トランプ大統領はイラン核施設へ米軍機B2によるバンカーバスターズ投下の決定を「2週間かけて検討する」とした。
イスラエルは米国に、テヘランの核開発計画の中核=フォルダウン燃料濃縮工場に、3万ポンドのバンカーバスターを投下するよう求めた。この地下工場を破壊できる唯一の爆弾と、重い爆弾を運べる爆撃機を保有しているのは米国だけだ。
二週間の延長? 直前までは三日とか一週間と言っていた。TIKTOK問題にしても90日の余裕期間を宣言し、6月19日になったらまた90日間延長した。
イラン空爆決定の延期理由は何か?
第一に共和党の岩盤支持層が反対していること。イラン攻撃関与は「イスラエルの国益ではあっても、米国の国益ではない」とタッカー・カールソンばかりか、閣内でもギャバード国家情報長官が、議会では上院でランド・ポール、下院でティラー・グリーンラ議員ら反対している。
共和党支持者の89%が爆撃による戦争の関与に反対しているからには、トランプは陣営内を「あっち側」へおいやるわけには行かないだろう。
このままではMAGA陣営がごっそりと民主党活動家らによる「NOキング」運動に合流しかねない。
第二に、西側では英国をのぞき鮮明な支持がないうえ、駐在員の安否が問われる。アメリカ大使館(マイクハッカビー大使)の外交官、その家族は海と空からヨルダンとエジプトへ脱出の最中、くわえてイスラエル国内にはアメリカ市民権をもつ人々がじつに50万人もいる。まして日本人はイランに280名、イスラエルにおよそ千名、これらの人々の待避完了に二週間は必要だろう。米国は中東諸国からも大使館員の引き上げを命じている。
第三は中東諸国に拠点を置く米軍基地の安全が担保されない。中東に限らず世界の米大使館や関連施設が、もし爆撃による関与となれば、過激テロリストの標的となる。あまつさえイランはホルムズ海峡を封鎖する選択がある。この海峡が封鎖されるとなると、原油の60%をこの海峡に依存している日本が最大の被害を蒙るだろう。軍事的にはこれが最大の理由である。
6月19日、ネタニヤフ首相は「イラン指導部の交代もしくは失脚はイスラエルの攻撃目的ではない。しかし結果的にそうなる可能性はある」と述べた。
ネタニヤフがいう「政権交代、あるいは現政権の崩壊」とは、イラン国民が選択することであり、こうした表現の裏にあるのこと、それはイスラエルには、イランにカラー革命をおこさせるほどの能力はない、ということだ。
カラー革命を引き起こす工作はCIAのお得意だが、トランプ政権にはネオコンがいなくなって、こうした工作を展開できる能力は希薄となっている。というよりCIAさえ、トランプは機構改革を進めているから、それどころではない。
▲イランにカラー革命はおきるか
かって薔薇革命、チューリップ革命、オレンジ革命などキルギス、ジョージア、ウクライナで体制転覆は成功したが、リビアは三分裂、エジプトは軍事政権にもどり、イラクはシーア派の天下に、アフガニスタンはタリバンが復帰というイロニーを運んだ。
イランに狂信的宗教指導者の支配体制が瓦解したとしても、すぐに民主化などと夢想するには無理がある。
イラン国内に潜んだモサッド工作員は、イラン諜報機関により28名が逮捕されそのうちの一人は処刑された。
これまで一週間のイスラエルの攻撃は航続距離の長い空軍機ではなく、イラン国内からのドローンによる攻撃と長距離ミサイルであり、これらが200ヶ所の軍事施設を破壊した。そしてイスラエルは制空権を確保した。
エフード・バラク(前イスラエル首相)は、「イラン政権の転覆は希望的観測だ。米国の攻撃の危険性を警告し、限定的な行動はイランの核開発の野望を遅らせることはできても打ち破ることはできない」と示唆した。
元CIA支局長のダン・ホフマンは「イスラエルのイラン攻撃に加担するかどうかに関して発言し、「イスラエル・イラン戦争はトランプ大統領の任期中、最も重要な局面の一つになる。バンカー爆弾で原子力発電所が破壊されるかどうかは確実ではない。むしろ、「ザ・ディ・アフター」(翌日)が問題だ。
イランはどうなるだろうか? 彼らは権力の維持と核開発計画の再構築を図るため、中国、北朝鮮、そしてロシアとの関係を強化するだろう。「翌日」という問題がより重要になるだろう」とした。
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