【「聖教新聞」 2015年(平成27年) 8月31日(月)より転載】
【勝利島35】
山本伸一が、台風二十号による種子島、屋久島等の被害状況や、島の学会員の奮闘の様子を聞いたのは、香港の地であった。
彼は、香港から、鹿児島県の幹部と連絡を取り、直ちに被災地へ激励に行くよう依頼するとともに、伝言を託した。
家が壊れるなどして、途方に暮れていた同志は、幹部がすぐに来てくれたことに感動した。そして、「必ず変毒為薬できるのが仏法です」との伸一の伝言に勇気が湧いた。奮起したメンバーは、復興の先頭に立った。また、自身と地域の宿命転換を願い、果敢に仏法対話を開始した。弘教は大きく進んだ。
十月下旬、東京へ来た鹿児島県の幹部から、その報告を受けた伸一は言った。
「本当に大変だったね。人生には、台風などの自然災害に遭うこともある。ある意味で、苦難や試練が、次々と押し寄せてくるのが人生といえるかもしれない。大事なことは、その時に、どうしていくかなんです。
“もう、終わりだ……”と絶望してしまうのか。“こんなことで負けてたまるか! 必ず乗り越えてみせる!”と決意し、立ち上がることができるのか。
実は、信心することの本当の意味は、どんな苦しみや逆境にも負けない、強い自分をつくっていくことにこそあるんです。
被災された皆さんは、試練に負けずに敢然と立ち上がり、周囲の人びとに、希望の光、勇気の光を、送り続けてほしいんです」
さらに伸一は、種子島、屋久島の同志への激励として、袱紗を託したのである。
鹿児島県の幹部は、それを持って島を訪れた。一人ひとりに山本会長の思いを語って励まし、袱紗を手渡していった。島の幹部に委ねることもできたが、それでは、最も大事なものが、抜け落ちてしまう気がしたのだ。
皆の感激は、ひとしおであった。
島の同志が受け取ったのは、自分たちを思いやる、“伸一の真心”であった。
心と心が触れ合い、勇気が生まれ、誓いが生まれ、師子が生まれる。
■語句の解説
◎変毒為薬/「毒を変じて薬と為す」と読む。苦しみの生命(毒)が、そのまま幸福の生命(薬)に転ずる、妙法の大功力を表した言葉。