■■【心de経営】 采根譚04 前集十 恩裡に害を生ず 実践編33
【心de経営】は、「経営は心deするもの」という意味になります。それとともにフランス語の前置詞であります「de(英語のof)」を活かしますと、「経営の心」すなわち、経営管理として、あるいは経営コンサルタントとして、企業経営をどの様にすべきか、経営の真髄を、筆者の体験を通じて、毎月第二火曜日12時に発信いたします。
【筆者紹介】 特定非営利活動法人日本経営士協会会長 藤原 久子 氏
北海道札幌市出身、平成元年7月に財務の記帳代行業務並びに経理事務員の人材派遣業の会社を設立し代表取締役として現在に至っています。
平素、自社において、従業員満足・顧客満足・地域貢献企業を目指し、ワーク・ライフ・バランスを重視した経営に心がけています。
一方、自社における経験をもとに、経営コンサルタントとしての専門知識を活用しながら、客観的に現状を認識し、問題発見・解決策の提案や業務改善案、経営戦略への提言など、企業の様々な問題の共有を図りながらアドバイスをしています。
『采根譚』の著者は洪自誠といわれ、日本に江戸時代中期に伝えられ、以来知識人の隠れた教養書として、明治以降も多くの人々に愛読されてきました。『采根譚』の書名は宋代の学者(思想家)汪信民の「人よく菜根を咬みえば、則ち百事なすべし」によると言われています。「菜根」すなわち、野菜の根は硬く筋が多いが、これをよく咬みうる者のみが、物の真の味を味わうことが出来る、ということを意味しています。
また「菜根」は貧しい生活、暮らしをいうことから、貧苦に十分耐え得るもののみが人生百般の事業を達成できることも意味しています。『采根譚』が日本に紹介されたのは江戸時代中期、加賀前田藩の儒者、林瑜(はやしゆ)が紹介したのが初めとされています。いらいおびただしい数の復刻本が出版され、中国よりも、日本で広く愛読されてきました。実業・ビジネスの世界で活躍されている多くの人々に、心の指南書として親しまれてきました。時が移り人が変わっても、変わる事のない哲理を今に活かそうとしているからだと思っています。
この『采根譚』は前集、後集合わせて357編からなり前集の222編は現実を生きる処世の智恵を説き、後集134編は心豊かな閉居の楽しみを語ったものが多いとされています。
それでは、解説者・井原隆一氏のプロフィールをご紹介します。1910年埼玉県生まれ。14歳で埼玉銀行(現りそな銀行)に入行。18歳で夜間中学を卒業。父親の死亡に伴い20歳で莫大な借金を背負いながらも独力で完済。その間、並はずれた向学心から、独学で法律、経済、経営、哲学、歴史を修めた苦学力行の人。
最年少で課長に抜擢され、日本ではじめてコンピュータオンライン化するなど、その先見性が広く注目され銀行の筆頭専務にまで上りつめました。60歳になって大赤字と労働紛争で危機に陥った会社の助っ人となり、40社に分社するなど、独自の再建策を打ち出し、数々の企業再建の名人として知られたといわれています。
参考文献 采根譚 (解説:井原隆一) プレジデント社
■■ 采 根 譚 (解説:井原隆一) : 前集 十 ■■
恩裡に害を生ず
【読み下し文】
恩裡に由来害を生ず。故に快意の時、須(すべか)らく早く頭(こうべ)を回(めぐ)らすべし。敗後(はいご)或いは反(かえ)って功を成す。故に払心(ふっしん)の処、便(すなわ)ち手を放つこと莫(なか)れ
失敗や災害は、徳意の時、恩情の厚いときにやってくる。それゆえ恩情が厚く、徳意の絶頂にある時は、心を引き締めて反省して後々に悔いを残さない様に心がけたい。また失敗した後や失意の時に、成功の機会を掴むことが多い。失敗したからと言って失望し、嘆くことはない。
【解説に出てくるキーワード】
「事の破るるは得意の時、事の成るは失意の時、勝って驕(おご)らざる者のみが次の勝利者になる」【格言】「ピンチを脱失しても心はピンチにあり」の心構えでいないと、チャンスを活かすことは出来ない、と井原さんは説く。
・ 【恩裡】 恩情の厚いうちに
・ 【快意】 気分がよい。得意。
・ 【払心】 心にもとる。失意。
参考文献 采根譚 (解説:井原隆一) プレジデント社
意外なことと感ずるかもしれませんが、「恩」という心や「愛」という心から「災い」が生じると言われます。
楽しい気分の時こそ、それまでを反省すべきなのです。
その逆に、失敗したからこそ成功することもありますから、意に添わぬ事で投げ出してはいけないのではないのでしょうか。言い換えますと、失敗や逆境は、順境の時にこそ芽生えはじめていて、物事がうまくいっているときこそ、先々の災難や失敗に注意をすることが肝要です。
このことは企業経営に於いてもいえる事ですが、成功、勝利は逆境からはじまるものです。「人生、山あれば谷あり」であり、「思いどおりにならずともあきらめない」勝利の希望を持ち続け、ひたすら努力を続けていけば、状況は好転するであろうといわれております。
生きている限り、希望はあります。希望がなくなる時は自分で自分のことを「もうだめだ」とあきらめた時だけです。苦しみだって、成長するためのバネになると思うことによって道は拓けるものなのです。もしも、希望がなければ、自分で希望をつくりましょう!見つけましょう!また「ピンチを脱出しても心はピンチにあり」の心構えでいませんと、チャンスを活かすことはできない、と「采根譚」の解説者井原さんは説いているのです。
私共の会社では、毎月当該クライアント様の決算説明会を開催しておりますが、その際に日常処理に於ける基本的な考え方や対象法についても討議しコミュニケーションを図っております。
話題は変わりますが、2011年3月11日午後2時46分に発生した東北地方太平洋沖地震とそれに伴って発生した津波、それにより引き起こされた福島第一原子力発電所事故は皆様のご記憶に新しいと思います。この悪夢の中から私共は、いったい何を学んだでしょう!
当時は誰もが、自分にできることは何かを真剣に問うことになったでしょうし、何でもない日常の有り難さをしみじみと感謝する様にもなりました。そんなある日のこと「生きてゆく事」という曲の歌詞が心に響きCDに聴き入っておりました。
誰にでも、悲しいこと、辛いこと、
悔しいことが必ずあるはず、
どんな時にも、
自分の誇りはなくしたくない、
辛くても、前をみているのは、
夢がその形をかえてしまわないように、
そして、
いつまでも自分らしさを見失わない様に
いきてゆきたい
と、穏やかに、やさしく、しかも力強く歌って下さったのです。
読者の皆々様や日本経営士協会会員にもこうした想いや、経験は沢山おありと思います。ふと立ち止まって何気なく、深呼吸する時間があってもいいのではないでしょうか。同時に私達はプロのコンサルタントとして高品質のサービスの提供をする使命があることを、繰り返し認識を改めるべきではないのでしょうか。
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【経営コンサルタントの育成と資格付与】
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日本経営士協会は、戦後復興期に当時の通産省や産業界の勧奨を受け、日本公認会計士協会と母体を同じくする、日本で最初にできた経営コンサルタント団体です。
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