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【ニュースの核心】カブール陥落…中国はイスラム過激派を警戒 今後は中国がテロとの戦いに資源を費やす可能性も 日本は尖閣守る意思を試されている

2021-08-22 | アジア情勢

2021.8.21
首都カブールをパトロールするタリバンの戦闘員(AP)

イスラム原理主義勢力「タリバン」が、20年ぶりにアフガニスタン全土を制圧したことで、同国が再びテロリストの温床となり、女性が抑圧される懸念が高まっている。習近平国家主席率いる中国による軍事的覇権拡大に自由主義陣営が対峙(たいじ)するなか、ジョー・バイデン政権による米軍撤退の「失策」は、同盟・友好国にどう影響するのか。イスラム教徒であるウイグル人への弾圧を「ジェノサイド(民族大量虐殺)」と批判される中国共産党政権が抱える警戒感とは。日本の政治家に「自分の国は自分で守る」という覚悟はあるのか。ジャーナリストの長谷川幸洋氏が「カブール陥落」の影響を考察した。

タリバンが、アフガニスタンの首都カブールと全土を制圧した。この事態をどう見るか。

米国敗北の流れは、5年前から始まっていた。英紙ガーディアンは2016年6月時点で、米軍の撤退先延ばしにもかかわらず、「アフガニスタン政府軍はタリバンに敗北している」と報じている。

ジョー・バイデン政権がタリバンによる攻勢の速さを見誤ったのは間違いないが、米軍の撤退自体はドナルド・トランプ前政権が「5月までに完了する」とタリバンと合意していた。いずれにせよ、米国の勝利はなかったのだ。

米統合参謀本部議長の上級補佐官を務めた専門家は、敗北の根本的原因を、「タリバンは信念と不信心者を殺すために戦っているが、政府軍はカネのためだ」と指摘している。これでは、勝てなかったのも無理はない。

最後の瞬間はアイスクリームが溶けるように、政府軍は戦わずして散っていった。

これから最大の懸念は、タリバンが、国際テロ組織「アルカーイダ」や、過激派組織「イスラム国」(IS)などを受け入れて、「再び、アフガニスタンがテロの温床にならないかどうか」だ。

7月に国連に提出された専門家の報告書は「少なくとも15の州に過激派組織、アルカーイダがいる」と警告している。イスラム国との関係も指摘されている。

テロの脅威は西側社会にとって重大だが、実は隣の中国にとっても、最大の懸念材料になっている。なぜかと言えば、中国共産党が激しく弾圧しているイスラム系ウイグル人が居住する新疆ウイグル自治区はアフガニスタンと、わずか76キロとはいえ、国境を接しているからだ。

新疆ウイグル自治区では、かねて分離独立を目指すイスラム系過激派組織「東トルキスタン・イスラム運動(ETIM)」の活動が指摘されてきた。彼らの実態は不明だが、中国共産党はタリバンの勝利で「中国国内でイスラム過激派の勢いが増すのではないか」と恐れている。

中国の王毅外相兼国務委員は7月28日、天津でタリバンの指導者と会談し、「われわれは、タリバンがETIMを含めたすべてのテロ組織と手を切るよう、期待している」と語った。

タリバン側は「どんな勢力にも、中国を害するような行為にアフガニスタンの領土を使わせない」と約束した、という。だが、それが本当かどうかは、分からない。

そもそも、米国がアフガニスタンからの撤退を決めた最大の理由は、限りある資源を「中国との競争」に振り向けるためだった。今後は、中国がテロとの戦いに資源を費やす羽目になるかもしれない。

バイデン大統領は14日の声明で、「アフガン政府軍が自分で国を守ろうとしないなら、あと1年か5年、米軍が駐留を続けても、何もできない」と語った。これは、日本にとっても警告になる。

日本は、沖縄県・尖閣諸島を自分で守る意思があるかどうか、試されている。私は自衛隊の意思と能力を疑っていないが、問題は、菅義偉政権を含めた歴代政権と自民、公明の与党だ。尖閣諸島への政府職員派遣を含めて、毅然(きぜん)として中国に対峙する姿勢を示してほしい。


■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務めた。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア-本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。ユーチューブで「長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル」配信中。


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