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「図説 日本の植生」沼田眞 岩瀬徹

2020-11-10 | 読書

面白かった。

初版は1975年発行、文庫本は2001年に出て、それからもう20年たつけれど、植物はそのくらいの時間では変わらないので、今でも十分に読める本。

植物学大家のお二人に失礼な言い方ですみません。

コンパクトで内容は深く、かつ分かりやすく、環境保全の真の意味を考えさせられる好著。

私が山を歩くようになってかれこれ30年近くになりますが、常々不思議だったのは山によって、また同じ山でも場所によって違う木や山野草があることや、四国の母親の実家の山と、中国地方の山では全然木が違うこと。

それの回答が誠に分かりやすく書かれてあり、今まで断片的だった知識が頭の中で整理されて、そこに新しいこともいっぱい加わって、とてもすっきりとした・・・というのが読後感。


この本の特徴は日本の植生を細かく分け、そこに生育する木も草も一緒に群落としてとらえて、それぞれの特徴がよくわかるようになっていること。いわば読む植物図鑑。それから時間の経過とともに、植生が変わっていく遷移の過程にも言及されていて、環境保全の本当の意味について問題提起している。

アマゾンでは写真が白黒が残念というレビューもありましたが、これは植物図鑑ではなく、名前でその植物が思い浮かぶ人が対象の本だと私は思う。分からない場合は他書に当たればいいと思う。

今まで知らなくて教えられたことはたくさん。とてもは書ききれないけど、例えば18歳で広島へ来て、最初の冬、寒いなあと思ったらやっぱり、この本の「暖かさ指数」が四国より1度低い。従って植物も違うわけで。

中国山地の奥には、見たこともない立派な木が次々と現れ、感動したものでした。地形が複雑で、夏は気温はそこそこ高いけど、冬は積雪が多くてそれに適応した植物があるのだとこの本で改めて納得。

県内に湿原があるのも嬉しいことでした。低層湿原は高度の低いところにある湿原ではなく、湿原の盛り上がりが低いのだと本書で初めて知りました。八幡原にだけ、なぜナガボノシロワレモコウがあるのかと言えば、それ湿地を好むからだそうで。やれやれ、長年の疑問が解けました。

また、観光道路を山の中に作ると、道端に草やススキが生えるけれど、これらマント植物は森の植生を保護し、全体として一つの環境を保っているので、美観のためにとむやみに刈り取ってはいけないそうです。

で、やはり思うのですが、先日ドングリ拾いに行った近くの山は、入口付近の森のふもとに、もう長い間、個人が勝手に花畑を作っているのは、環境の為にはよくないと私は思っています。

草が生えて見苦しいと思っても、そこは国有林、自分の土地ではないのだから勝手に園芸種の花を植えないでもらいたいものです。植物は正直で、その土地に合ったものしか生えません。森の周辺の植物はそこに生えることで、日照、通風などをコントロールする大切な働きがあるのです。

赤や黄色の、ホームセンターで買ってきたような花を育てないでもらいたいもの。あるがままを楽しめるのが教養と私は思いますが如何?

本土では海岸はクロマツ、沖縄ではアダンって。去年、沖縄の海岸で繁茂するアダンを見た。マングローブを形成するヒルギの仲間も北から南、分布が違うことも知りました。

お二人のフィールドワーク、日本全国に渡り、今、どの段階にあるか分かるのが素晴らしい。極相林から裸地まで、水田、牧草地、都会の真ん中の舗装道路まで、環境に適応して植物がどんな所でも生えている、そのことに今まで以上に目を向けたいと思わされました。

リュックの中に入れて、山で見ると楽しいでしょう。このあたりは照葉樹林帯と広葉樹林帯の境目、ほらあそこにあんな木が・・・と言って同行者に嫌がられる。それもまたよし。

2019年7月 沖縄県真栄田岬で。

周り全部がアダン。沖縄の海岸に多いそうで。

実はこんな感じ。パイナップルに似ているけれど、食べられないそうです。

那覇市だったかな、隣りの市かも。「漫湖水鳥・湿地センター」の見学者用通路。

周り全部メヒルギ、たまにオヒルギやヤエヤマヒルギ。

私は感動しまくったけど、地元の人は誰もいませんでした。珍しくない眺め?

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