初めは純粋に小説として読んでいたけれど、途中で子供として作者の名前が出てくるので限りなくドキュメンタリーに近いノンフィクションなのかなと。
後書きで父親と明かし、取材したことも書き加えているので、作者は事実としているのでしょう。
この中では地区で、肉切包丁一本から身を起こし、食肉加工会社の社長にまで上り詰める父親の立志伝が面白かった。
食肉業界の個性的な面々、反社会的勢力の人間とのやり取り、利権に群がる人間像、それから作者の両親のそれぞれの不倫と壮絶な夫婦喧嘩・・・
ノンフィクションとしても、身内のことだから書きたいことは強調し、そうでないことは端折るというバイアスはかかっているはずだから、ノンフィクションとして読めばいいのかなと思った。
この本と、角田直樹の本を「嘘を書いている」と遡上に上げている本も出版されているので、合わせて読みたいけれど、読んでも楽しくなさそうなのでやめた。
角田直樹の本は遺族から訴訟されて敗訴したけれど、この本は今のところそれはないようです。
それにしても、肉を捌く場面の表現が秀逸。そして、肉を捌く包丁で、やくざを追いかけまわし、喧嘩は相手を殺すつもりでやらなあかんと言い放つ主人公。
こういう世界があるのだと見聞が広がった。