元々ジャパンの熱心なファンだったが、この作品は毎年、夏から秋に聴いてきたことが多い。
一曲目のノイズ音〜正確に刻むドラム、、、この入り方。
ここから始まるアルバム「レイン・トゥリー・クロウ」は、全曲通してなめらかに聴けるため、何周もループしてしまう。
謎のバンド(?)レイン・トゥリー・クロウは、ジャパンと同一の4人がメンバー。
しかし、ジャパンのアルバムではない。ギターでビル・ネルソンとフィル・パーマー、イーノと作品を作っていたマイケル・ブルックが協力している。
ジャパンは1982年末をもって終了したプロジェクト。
アルバム「レイン・トゥリー・クロウ」は、時代も4人の在り方も変わってしまった90年代初め(1991年)、唐突に発表された。
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ここからは全く「情報」がないとした中で、聴き手の勝手な妄想してみる。
果たしてどんな会話がメンバー4人の間にあったか?無かったか?
こちら側にはわかり得ないが、会話すら無くて、でも音楽家として4人が集まり、
ひたすらセッションの上に切り取られたものがこの12曲。
音だけを聴いていると、そんな妄想を感じる。
もっと進んだ妄想では、下手すると、最終的なミックスダウンや曲名、曲順など後処理は任せた、、と4人誰もが曲の最終責任者であることを拒否して、このアルバムプロジェクトを解散した。。。
そして、そのまま4人は二度と集まらなかった、などということなら一層興味深い。
だが、クレジットを見ればわかる通り、まとめ役はシルヴィアンであり、スティーヴ・ナーイとミックスを行い、ラッセル・ミルズや藤原新也先生がアートワークに噛んでいる。
でも、どのようなプロセスでできたかのか?
詳細は不明なままの一枚だけの作品。でも、そのままで良い。
ジャパンがロックの文脈に、ある程度従っていたのに対して、レイン・トゥリー・クロウはインプロヴィゼーションを中心にして、建物で言えば木・土・鉄などといった素材を活かすかように、音の材料がそのまま剥き出しに使われている。
それらは微妙な重なり合いを起こし、波紋の描くモアレのような効果を生む。
シルヴィアンのソロがつい一本調子になってしまうのを、3人それぞれの音が見事なアシストとなり、ジャパン同様、音楽的融合・化学変化を起こしている。
少しの期間4人がスタジオにこもるだけで、こんな見事な1枚が出来てしまうのだから、やはり、ジャパンは解散すべきではなかったのかもしれない、、、とつぶやいてしまいそうになる。(でも、解散するしか無かったのだが)
ジャケットデザインは中身をよく反映し、夏の昼、太陽が上空にあって停止した時空、を思わせる。
4曲目「Red Earth (As Summertime Ends)」などは、その代表曲。
このアルバムに収まった曲名に現れた色は、赤と黒。
山下達郎さんの曲「デイドリーム(白昼夢)」の歌詞みたいに、遅い夏の午後を思わせ、夕なぎまでの時間、ジリジリした暑さのなかで聴いてしまう。
夏の砂漠、かげろうの向こうに、秋が既に見えている。
そんな陰りが音にも漂う。
■Rain Tree Crow 「Red Earth (As Summertime Ends)」'91■
シルヴィアンが2002年に中間総括として出した「カンファ」には、このアルバムから3曲が収められている。
極めてクールに演奏に従事する4人の職人芸が、一枚の中をヒタヒタと無言で流れる。
「ぼくは人間と同じように 作品にも完成は存在しないと思う。
ある地点のプロセスに過ぎないのだ。」
「われわれは絵の中に、ある時間の到達点を見ているのである。
筆が置かれた瞬間のストップ・モーションの状態を見ているのだ。」
このアルバムを聴いていると、いま読んでいる本の横尾忠則さんの言葉が重なった。
Recording Data
Computer programming: Steve Jansen
Keyboard programming: Richard Barbieri, David Sylvian
All songs written by R.T.C./Words by David Sylvian
Produced by R.T.C.
Engineered by Pat McCarthy
Additional engineering by Tim Martin
Mixed by David Sylvian & Steve Nye assisted by Al Stone
at Olympic Studios, London except. mixed by
David Sylvian & Pat McCarthy at Eel Pie Studios, London
Cut by Tony Cousins at the Townhouse
Cover photography by Shinya Fujiwara
Design by Russell Mills
Art direction: D Sylvian, Y. Fujii
Recorded between September 1989 and April 1990 at
Miravel Studios, Le Val, France; Condulmer Studio,
Zerman di Mogliano, Italy, Marcus Studios, London,
Air Studios, London, The Wool Hall, Bath,
Ropewalk Studio, Dublin, Mega Studios, Paris,
France, lei Pie Studios, London,
Assistants: Mohammed (Momo) Loudiyi Paolo Carrer
Rupert Coulson/Louise McCormick Bruce Davies
Paul Stevens
Recording co-ordination and Management:
Richard Chadwick
Assisted by Natasha White
on behalf of Oplum (Arts) Ltd,
Special thanks to
Michael Brook/Sandro Franchin/Yuka Fujii
Dermot McEnvoy/Russell Mills/Enrico Monte
Patrice Quef Pete Townshend/Gary Wright
Syco Systems Ltd. (Adrian Thomas Wel Basses/
Sabian Cymbals
The majority of the material on this album was
written as a result of group improvisations
There were no pre-rehearsals, the improvisation
took place in the recording studio and much of the
finished work contains original elements of those
initial performances