【経営コンサルタントのお勧め図書】 国貞流「会計学」から学ぶ 2408
1. 『「新版財務3表一体理解法」
―簿記を勉強しなくても会計がわかる―』
2. 『「新版財務3表図解分析法」
―財務3表の視覚化、図解化で経営分析が分かり易くなる―』
―新会計・国際会計基準もう怖くない―』
(国貞 克則著 朝日新書)
(参考:タイトルと画像は異なります)
■ 努力・実践から生まれた理系思考の『国貞流「会計学」』とは(はじめに)
著者の『国貞流「会計学」』である「おすすめ本1.2.3.」を、今回採りあげましたのは、本欄2024.7.23で採りあげました、著者の「現場のドラッカー」を読み、著者の、実践という客観的事実を通しての、「物事の本質を見抜く力」に関心を持ち、かかる能力を持つ著者が「財務3表」や「会計」を、著者のコンサルタントの実践を通して、どの様に捉えているかに興味を持ったからです。
「おすすめ本1.2.3.」を読んでみて、期待通り、今まで気が付かなかった新たな発見や気付きが多くありました。一般的な会計の著書にはない、著者らしい解説です。それは、筆者の推測ですが、著者が40歳代でコンサルタントを起業し、初めて出会った会計を、努力して身に付け、実践で活用した経験を基に、解析し絞り出した解説です。自身の苦労・努力があったが故に、分かり易い解説が出来るのです。
ところで、著者の能力のもう一つの源は何かと、筆者流に考えてみました。それは理系思考です(著者の理系的経歴については本欄2024.7.23を参照下さい)。理系思考の例としては因数分解があります。つまり、複雑な数式を分り易い数式に変え、そこから結論を導きます。言い換えると、理系思考は、複雑な物事を分り易く整理し、そこから道筋を立て論理的に解析し結論を導く思考力です。
「おすすめ本1.2.3.」では、かかる理系思考を用いながら数々の結論を導き出し、分り易い図解化やパターン化などで表現しています。そこには、会計の専門書にはない、著者ならではの解析・解説が多くあります。字数の関係もあり全てをご紹介できませんが、筆者が注目した解析・解説を、著書毎に一つずつ、次項で、ご紹介させて頂きます。
■ 『国貞流「会計学」』による新たな気付きに注目
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【「新版財務3表一体理解法と図解分析法」から“一目で解る財務3表図解分析”】
著者は、全ての事業に共通する活動は、“お金を集める”⇒“投資する”⇒“利益を上げる”の3つであるとし、その循環を数字で表しているのが、BS(右がお金を集める、左が投資をする)、CS(お金を集める=財務CF、投資をする=投資CF、利益を上げる=営業CF)、PL(利益を上げる)であるとします。
更には“利益を上げる”を検証する最も重要な指標として、ROEを挙げます。このROEは経産省が進めてきた「企業価値経営(伊藤レポート:2014年)」で提言する「株主資本コストを上回るROEを実現する経営を」において重要視されている指標です。このROEをデュポン・モデルにより、①財務レバレッジ、②総資本回転率、③当期純利益率、に因数分解します。
この①②③の循環を、BSとPLを並列表示した図解上に、表示します。
この図解を基に、4つのステップでの図解分析を勧めます。1.BSの右側を見て有利子負債と利益剰余金をチェックする⇒2.BSの図全体から固定資産(投資)の変化、有利子負債等の総資本の変化及び財務の安全性を瞬時に読み解く⇒3.BSとPLを結んだ線から総資本回転率を把握する⇒4.PLの図から利益率を把握する、の4つのステップを経て、気になる処は細かい財務諸表に入り、分析します。並行してキャッシュフローの推移におけるキャッシュの変化から、「CSの8つのパターン」によって、企業の営業活動、投資戦略、財務戦略を読み解きます。著者はこのプロセスについて、「こうすることでアレルギーもなく、興味を持って、財務分析が出来ます」と言います。
特に他社との比較分析の際に有用です。この手法は社内の、オープンブック・マネジメント(Open Book Management)における、財務状況発表の際に活用できます。〔 図1〕を参照下さい。
URL: http://www.glomaconj.com/joho/keiei/sakai20240827-kanrikaikei1.pdf
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【「新版財務3表図解分析法」から
“海外企業の共通キーワードは「のれん」と「自己株式の取得」”】
おすすめ本2.図解分析法では、アサヒvsキリン、ソニーvsIBM、GAFA等を図解分析法で経営分析をしています。著者はこの分析の締め括りに、海外の多くの企業を分析して、多くの海外企業に共通することは「のれん(Goodwill)」と「自己株式の取得」であると記しています。
「のれん(Goodwill)」の意味することは、現代においてM&Aが企業の成長戦略の重要な選択肢になっている事です。「自己株式の取得」が意味することは、多くの海外企業が株主の方を向いて経営をしているという事実です。
「自己株式の取得」はROEを上げ、株価上昇に繋がります。米国株の時価総額の高さの一因です。「自己株式の取得」において、日本の先を走っている米国の典型例である、IBMを「図解分析法」で見てみます。〔図2〕を参照下さい。
URL: http://www.glomaconj.com/joho/keiei/sakai20240827-kanrikaikei2.pdf
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【「新版財務3表一体理解法<発展編>」から“やってますか連結プロセス”】
おすすめ本3.<発展編>では、2000年以降に出てきた5つの新しい会計基準(退職給付会計、時価会計、税効果会計、減損会計、自己株式の取得)、国際会計基準と連結会計、組織再編会計、純資産の部の徹底理解について分かり易く書かれています。
この中の連結会計の「5つの連結のプロセス」に注目しました。非上場会社では金融商品取引法対象会社(1億円以上の有価証券を50名以上の人に募集又は売り出しをしている会社)以外は、連結会計は不要です。
しかし、筆者の考えですが、上場企業にとっては勿論、非上場企業にとっても「5つの連結のプロセス」により、グループ企業間の不正・粉飾会計の防止に繋げることが出来ます。「5つの連結のプロセス」を実施し、グループ企業間の(相殺不能)連結差額を究明していれば(上場企業は勿論、非上場企業においても)、グループ会社の不正・粉飾を見つけることが出来たケースが多くあります。また、非上場企業にとっても、連結会計の実施は、企業グループ全体の企業価値を把握すると共に、企業グループの実像を把握し、グループ企業間の不正・粉飾を排除するチャンスです。加えて、将来の上場の備えにもなります。
「5つの連結のプロセス」については〔図3〕を参照下さい。
URL: http://www.glomaconj.com/joho/keiei/sakai20240827-kanrikaikei3.pdf
■ 『国貞流「会計学」』を活用しよう(むすび)
『国貞流「会計学」』は、会計を「分り易く伝える」ことに焦点を置き、財務3表について解説しています。「おすすめ本1.2.3.」を、財務3表・会計を散歩するつもりで、楽しみながら、読んでみませんか。何か得るものを発見できます。「あ!そうか、これいいね」と思ったら、それを活用しませんか。