は入ってくるわけで、問題なし、ということにしようか、と(その前に、何十万部売れる本をきみが書くのかとツッコミあり)。
それに、一番基本的なことなんですが……、物書きにとって「勝利」というものがあるとすれば、それは多くの人に読まれることなのです。なかなか届きにくい人たちに、わざわざ人が労力を使って、届けやすい形に変換してくれるのを歓迎したいという部分が大きいです。
ただ、ネット配信は、今のところ留保。
現状では、ネットでのマルチメディアデイジーのサービスの提供はほとんど進んでいないようだし、今後、本格化してきたときにあらためて考えます。
マルチメディアデイジーのテキストデータのネット配信って、かなりネットでの通常の作品販売とバッティングするんですよね。いずれもまだ未成熟な状態であって、どんな形でこれらが妥協点を見いだすかというのは、ごく近いうちに動きがある気がします。ひょっとして、今の出版者側の電子出版の枠組みの中で、現在のマルチメディアデイジーのユーザが簡便に利用できるサービスができることだってありえるわけだし(そんなに難しいことじゃないです、きっと)。
デイジー側か、ネット出版側か、どちらが先に現実的な配信スキームを提供できるか。その時になってから、考えても遅くないと思うのです。
まあ、いずれにしても、権利権利と言い立てるのは、あんまり本意ではないし。どんなかたちであれ、「届けられない人」がいるなら、届けてほしいです。
なんて、考えていると逆にワクワクしてきましたね。
で、最後、一つだけ問題が。
これらのことを許諾する権利は基本的にぼくにあるということになっているらしいです。
でも、各版元との契約の内容によっては、何かとバッティングする可能性はあるわけで、そのあたりをきちんと確認しておきたいわけですね。
というわけで、このエントリを、上記の本の編集者さんたちに読んでもらって、検討していただこうか、と。
まあ、たぶん大丈夫、ですけど。