近研ブログ

國學院大學近代日本文学研究会のブログです。
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佐多稲子「女の宿」発表

2009-11-16 22:46:58 | Weblog
こんばんは。
今週は佐多稲子の「女の宿」の発表でした。後期例会で取り上げたもののなかではもっとも新しく(昭和37年)、なおかつ女性作家であるという点に留意すべき作品ですが、発表者の意図も、「女たちの関係をふまえながら」という部分に的をしぼっており、そこから、時代・社会への批判意識を掘り下げていくものでした。
発表者はこの作品の登場人物である女たちをそれぞれ分析し、その関係と立場の相違点から展開させて、さらに主人公である私がまとめていく、という構造を持つ作品であるとしました。これには、いくつかの意見が他の人たちから出ており、特にその構造自体は理解されるものの、そのあとにつづく私の視点を経たことで個人的問題が、社会問題へと視野を拡大させていく、というまとめ方に対しては、活発な意見が多々出ました。
また、作品内で取り上げられた社会の問題は、婦人団体、および共産運動であると発表者はしましたが、その二つを並列に論じてよいのかという意見も出ました。婦人団体にしても、なにかしらの批判意識が、佐多稲子はこの作品にしのばせていると思う箇所があるので、それらの問題、社会という切り口が、どこを指し、どこまでを含むのかを論じるにあたって、今一度詳しい資料調べと、考察が求められるとう意見も出ていました。ほかには、文体や私の位置、となりの奥さんの論じ方など、作品全体にわたって意見が展開した例会であったように思いました。
こうした意見を次にどれだけ活かすことができるのか、発表者にはプレッシャーともなりましょうが、ぜひ次週もがんばっていただきたいです。

次週もひきつづき、「女の宿」の発表です。発表者はじめ、みなさま、風邪をひかぬよう体にお気をつけください。
モロクマ