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「日本ボロ宿紀行」 上明戸 聡

2019-02-27 | 読書

那須温泉湯本鹿の湯 2010年8月


日本ボロ宿紀行という有名なブログがあり、それが単行本化されたときは話題になった。その文庫版。

電車の中で、旅先で、はたまた寝る前に顔の上にかざして読むのに小さな本は便利。で、買ってしまった。

面白かったです。仕事の関係で(何の関係かは明かされていない)日本全国を飛び回る著者。宿泊はどこもよく似たビジネスホテルではなく、昔からある古びた旅館と決めている。やがて、古い旅館に泊まることを目的に旅に出るようになる。

ボロ宿とは悪口ではなく、歴史ある建物と個性的な経営者との触れ合いが楽しめる宿のこと。値段もそう高くない。経営ができなくなると、後継者がいないと、やがて消え去る運命にある。

ボロ宿を愛する心は、消え行くものへの郷愁と著者は言う。

ここに紹介される宿は東北から九州までほぼ全国に渡り、それぞれに個性的で、くつろげる宿。

読むうちにどこてもいいので泊まりたくなってきた。女一人でも本読んだと言えば泊めてくれるかしら。行ってみたいなあ。旅心を激しくそそられる罪作りな本であります。

作者はつげ好春「貧困旅行記」をリスペクトしていて、そこで紹介された伊豆の宿にも泊まっている。おかみさんとつげ氏は以来年賀状のやり取りをする中だとか。

こういう出会いのあるのがボロ宿のいいところ。絶滅危惧種のボロ宿、泊まってみたいなあ。

この中でぶっちぎりに個性的なのは那須湯本老松温泉喜楽旅館。潰れかけの宿に湯治客と著者の二人だけ。泊まりたいと電話入れると「うちはボロだから」と断られそうになるので、他のぼろい宿にも泊まったことがあると言うと、「あそこが大丈夫なら」とやっと受けてくれたといういきさつから始まり、宿の様子や宿を続けている事情など、面白かった。

部屋は外観に比べてごく普通、食事は量が多く、何よりも高齢母子の経営者が、まるで身内のように隔てなくもてなしてくれる。親せきの家に行ったような懐かしさ。ボロ宿の醍醐味はそこらあたりにあるのだろう。

9年前、那須に行ったとき老松温泉の前も通った。気が付かなかった。川沿いに宿が並んでいます。川も温泉の成分で白濁しています。

こちら鹿の湯。とても熱い湯で、茹で上がる思いでした。

煮豚になるって?その前に湯から出ました。

 

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