ノー天気画家の本音生活 

これが私の生き方などとヤセ我慢するよりも、今日の風に流されましょう!

失敗から生まれた新画法・「タワシ画法」をワタシからご紹介します

2013-04-27 17:02:18 | 犬たち

「失敗の中にこそ新しい発見がある」とよく言われますが、そのひとつの具体例をご紹介します。

上の絵は京都・嵯峨野の鮎料理で有名な料亭を描いた最新作ですが、この絵も描き込めば込めるほどつまらなくパターンをたどり、「もうダメだ!」と自己嫌悪を感じながらの失敗作としてごみ箱に捨てられた絵でした。

私は数多くの絵を描いているのですが、それに比例して数多くの失敗作も描いています。
その失敗の原因の9割は「描き過ぎ」によるもので、それは描いている途中で、絵の魅力不足を感じ、なんとか挽回しようと恥の上塗りのように描き込み過ぎ、結果的に失敗の道をたどってしまう、それをワンパターンのように繰り返してきました。
その理由は透明水彩画の特色は、色を塗り重ねることができても、濃く塗った色を失敗したり塗り間違えても元の状態に戻すことができないからです。
つまり前進はできるものの、後退できない自動車のような欠点をもっていることです。

それを別の視点から言えば、水彩画は日本料理に似て“鮮度”が魅力なので、素材に手を加え過ぎると鮮度という最大の魅力を失うことになるため、熟達した料理人は手早くそして無駄なく料理を仕上げていくように、手早く無駄なく描かなければならないのです。

というわけで今回の絵の失敗の原因を考えながら散歩しているとき、突然あるアイデアが浮かびました。
あわてて家に帰り、ごみ箱の底に捨てられていた絵を探し出し、風呂場の板の上にその絵を乗せ、絵に直接上から水道の水をかけ、タワシ(ごく普通の亀の子タワシ)でゴシゴシと絵を洗うことにしました。
するとゆっくりと色が落ちていきました。
この絵では左側をまんべんなく洗い流すと、なんと見違えるほど魅力的な絵に変身してきたではありませんか!。

この絵の主役は赤い縁台やモミジでもなく、屋根瓦こそ主役なのですが、修正前は屋根瓦が左右いっぱいで屋根の面積が大きいだけ焦点の定まらない絵になったのですが、左を明るくすることで、主役の屋根の焦点を左に絞り込むことができ、主題が明確化されたことが魅力的なった理由のようです。
それともうひとつ、水彩画では色を塗り重ねて濃く・暗くすることができますが、この技法では水彩画でも明るく・淡く表現が可能となったことにあります。

私にとっての絵を描く楽しさは、表現する楽しさもさることながら、なんといっても新しい画法を開発することが無常の喜びなのです。
私の絵の歴史は、写真をトレースする「トレース水彩画」という画法を開発してから出発したのですが、その後数多くの画法を開発してきましたが、すべて「トレース水彩画」の一部門としてトレース水彩画の充実に貢献してきましたが、今回の画法を「タワシ画法」として、その中に付け加えることにしようと思います。

そのように発明や開発大好きな私は、今、秘密裡に画期的な画法を研究しています。
それはたとえば目の前の白い画用紙を見つめながら美しい風景をイメージするとします。すると画用紙にその美し風景がジワジワと浮かび上がってくる・・・
そんな画法を研究しているのですが、それはもしかしてIPS細胞の山中教授に匹敵する開発かもしれません。
- 

冗談はさておき、この「タワシ画法」は上級者もさることながら、初心者ほど大きな力を発揮する画法なのです。
なぜなら初心者の絵は部分的に失敗したり、強弱のバランスが悪いのですが、それを「タワシ画法」で調整できるからです。
特に絵の主役となるものをしっかり浮きただせば、それなりに魅力的なのですが、この「タワシ画法」で自由に主役以外を抑えることができるわけで、これが2段階ほど絵をレベルアップできるのです。

だから、ぜひあなたも「タワシ画法」にトライすることをお勧めします。