東アジア歴史文化研究会

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石平『脅威と欺瞞の中国皇帝政治 二千年史』(徳間書店) 「儒教の世界観は皇帝の政治支配を正当化するための欺瞞でしかない」 日本が受け継いでいるのは儒教ではなく『論語』である

2023-03-28 | 中国の歴史・中国情勢

紀元前221年から2023年まで2244年にわたるシナの皇帝史を概括しながら、中国という特殊な風土が産んだ、日本人の想像を絶する中国皇帝の本質、その行動原理を本書は見抜く。元中国人である石平さんだからこそ、異形な形の中国政治の本質をみごとに抉り出した。

2022年上半期だけで中国の企業46万件が倒産した。コロナ禍が重なったとは言え、日本の同期の企業倒産は3000件である。

なにかが異常なのだ。

日本には倒産した企業の資産は裁判所命令で封印され、凍結され、残った資産のうち、真っ先に従業員へ給与の支払いがある。そのうえ失業保険の受給がある。中国にはない。

未払い給与が半年ほど貯まっているのはザラ、しかも経営者はたいがいが逃亡している。地方から出稼ぎにきた労働者の多くは無駄働きで泣き寝入り。

中華王朝の皇帝とは、天に代わって天下を支配する最高指導者であり、それは一個の国の皇帝ではなく華夷秩序で「中国皇帝が世界の中心」。その「皇帝の権威と権力を正当化するのが天命思想である」

つまり天は唯一にして全知全能の神聖なる存在となる。

武力での政権奪取であろうと、謀略を用いた革命であとうと、天下をとれば、それは天命を受けたことになる。ところが、日本の天皇とは異なって「天は天子に支配権の委譲を撤回することも出来る」

だから歴代皇帝は現在の皇帝を滅ぼし、新しい王朝を立てる。

易姓革命で、「我は天命によって選ばれたのであり現王朝を斃す」という意識が産まれる。短命に終わった新王朝の王莽も、天下を取り損なった安禄山も、洪秀全も、おなじ天命思想に取り憑かれたに違いない。

また「天が人間世界の支配権を委譲した特別な人間が愚か者でいいはずがない。その辻褄を合わせる設定が徳治主義と呼ばれる儒教思想である」

したがってヤクザもならず者も天下を取れば天子となり「徳のある人物」として認定される。

これが本書の肯綮、つまり「儒教の世界観は皇帝の政治支配を正当化するための欺瞞でしかない」(77p)

この本質を知らずに日本は儒教を受け入れ徳治政治を歴代天皇は至高の価値としたかに見える。

ところが石平氏は決定的な差違を指摘する。すなわち、日本が受け継いでいるのは儒教ではなく論語である。(199p)

これで総て納得がいくのである。

読み始めたら止まらない快速・快適・快風。そして快哉を叫びたくなる本である。

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現実の中国は異世界と心得よ

建国から74年、共産党一党独裁の新しい国であるにもかかわらず、日本人は独自解釈で中華人民共和国を見てしまう。ゆえに日本人が考える「中国像」は中国人から見れば「異世界」である。そして現実の中国も日本人にとって知られざる「異世界」なのである。それを知れば、〝ふわっとした危機感〟を〝現実的な危機意識〟に深める必要があることに気づいていただけるだろう。本書は昨今の中国の動きについて〝ふわっとした危機感〟を覚え、実態を認識したいと考えている方に向けて解説するものである。

「どこから知見を深めていけばよいかわからない」
「脅威に現実味が感じられない」
「とはいえ、このままスルーしてもいられない」

そんなスタート地点に立つあなたに向けての一冊だ。近現代と2000年以上続いた「皇帝の時代」の歴史を行き来し、中華という世界観と行動原理をひもといていく。

『本書は歴史的な視点から、中国の政治・宗教・文化・社会全般を考察の対象にしたものだ。「中国」に関する筆者独自の政治論・宗教論・文化論・社会論を多角的に展開しているので、いわば「石平の中国論」のすべてがこの一冊に凝縮されている、という感じである(著者あとがきより)』

【本書の内容】
第1章 白紙の乱 民衆が「皇帝はいらない」と叫ぶ国
第2章 皇帝の設定 中華の世界観と皇帝の行動原理
第3章 皇帝の外交 隣国を悪魔の国に仕立てる
第4章 民族と国土と民 漢民族の行動原理
第5章 漢意と日本人 日本精神と中華思想の関係


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