こころとからだがかたちんば

YMOエイジに愛を込めて。

夏の100曲:ファン・ボーイ・スリー「サマータイム」’82

2023-08-31 09:50:00 | 音楽帳


備忘録。
ファン・ボーイ・スリーの「サマータイム」がカバーであることは知っていた。
その「サマータイム」という曲を初めて聴いたのは、たぶん70年代のCMだったが、あまりにも遠くてそれを誰が歌っていたのかすら思い出せない。
原曲については詳しく知らず、今回調べてジャズのスタンダードナンバーと知った。多くの音楽家のカバーが何千と存在する、という。
さまざまなやサウンドがある、ということでいくつか聴いたが、どうもしっくり来なかった。

ファン・ボーイ・スリーの活動は1981年から1983年と短い。
バナナラマとの共演に始まり、彼らの好きな曲は色々あるけれど、2023年この1ヶ月超 猛暑の日中、脳内に何回も勝手に現れてきたのは1982年のシングル「サマータイム」。夏だからそんなタイトル曲を想い出すのは当たり前だけど、この曲が持つけだるさは、昔身近に感じていた夏の夜のシーンを思い起こさせる。

80年代、夏も夜になると日中の暑さが若干ひいてくる。
まだ昼の熱がこもっていて、窓を少し開けて風を通し、扇風機を回す。ラジカセからはラジオの音、少し開けた窓からジーッジーッと夏の夜の虫たちの音がする。
虫たちがひそむ草むら。むやみにエアコン使わないように、とうちわであおぐ。
汗の匂い、、ピタッとカラダに密着したTシャツを指でつまんで空気を入れてパタパタする。けだるいそんな夜。

スタンダードナンバー、、、
有名ミュージシャンのカバー、、、
と、雄弁な語り手に出会う。そして、黙る。

興味が失せる。
一気にストレスとプレッシャーが生じてしまう。
自分は、ただファンボーイスリーの暗く・重だるいサウンドが好きなだけで、雄弁な語り手が語る高尚な想いとは程遠い、と思う。
やはり、自分が聴く「サマータイム」はファン・ボーイ・スリーの1曲で死ぬまで充分じゃないか?次第にそう思うようになる。

■Fun Boy Three「Summertime」1982■

8月も最終日。
盆明けから日の長さに応じて夜は秋めいてきたが、日中の暑さはまだ続く。
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夏の100曲:ブルーナイル「ティンセルタウン・イン・ザ・レイン」’83

2023-08-26 19:30:00 | 音楽帳


ブルーナイルをひさびさに聴いたのは、コ口ナ後遺症を抱えてへろへろになりつつ、湯治へと向かう高速の中だった。イヤホンで聴いていたのは、ピーター・バラカンさんの「バラカンビート」。ラジコのタイムフリーから不意に流れた「ティンセルタウン・イン・ザ・レイン」は、流れゆく窓からの景色、交互に出ては消えていく森と短いトンネルを縫って流れていった。刻んでくるリズムが疲れた脳に小気味よく響いた。
まだ梅雨時期の六月だったが、すでに猛暑を予感させる感覚。病み上がりから時間が経ったというのに、だるさは取れず、少し何かをやるとすぐにねっちょりした汗をかいて、ぐったりしてしまう。そんな頃合いだった。

***

ブルーナイルの存在を初めて知ったのは、それこそ1986年頃?のピーター・バラカンさんのラジオ(全英ポップス情報)で、鈴木さえ子ちゃんとの会話の中に出てきたときだった。その会話で話されていたのは、「ティンセルタウン・・」を含んだデビューLP「A Walk Across The Rooftops」のことだったが、自分は当時聴くことなく通り過ぎてしまっていた。
ブルーナイルはこの40数年で4枚のアルバムしか出していないが、自分が持っている作品は1989年発表の2枚目「ハッツ(HATS)」というLPだけ。想い入れがある曲「ダウンタウン・ライツ」が入ったアルバムである。残り3枚の作品はジャケットや広告だけで、中身は全く未知の領域。

通り過ぎた時間をさかのぼれば、80年代とはニューウェイヴを追いかけてきた時代だったが、そんな流れも80年代中盤には失速してしまった。そういう自分には80年代中盤以降は「より前に進んだ音楽」との出会いはめっきり少なくなり、出会いがしら一撃をくらうような音楽など無くなり、なだらかに終息へと向かっていく印象だった。1989年のブルーナイル「ハッツ(HATS)」も当時は「少し変わった音楽」としか捉えられなかった。
聴き過ぎたカセットテープが伸びてしまって、うねうねと音をくねらせるみたいな奇妙な時間感覚。ブルーナイルを聴くたびに、そう感じる。それはひょっとすると、ずっとへろへろでぎりぎりやってきた自分の心身のせいか?というとそれだけでもない。ゆったりした楽曲の展開、決してうまくはないけど味のあるヴォーカル、ファンクをにおわせる部分があったかと思えば、やけに流暢な部分があったりする、奇異な音の組み立て方、不思議な色合いの音楽。

そんなブルーナイルの音楽が変わって聴こえだしたのは、どんな音楽にも言えることだけれども、聴き込んだ上のこと。2枚目の「ハッツ(HATS)」の楽曲も、2023年初めて出会った曲「ティンセルタウン・イン・ザ・レイン」も、聴いていくとスルメみたいに味わいが出てくる。デビューアルバム制作に2年近くかけていたように、また、40数年に4枚しか作品を出していないように、ポール・ブキャナン(ブルーナイル)は時代の空気とかには全く無頓着で音楽に向かい合っている。その結果、長い時間を経て、いくつかの時代を経ても、忘れがたい曲になって人の心に残る。
音楽の在り方がムーンライダーズを思わせる、と思って昔の雑誌をめくっていたら、デビューLPのアルバムレビューを鈴木博文さんが書いていた。


■The Blue Nile「Tinseltown in the Rain」1983(国内では1986年発売)■

スルメのように繰り返し聴いているうち、8月も終わりに近づいてしまった。
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夏の100曲:クリス・レア「スウィート・サマー・デイ」’98

2023-08-21 09:00:00 | 音楽帳

【左はアルバム/右はシングル盤】

クリス・レアを知ったのは1983年秋のこと。YMOの散会が発表され、ビッグカントリーやワム、それにスタイル・カウンシルなどのデビュー作が出た頃、そこに混じって「ウォーター・サイン」というアルバムのモノクロ広告を見たのが最初だった。
そのアルバムから数曲「クロスオーバーイレブン」で掛かり、エアチェックした「深い水の底」「キャンドルを灯す」という曲がとても好きで、その秋から冬はこの2曲をよく聴いた。

その後、「シャムロック・ダイアリーズ」(1985年)そして大ヒットした「オン・ザ・ビーチ」(1986年)へと向かっていった。

今回初めて知ったのだが、私が彼の存在を初めて知った5枚目のアルバム「ウォーター・サイン」は、それまでのレコードセールスが振るわなかったためにレコード会社との関係が悪化の末、追いつめられ絶壁に立たされた最終勧告のアルバムだったそうで・・・逆転ヒットが生まれたおかげでクビが繋がったのだという。地道な音楽活動は、順風満帆だったという自分の認識は大きく違っていた。

「オン・ザ・ビーチ」から後も、何年かおきにアルバムが発表され、音楽雑誌などで見聞きしていたが、自分から率先して買って聴くことをしなかった。
そんな中、突然の再会を果たしたのが1998年のインターFMから流れた「スウィート・サマー・デイ」。聴いて一回でシビれてしまった。この1998年は、仕事中 朝から晩まで一日中インターFMを流して過ごしていたが、毎日毎日何回も何回もヘビーローテーションで掛かった「スウィート・サマー・デイ」は強烈に自分の体内に刻印された。
元々、クリス・レアには夏になると聴きたくなる曲が多いけれど、特にこの曲への思い入れは強い。

聴いていると、もう消えてしまった大事な人々との記憶や、もう戻らない遠い日を思い起こさせる。

■Chris Rea「Sweet Summer Day」1998■

青い空が見たい
そよ風を感じたい
木々を仰ぐ
夏の風が聞きたい
永遠に触れて
その心の中に流れ込んで行きたい
悩みを右手で握って
上にあげて飛ばしてやりたい

スウィート・サマー・デイ
甘い夏の日のことだよ
悩みなんて忘れてしまえ
甘い夏の日のことを言っているんだ

立場を守ろうとして時間ばかり無駄にしている
確かに速く走っているけど
訳もなく走っているじゃないか
僕は永遠に触れて
本当に知りたいんだ
悩みを右手で握って
上にあげて飛ばしてやりたい

スウィート・サマー・デイ
甘い夏の日のことだよ
悩みなんて忘れてしまえ


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夏の100曲:アレックス・ホウ「Move Through It」’21

2023-08-19 19:30:00 | 音楽帳

心身壊して、それまでの社会的生活が営めなくなり、リハビリ生活に入って4年近くが経つ。
それは、世の中が一変して→戻った、コロナの始まりと終わりの期間におおよそ符合する。
この4年のあいだに、それまで自分が生きてきた半世紀の道を振り返りつつ、同時に、徐々にではあるが、大量の持ち物を処分し始めた。
/まあ、あいだに実家を解体したせいもあるが。。。

そこで気付いたのが、処分が一向に進まない理由。→過度な過去のモノへの執着。
音楽もその一部だったりする。
堆積しているレコードやカセットやCD、PCに収めた音楽類。

・当時は理屈抜きで延々と聴いていたはずの音楽も、ただ捨てずに持っているだけの収集物に化してしまったものも多い。
・ほんとうに今でもその曲が好きならば、今でもハッピーになれるはずなのに、今聴いたらもうハッピーになれない曲も多い。
・様々な情報を通し、屁理屈踏まえて、ただ持っているだけで自分に繋ぎとめている楽曲も多い。
こういったものにサヨナラを言って身軽になりたい。。。

***

というと、持っている過去の楽曲ばかり聴いているのか?といえば、そうでもない。
レーベル「Music From Memory」の楽曲・音楽たちも、このコロナ禍で知ることが出来た新しい出会いの1つである。
内容的には、浮遊感あるアンビエントが多く占め、自分の大好物のサウンド傾向。聴いているといつかどこかで聴いたことがあるような既知感が生まれる。

果たしてどこでそれを聴いたのだろうか?と内界を探り、過去聴いた楽曲がランダムに浮かぶものの、その源泉にはたどり着かない。
それは朝起きたあと、見た夢にたどり着けない感覚に似ている。

***

この1~2週間よく聴いているのは、一昨年に発表された、アメリカLAの音楽家 アレックス・ホウの「Move Through It」という作品。これがデビュー盤という。
猛暑を抜けてクールダウンへと向かう、夕暮れ時から深夜にかけてこれを聴いている。
「今」という実に狭い領域を離れて、心が浮遊していく。

■Alex Ho「Neary」2021■

ジャケットの美しさも含めて、夕陽評論家の油井昌由樹さんにも教えたい一枚。
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夏の100曲:ヴィニ・ライリー「スポラディック・レコーディングス」’89

2023-08-09 09:30:00 | 音楽帳

このアルバムを聴くと、音から夏の空に浮かぶ雲が見えてくる。
燃えるように沸き立つ雲。夏のゆらめき。
背後に現れては消えていくオペラティックなコーラスやコーランの声。
スパニッシュ風につまびくヴィニ・ライリーのギター奏法。
弾いている彼の物憂げな姿が浮かびあがる。

ヴィニ・ライリー名義のCD「スポラディック・レコーディングス」に出会ったのは1997年か98年あたりだろうか。神保町のレンタルレコード店「ジャニス」の店内でたまたま出会い、借りてカセットテープに落として聴いていた。80年代前半にはドゥルティ・コラムを聴いていた自分だが、しばらく彼の音楽から遠ざかっていたので、とても懐かしい想いがした。
アルバムそのものは1989年に発表されていたらしい。世界では分水嶺の1989年、自分はこんなCDが当時出ているなんて知らぬままだった。

「スポラディック・レコーディングス」は、80年代前半のドゥルティ・コラム作品よりも内と外の風通しが良く、軽い解放感があり、すがすがしいアルバムの印象。ただ全体では74分のカセットテープに収録したように長く、28曲も曲数がある。タイトルに「スポラディック=散発的」とあるから、散発的に録音された曲をまとめたものなのだろう。このCDのジャケットデザインがかなりラフであることから、寄せ集めた感は否めない。
音楽の主流メディアがレコードからCDへ移行していった80年代終わり以降、オマケ含めてやたら長い分数の収録CDが増えたが、どうもそういうのが苦手だ。

CD「スポラディック・レコーディングス」は最初数曲の中に好きな曲を発見して嬉しくなったものの、CD前半だけでおなかが一杯になってしまい、中だるみして、後半まで気力が続かなかった。それを2023年夏に再び聴いている。やっぱり長いと思ってしまう。疲れやすい身としては、短い分数・短い曲数で勝負してほしい。無理なく使える心・体・時間が限られるリハビリ途上の身には、それはとても切実な願いである。

そう言いながらも、アルバムは「Buddhist Prayer」に始まり、3曲目「Nile Opera」、4曲目「Shirt No. 7」と立て続けに良い曲が流れていく。ついヨーロッパの海辺の風景を思い浮かべる。ドゥルティ・コラムには四季折々聴きたくなる曲があるが、このソロ作品は夏向けの曲が多い。いろいろ言ったものの名盤。好きな曲はみんな異なるだろうが、とても良い作品である。

ヴィニ・ライリーの繊細でか弱い肉体と美しい音楽の調べは、いつも磁石みたいに相反するように結びつきあっている。自分の羽を抜きながら織物を織っていく夕鶴みたいに、身を削りながら、悩ましい内界の苦悶をギターの美しい調べへ昇華させていく。この作品にもそんな美しい曲が多く収録されている。

■Vini Reilly 「Buddhist Prayer」~「Pathway」 l989■
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