こころとからだがかたちんば

YMOエイジに愛を込めて。

2011年7月4日 月曜日 夏のフェイバリッツ・7 King Crimson「Two Hands」'82.7

2011-07-04 22:01:05 | 音楽帳
2011年7月4日 月曜日。
ここで、私は、三島さんが45歳で自決したのと同じ歳を迎えてしまった。
多くの文学者が、意識をせざるを得ない45という数字は、三島さんの自死ゆえ。



「私」は昭和41年7月4日、元浅草にあった永寿病院で、この世に「放り出された」。
戸籍謄本には、その元浅草の住所にて「私」がこの世の側に現れた記録が刻印されている。



その永寿病院は、昭和レトロの匂いのする素晴らしい建物だったが、再開発の波に飲まれて、今では取り壊されてしまい、移転した場所に、ハイパーな建物が建っている。
私は、私の生まれた地までをも失ってしまった。
自分が生まれ育った家も他人に盗られ、自分の通った幼稚園も小学校も既に無い。

***

幼い頃は、細野さんの曲にあるような「お誕生会」などもあったが、この歳になると、誕生日などに何の感も無い。
通過点に過ぎない。
そして、運の悪いことに今日は月曜日の「ディープ・ブルー・デイ」でもある。。。

自分の誕生日が、血塗られたアメリカ独立記念日と同じ日であるというのも、実に皮肉。
私がこの世に「放り出された」1週間前に、ビートルズが日本を意識したハッピを着て、羽田空港に降り立ち、来日公演を行っている。

こういう日に、何を聴こうか。
何をかけるかは迷ったが、結果は「別段、何が起きる訳では無い365分の1に過ぎない」と今日思いつく、かつての「あの夏」に聴いていた音楽を普通にかけてみることにした。

***

1981年7月にキング・クリムソンは復活・再結成した。
それは、過去のクリムソン信者からは駄目出しされ、当時のリスナーからは時代錯誤と言われたりしたが、私はそういうどちらにも属すことなく「御大ロバート・フリップが決断したこと」とただ思った。
私の6つ上の兄は、キング・クリムソン命の人だが、彼がこの世を貫くチューンを聴いた過去のクリムソンを私はろくに知らずに、私は再結成の「ディシプリン」を聴いて、そのテクニックと独自のグルーヴ感に驚いた。
ロバート・フリップは、確かに神的な存在ではあったが、だからと言って時代とまったく無縁である訳が無かった。
ちゃんと1981年に再度出現するに足る、時代の趨勢を反映した新しい密度濃い、他人では真似ようが無い独自の音が鳴り出した。



明らかにそこには、トーキングヘッズ&ブライアン・イーノ、パブリック・イメージ・リミテッドなどが焦点としていた「リズム」への着目があり、その流れと同期していた。
パンク~ニュー・ウェイヴの流れの中で、ロックは解体され、他のアフリカ等の音楽との融合、革新的リズムやグルーヴ感の発見に「より新しい明日」を見い出そうと、みんなが躍起になっていた。

坂本龍一の「左うでの夢」も、YMOの「テクノデリック」も、この軌道上にあった。

***

1982年、ニュー・ウェイヴが次第に革新的でありながらマイナーな位置にあった音楽から、チャートを揺るがすまでに音楽世界を侵食し始める。



新生キング・クリムソンの2枚目は、1982年7月に「ビート」というアルバムとして発売されている。
「リズム」に着目したニュー・ウェイヴの流れは、既にエレクトリック・ポップの流れへと移行していたさなか。

6月にロキシー・ミュージックの「アヴァロン」が発売され、ブライアン・イーノが、大地の音をリズム、メロディ=ゼロでパッケージした「オン・ランド」の横で。

***

基本、新生キング・クリムソンは、ロバート・フリップが、エイドリアン・ブリューというギターの鬼才をバンドに懐柔することで成立していた。

私は、エイドリアン・ブリューの唯一無二のギターが当然好きだったが、この人のヴォーカルというのも捨てがたかった。
訴求力を持っていて、静かな曲に於ける声の伸びの良さ・メランコリックな歌い方が好きだ。

1枚目「ディシプリン」での「待ってください」。
そして、この2枚目に於ける「2つの手」。

ロバート・フリップの注釈多き難解さよりも、このアルバム「ビート」においてもエイドリアン・ブリューが歌う「2つの手」の方に、自分の情動は動いていた。

ヴォーカルの流麗な美しさと、陰鬱なメロディ、ロバート・フリップ独特のトーンのギターが相まったダークな曲調でありながらポップなこの曲を当時、クロスオーヴァー・イレブンで初めて聴き、録音した。
この夜、クロスオーヴァー・イレブンの選曲は優れていて、ジャパン『ブリキの太鼓』収録の「ゴースツ」、デヴィッド・ボウイー&ジョルジオ・モロダーの映画『キャット・ピープル』のサントラの曲(アイリーナのテーマ、実地検証、ポールのテーマ・・・)が、「2つの手」と共に、夜の闇世界だけの時間の流れを作っていた。

このカセットテープをよく夜に聴いた。

そんな記憶をこの暑い夜に思い出す。
コメント
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