近研ブログ

國學院大學近代日本文学研究会のブログです。
会の様子や文学的な話題をお届けします。

第一回 夏季集中勉強会

2007-08-13 02:44:03 | Weblog
8月11日(土) 11:00~16:00 於研究室

大学内一斉休暇中につき、冷房のかからない中での長時間に及ぶ勉強会お疲れさまでした。

以下、そこで指摘された問題点を簡単に述べます。問題点ということは、要検討の箇所ですので、それが全てではもちろんありません。発表者の方、気を悪くしないでください。


小泉八雲『知られぬ日本の面影』

○論旨が散漫。神道の発表なのか、民俗学の発表なのか、近代文学の発表なのか、自身の立脚点を明確に定める。
○一つ一つの分析において論証、考証がなされていない。小泉八雲の印象、感想、 考察を補う外部資料をもとに、何が評価できるのかを再検討する必要あり。


夢野久作「死後の恋」
○〈聖〉〈生〉〈性〉〈死〉などの問題が錯綜していて煩雑な印象 → 説明するかあるいは文章を組み替える。
○指示語の連続、多用による読みにくさを解消する。
○文章自体が淡白な印象を与える。良くも悪くも無駄がなさすぎる。発表者自らが論の流れの中で起伏を作るようにする。


織田作之助「四月馬鹿」
○前回の発表時からの改稿がなされていない。
○〈武田さん〉への追悼、哀悼の意味と物語の末尾との関連。〈武田さん〉というモチーフを援用することで〈私〉は何を描こうとしたのか。再検討が必要。


芥川龍之介「偸盗」
○先行論文に寄り添おうとするあまり、自らの読みがなされていない。
○発表者がある言葉に関して感じるイメージを、読み手にも理解できるよう論証することが必要。
○それぞれの登場人物にもたらされる〈月〉の影響に焦点を当てる場合は、より詳細な検討が必要。


太宰治「鴎」
○参考資料で論じられていることに対して、自らの考察がなされていない。
○〈当時の作者の創作動機〉や太宰の〈中期の諸作〉という言葉が散見されながらも、その関連は、「鴎」に用いられたモチーフによるものであり、かつ先行論者の言説によるものである。これは論証にはならない。
○〈私〉に太宰の投影を見つつも、それが分析、まとめに活かされていない → 活かすか省くかする
○同じことが複数回説明されている。自身の用いる言葉の整理。
○読み落とし、読み洩らしがないようにすることが必要。テキストの精読。


檀一雄「花かたみ」
○テキストの精読が必要。言葉が指し示す意味を捉えられていない箇所(誤読)あり。
○三島の先行論を踏まえ、どのような差異を生み出していくか。
○〈少年期に別れを告げる物語〉(まとめ)と読むならば、全てをその方向で捉えていく。発表者自身、そう読めないと思われる箇所をも解釈することが必要。
○物語の中で死ぬ者、逸脱する者との関連を明確にする。それぞれの登場人物の造型。
○手紙で終わることの意味の明示。



なお、次回、8月25日の発表では、体裁は今回と同様とし、内容は、

①今回の資料を、フォントを統一し(タイトル、副題、氏名までは自由。それ以外の箇所はフォントをMS明朝でサイズを9とする)、そのまま全文掲載。
②今回の資料からの変更点に関しては、フォントをMSゴシックとしサイズを10とする。それによりどの程度変更が行われたかを明らかにする。
③引用がそのままであって、▼の箇所のみが変更する場合、前回の▼の横に変更が分かる形で新しい▼を掲載する。
④引用文を組み替えるなど変更があれば、テキストボックスを使うなどして、どの箇所からどの箇所への変更かが分かるように示す。
 
  ※決め事はそれだけです。あとは、見る側が分かり易いように各自で工夫して作ってください。

  ※「死後の恋」に関しては、煩雑になるので前回からの変更が明らかに分かるように発表者自身で工夫する。

お盆を挟むということもあり、みなさん大変かと思いますが、体調に留意してがんばっていきましょう。