11-38.ブラック・スワン
■原題:Black Swan
■製作年・国:2010年、アメリカ
■上映時間:110分
■鑑賞日:5月22日、TOHOシネマズ・六本木ヒルズ(六本木)
■料金:1,800円
□監督:ダーレン・アロノフスキー
□脚本:マーク・ヘイマン、アンドレ・ハインズ、ジョン・マクローリン
□撮影監督:マシュー・リバティーク
□衣装デザイン:エイミー・ウェストコット
□振付:ベンジャミン・ミルピエ
◆ナタリー・ポートマン(ニナ・セイヤーズ)
◆ヴァンサン・カッセル(トマ・ルロワ)
◆ミラ・クニス(リリー)
◆バーバラ・ハーシー(エリカ・セイヤーズ)
◆ウィノナ・ライダー(ベス・マッキンタイア)
【この映画について】
ナタリー・ポートマンが第83回アカデミー賞の最優秀主演女優賞に輝いた話題作。監督は、『レスラー』でミッキー・ロークを見事に復活させた鬼才ダーレン・アロノフスキー。
本作では独創的な映像演出で、極限の高みに上り詰めようとするアーティストの孤独と苦悩を描き出している。子供時代にバレエを習っていたナタリーは、10ヶ月の猛特訓の末、本格的な舞踏シーンに挑戦。しかしそれ以上に、激しい内面の葛藤に耐えながら、孤独な闘いを続けるバレリーナになりきった、鬼気迫る演技は必見だ。またライバルのリリー役を演じたミラ・クニス、娘に異常な愛情を注ぐ母親役のバーバラ・ハーシー、ニナに主役の座を追われ、精神が崩壊していく元プリマ役のウィノナ・ライダーと、共演陣のチカラのこもった演技も見事。ヘタなホラー映画よりもよほど背筋にゾクっとくる、衝撃のサイコスリラーだ。
(この項、gooより転載しました)
【ストーリー&感想】(ネタバレあり)
ニューヨークのバレエ・カンパニーに所属するニナは、元ダンサーの母親・エリカの寵愛のもと、人生の全てをバレエに捧げていた。そんな彼女に新作「白鳥の湖」のプリマを演じるチャンスが訪れる。だが純真な白鳥の女王だけでなく、邪悪で官能的な黒鳥も演じねばならないこの難役は、優等生タイプのニナにとってハードルの高すぎる挑戦であった。さらに黒鳥役が似合う奔放な新人ダンサー、リリーの出現も、ニナを精神的に追いつめていく。やがて役作りに没頭するあまり極度の混乱に陥ったニナは、現実と悪夢の狭間をさまよい、自らの心の闇に囚われていくのだった……。
ニナの重圧から来る幻覚が度々映像として現れるが、果たしてどこまでが現実なのか、それとも幻覚なのかは観ている観客にも不思議な感覚をアロノフスキー監督は投げ掛けてくる。そして再三、鏡がキーポイントとなってくるのも特徴。この鏡を通した映像や出来事がクライマックスへと繋がっている。
第一幕は順調に滑り出したかに見えたが、やがてニナは幻覚を見始め、しまいには王子役のバレエダンサーがニナを受け損なって、彼女を落としてしまう。その直前のシーンでリリーが王子役のダンサーを誘惑しているかのようなシーンがあり、それ自体が幻覚なのか現実なのかさえ微妙に感じた。
すっかり憔悴して楽屋に戻ると、そこにはブラック・スワンの化粧をしているリリーの姿があった。そして眼前でリリーがニナ自身の姿へと変容する幻覚を見ながら、彼女ともみあいになり、割れたガラス一片でリリーを刺殺してしまう。ニナはリリーの死体をトイレに隠し、第三幕を踊るため、ブラック・スワンとして舞台に登場した。
ニナはまるで身も心もブラック・スワンとなったかのように、情熱的にそして官能的に踊り、観客は総立ちで拍手をしてニナをほめたたえた。舞台を下りると、ニナはトマと抱き合いキスを交わす。しかし、ニナが楽屋で待っていると、そこにニナの踊りに感動したリリーが激励の言葉をかけに現れた。この時、ニナはリリーと争ったことは現実ではなく幻覚だったこと、鏡の破片で刺したのもリリーではなく、自分自身だったということに気付く。
第四幕(最後幕)舞台が始まり、ニナはフィナーレを完璧に踊りこなした。最後のホワイト・スワンが崖から跳び下りて自らの命を断つ場面(当然、舞台には衝撃を和らげるマットが敷いてある)を演じながら、ニナは観客の中に母がいて感動してすすり泣いていることに気付いた。観客はまた総立ちになり劇場全体に割れんばかりの拍手が響き渡った。
観客席が感動に包まれ、トマもニナを褒めたたえて抱きあげるが、ニナの腹部からは大量の血が滲み出していた。ニナが楽屋でリリーと揉み合って刺したと思っていたのだが、実は、自身を刺していたのだった。完璧なバレエを舞いきったニナは、恍惚とした表情で宙を見上げるが、その視界は徐々に白んでいくのだった。
この作品はやはりナタリー・ポートマンの迫真の演技が最大のみどころであり、企画段階から実際に映画完成まで10年近い年月を要しているが、その間にナタリー・ポートマンは様々なスタイルの演技に挑戦し演技の幅を広げていた。バレーのシーンは100%彼女の演技では無い(85%位だそうだ)そうだが、それでもスクリーンを通して彼女の頑張りは伝わってくる。
ストーリー的には「白鳥の湖」をベースにしたサスペンス・スリラー仕立てなのだが、ニナと母エリカとの関係も微妙だ。エリカ自身もバレー・ダンサーだったが、ニナの出産に伴い現役を諦めたことでニナに自分の夢を託すようになる。しかし、いつしかニナの成功を祈りつつも、娘に対する嫉妬心を抱えるようになるなどエリカの複雑な心境も描かれている。そのニナの父が誰なのかは語られないのだが、この辺も妙な想像を駆り立てられる。
ニナとライバルであるリリーとの関係もスリリングだった。リリーはべスの次は自分が後継者に選ばれると信じていたのにニナに奪われたことで、トマにも嫉妬して何とかニナから役を奪い返したい一心の行動に走る。ニナもリリーの嫉妬心を感じており、最後は、リリーに役を奪われたくない一心で楽屋でもみ合いになりながら、実は自分を刺してしまうと言う衝撃のラストへと繋がって行く。
ニナを巡る母エリカとリリーとの関係、また、役を奪った形になった前任のべスとの関係をアロノフスキー監督は上手くまとめたのだが、これはやはり脚本が良かったからだろう。ニナが入院中のベスを見舞いに行くシーンも怖かったです。
ナタリー・ポートマンは、この映画で念願のアカデミー賞主演女優賞を受賞した上に、振付師のベンジャミン・ミルピエとも恋仲になりメデタク結婚し、一児を最近出産した。
ほんと下手なホラーより、恐かったですね。
何が現実なのか、みてるほうもわからなくなって
いつのまにかニナの視線でみてました。
ナタリーの演技はほんとに凄かった。心に残る映画でした。
御指摘の通り、どこまでが現実なのか否か、その境界線が知らない間に越えていて、集中して観ていても分からなくなりました私も。
N・ポートマンのここまでの代表作であると間違い無く断言出来ます。