これまで、技能習得の流れということで「リラクゼーション」「メンテナンス」と進んできました(それもかけ足で)
最後のステップは「トリートメント」です
この段階は、症状の回復や改善を目的としています。
当然ながら同じような症状でも、患者さんそれぞれによって原因は異なっています。
そのためトリートメントでは、より高い「個別対応の技術」が求められることになります。
本来なら治療を行う前提として、適応と禁忌の鑑別をはじめとした「評価」が必要になるのですが、ここではテクニックを習得するということを中心にまとめているので省きますね
トリートメントに相当するテクニックというのは、数え上げればきりがありませんが、それらを実施する上で共通する重要なポイントがあります。
それは「評価によって検出された部位へ、いかに刺激を集中させるか?」ということです
前回のメンテナンスでは「ストレッチを加えた状態から角度を微調整して、最も抵抗が強くて伸びにくい角度を探し」ました。
上述のポイントは、それをより積極的に進めたものといえます。
具体的に脊椎の関節モビライゼーションを例としてあげましょう
脊椎関節モビライゼーションは、脊柱に対して分節(セグメント)的なモビライゼーションを行う、例えばL1-2間など部分的な椎骨間の可動性を回復させることを目的としたテクニックです。
L1-2間に刺激を集中させるにはどうすればよいでしょうか?
ただ単に腰を回旋させればいいのか?
それでは刺激が分散してしまいます
もっとも、身体をテコにしてテクニックを行う場合、L1-2間だけ動かすというのは不可能ですから、実際にはL1-2間が頂点になるように身体を曲げたりひねったりするということを行うわけですが
具体的な手順については専門の書籍をご覧いただきたいのですが、テクニックを行うにあたって常に意識しておかなければならない重要なポイントがあります。
言葉で表現するのは難しいので、イメージでお伝えしますね
下の写真はベルトを持っている状態です。このベルトをただ曲げようとすると、このようになります
全体的に弓なりになって、刺激が分散してしまっています。
これは先ほど書いた、ただ腰を回旋させているというのと同じです。
分節的な刺激とはいえません。
持つ位置はこのままにして、ベルトの右寄りを曲げようとすれば、どのような力のかけ方をする必要があるでしょうか
似たようなことを、みなさんも子どものころ遊び半分でやったことがあると思います。
では、久しぶりに童心にかえってやってみましょう
いかがでしょう?簡単にできますよね
そのときに、自分の身体の状態がどうなっているかよく観察してみてください。
きっと、曲げる部位に意識を集中して、手の角度や力の入れ方をコントロールしているはずです。
このような動かし方をすることで、ねらった部分に刺激が集まってくるわけです。
この意識の仕方、力の入れ方、コントロールの仕方こそ、分節的な脊椎のモビライゼーションで必要なことなのです。
「手に取るようにわかる」とまではいかなくても、何となく私のお伝えしたいこと、感じていただけるでしょうか?
このベルトの例では「曲げる」という一方向のみですが、実際は屈曲⇔伸展・右側屈⇔左側屈・右回旋⇔左回旋という3次元的な方向性の中で決定されます
そうすることで、L1-2間の可動性を回復させる刺激がより高い精度で加わるわけです。
ところがテキストを読んでも、足を曲げて手を引っぱる、などということは書いてあるものの、このような意識の仕方についてはなかなか書いていません。
(あったら勉強不足ですので、ぜひ教えてください)
言葉で表現するのは難しいことなのですが、これこそが重要なポイントです。
テキストどおりやっているはずなのになかなか上手くいかないという方は、このポイントを押さえず、ただ漫然と手を引っぱって、脚を曲げて、身体をひねっている可能性があります。
このポイントは関節モビライゼーションに限らず、ASTRも含めてありとあらゆるテクニックに共通しています。
新しいテクニックを学び、ひとまず手順や型は覚えたものの、いまいち効いている気がしないというときは、ベルト(でも何でもいいのですが)を持ってねらったところを曲げ、そのときの意識の仕方や力のコントロール方法を確認し、それをテクニックに当てはめてみましょう
ASTR 1日セミナー(札幌)のおしらせ
5月17日(日)に札幌でASTRセミナーを開催いたします。
今回のテーマは「腰腹部へのASTR」です。
腰痛の相談は臨床的にも非常に多いものです。腰部は表面的に制限がある場合、座位でのASTRを行いやすいところですが、緊張が強いとなかなか上手くフックできません。そんな時は、下肢や胸郭をテコにするとかかりやすくなります。
また腹部の緊張は持続することによって、それ自体のトリガーポイントにより腰部に関連痛をもたらしますが、腹圧のコントロールが不良になるために構造的な負荷が腰椎にかかり、痛みを起こす場合もあります。
腹直筋・腹斜筋については、どちらかというとそれらを強化するほうが実施されがちです。ところが、いわゆる猫背の姿勢では胸郭と骨盤が接近したまま固定され、それらの筋が短縮して機能障害を生じているのが臨床的には観察されます。
強化するなら、まずは腹直筋・腹斜筋の適度な静止長を確保することが重要ですが、ストレッチをはじめとした通常のテクニックでは、必要な部位に伸張刺激を加えるのは困難な場合もあります。
ピントをより絞った伸張刺激を加えることができるASTRは、そのようなときに非常に有効です。
今回は、そのような腰部や腹部への軟部組織に対するASTRの紹介です。
なお、いつもは2時間のセミナーですが、今回は時間を拡張して一日セミナーとして行います。
各テクニックを、よりじっくりと取り組んでASTRの習得をより確実なものにし、より多くのレパートリーを身につけていただきたいと思います。
興味のある方は下をクリックしてください。
現在、定員に達しましたので、キャンセル待ちでのご案内となります。何とぞご了承下さい。
くつぬぎ手技治療院「手技療法の寺子屋」
最後のステップは「トリートメント」です
この段階は、症状の回復や改善を目的としています。
当然ながら同じような症状でも、患者さんそれぞれによって原因は異なっています。
そのためトリートメントでは、より高い「個別対応の技術」が求められることになります。
本来なら治療を行う前提として、適応と禁忌の鑑別をはじめとした「評価」が必要になるのですが、ここではテクニックを習得するということを中心にまとめているので省きますね
トリートメントに相当するテクニックというのは、数え上げればきりがありませんが、それらを実施する上で共通する重要なポイントがあります。
それは「評価によって検出された部位へ、いかに刺激を集中させるか?」ということです
前回のメンテナンスでは「ストレッチを加えた状態から角度を微調整して、最も抵抗が強くて伸びにくい角度を探し」ました。
上述のポイントは、それをより積極的に進めたものといえます。
具体的に脊椎の関節モビライゼーションを例としてあげましょう
脊椎関節モビライゼーションは、脊柱に対して分節(セグメント)的なモビライゼーションを行う、例えばL1-2間など部分的な椎骨間の可動性を回復させることを目的としたテクニックです。
L1-2間に刺激を集中させるにはどうすればよいでしょうか?
ただ単に腰を回旋させればいいのか?
それでは刺激が分散してしまいます
もっとも、身体をテコにしてテクニックを行う場合、L1-2間だけ動かすというのは不可能ですから、実際にはL1-2間が頂点になるように身体を曲げたりひねったりするということを行うわけですが
具体的な手順については専門の書籍をご覧いただきたいのですが、テクニックを行うにあたって常に意識しておかなければならない重要なポイントがあります。
言葉で表現するのは難しいので、イメージでお伝えしますね
下の写真はベルトを持っている状態です。このベルトをただ曲げようとすると、このようになります
全体的に弓なりになって、刺激が分散してしまっています。
これは先ほど書いた、ただ腰を回旋させているというのと同じです。
分節的な刺激とはいえません。
持つ位置はこのままにして、ベルトの右寄りを曲げようとすれば、どのような力のかけ方をする必要があるでしょうか
似たようなことを、みなさんも子どものころ遊び半分でやったことがあると思います。
では、久しぶりに童心にかえってやってみましょう
いかがでしょう?簡単にできますよね
そのときに、自分の身体の状態がどうなっているかよく観察してみてください。
きっと、曲げる部位に意識を集中して、手の角度や力の入れ方をコントロールしているはずです。
このような動かし方をすることで、ねらった部分に刺激が集まってくるわけです。
この意識の仕方、力の入れ方、コントロールの仕方こそ、分節的な脊椎のモビライゼーションで必要なことなのです。
「手に取るようにわかる」とまではいかなくても、何となく私のお伝えしたいこと、感じていただけるでしょうか?
このベルトの例では「曲げる」という一方向のみですが、実際は屈曲⇔伸展・右側屈⇔左側屈・右回旋⇔左回旋という3次元的な方向性の中で決定されます
そうすることで、L1-2間の可動性を回復させる刺激がより高い精度で加わるわけです。
ところがテキストを読んでも、足を曲げて手を引っぱる、などということは書いてあるものの、このような意識の仕方についてはなかなか書いていません。
(あったら勉強不足ですので、ぜひ教えてください)
言葉で表現するのは難しいことなのですが、これこそが重要なポイントです。
テキストどおりやっているはずなのになかなか上手くいかないという方は、このポイントを押さえず、ただ漫然と手を引っぱって、脚を曲げて、身体をひねっている可能性があります。
このポイントは関節モビライゼーションに限らず、ASTRも含めてありとあらゆるテクニックに共通しています。
新しいテクニックを学び、ひとまず手順や型は覚えたものの、いまいち効いている気がしないというときは、ベルト(でも何でもいいのですが)を持ってねらったところを曲げ、そのときの意識の仕方や力のコントロール方法を確認し、それをテクニックに当てはめてみましょう
ASTR 1日セミナー(札幌)のおしらせ
5月17日(日)に札幌でASTRセミナーを開催いたします。
今回のテーマは「腰腹部へのASTR」です。
腰痛の相談は臨床的にも非常に多いものです。腰部は表面的に制限がある場合、座位でのASTRを行いやすいところですが、緊張が強いとなかなか上手くフックできません。そんな時は、下肢や胸郭をテコにするとかかりやすくなります。
また腹部の緊張は持続することによって、それ自体のトリガーポイントにより腰部に関連痛をもたらしますが、腹圧のコントロールが不良になるために構造的な負荷が腰椎にかかり、痛みを起こす場合もあります。
腹直筋・腹斜筋については、どちらかというとそれらを強化するほうが実施されがちです。ところが、いわゆる猫背の姿勢では胸郭と骨盤が接近したまま固定され、それらの筋が短縮して機能障害を生じているのが臨床的には観察されます。
強化するなら、まずは腹直筋・腹斜筋の適度な静止長を確保することが重要ですが、ストレッチをはじめとした通常のテクニックでは、必要な部位に伸張刺激を加えるのは困難な場合もあります。
ピントをより絞った伸張刺激を加えることができるASTRは、そのようなときに非常に有効です。
今回は、そのような腰部や腹部への軟部組織に対するASTRの紹介です。
なお、いつもは2時間のセミナーですが、今回は時間を拡張して一日セミナーとして行います。
各テクニックを、よりじっくりと取り組んでASTRの習得をより確実なものにし、より多くのレパートリーを身につけていただきたいと思います。
興味のある方は下をクリックしてください。
現在、定員に達しましたので、キャンセル待ちでのご案内となります。何とぞご了承下さい。
くつぬぎ手技治療院「手技療法の寺子屋」