小論文なタイプにはさまざまあるので、今回は基本系のタイプの書き方を説明します。小論文は「自分の考えを書く」ためのものです。作文との違いは、作文は事実や感想を書き連ねる」ものだということです。小学生の作文を思い起こしてくれればわかります。またその自分の考えは一つだけ書くことも、小論文を書く上で大切なポイントです。これは小論文のルールと言ってもよいでしょう。小論文は「段落ごとの役割」を明確にすれば簡単にかけます。さらに「ひとつの文の役割を一つにする」ことが大切です。この2つのポイントに従えば、自分が今何を書いているのかを見失うことがなくなります。
(1)第1段落の役割・・・「AはBである。」という形で書き出します。Bには「自分の考え」を入れます。ここで大切なことは「~である」という形で書く事です。たととえば、「IT産業の発達には目覚しいものがある。」つまりA=IT産業の発達、(B)は「目覚しいものがある」ですが、この(B)は(自分の考え)ではなく、状況や実態を示したいるだけです。「めざましいものである」とは言いません。「~である。」という文末表現にするだけで自然と(B)を自分の考えで表現できるようになります。
また、「AはBである。」のBに修飾語Cをつけてはいけません。AやBを強調するためにつける修飾語Cをつけると、そちらも強調されてしまうので、BとCのどちらを言いたいのか?はっきりしなくなります。たとえば、「IT産業の発達には警戒すべきである。」という文に「IT産業の発達には各地の文化を守るために(修飾語C)警戒すべきである。」とすると、(修飾語C)についても筆者の思いが多く含まれることになることがわかります。つまり、そこには「私は各地の文化を守りたいのだ」というメッセージが含まれてしまうのです。小論文は「自分の考えは一つだけ」書くのだという点も重要なポイントです。
次に、「AがBである。」に続けて、「なぜならDだからである。」と書きつないでいきます。つまり自分の考えAに(理由D)をつけます。この部分は次に記述していくことになる第2段落を引き出すためのものです。(自分の考えB)とだ思う(理由D)を書くだけなので、ここではその根拠などは不要です。「IT産業の発達には警戒すべきである。なぜなら、各地に存在する文化や伝統を破壊するおそれがある(理由D)からである。」と書いていきます。
(2)第2段落の役割・・・理由を説明する。第3段落では(理由D)を説明します。ここで注意しなければいけないのは、(自分の考えB)を説明してはいけないという点です。(自分の考えB)を説明すると(理由D)と重複し、論が前に進みません。つまり「各地に存在する文化や伝統を破壊するおそれがある」という点について説明を加えるのです。
「説明する」とは「わかりやすくする」ことです。そのため、説明を加える方法には2つあります。①「例えば~のようなことがある。」といった書き方で、具体的な例を挙げることで詳しく、わかりやすくする方法です。その際、(理由D)のなかのカギになっている言葉を「例えば~。」と考えてみると良いでしょう。いくらでも思いつくはずです。小論文で求められている字数を考えながら具体例を2~3あげれば良いでしょう。例文で考えてみると、(理由D)のキーワードは「文化や伝統が破壊される」でしょう。そこで「文化や伝統」が失われている例を「例えば~」と考えていきます。「例えば、日本には漢字という独自の文化がある。しかし近年PCの発達などにより漢字が書けない大人が増えている。」といったようになるでしょう。
ここで注意したいのは具体例の思い出し方です。「文化」を「独自の文化」という言葉に「置き換え」ている点です。そしてさらにその「独自の文化」の具体例を探していくと「漢字」に行き着いたわけです。このように具体例を考えるとき、「置き換え」のテクニックは有効になります。
②もう一つの方法は、「言い換え」です。つまり、理由Dを立場を変えて言い換えてみせるわけです。この「言い換え」のパターンは、「立場を変えて言い換える」・「視点を変えて言い換える」・「逆の立場で言い換える」・「反対意見に立って言い換える」などがあります。たとえば、理由D「各地に存在する文化や伝統を破壊するおそれがある」という部分に対し、「たしかに、IT産業の発達によって世界中の知識や情報をどこにいても手に入れることができる。」(言い換えF)などと書きつなげていきます。さらに文章を長くする場合は、この(言い換えF)について「例えば~」というように①の方法で説明をしていけば良いでしょう。そして「しかし、Fである。」(振り戻しF)によって、自分の(理由D)を(言い換えE)を否定する形で示し、元の視点に戻せばよいでしょう。逆の立場からの(言い換えE)を踏まえて、それもわかるけど、しかし私の立場は(振り戻しF)です、ということで説得力が増します。その際、(言い換えE)と(振り戻しF)とは重複する表現が出てきますが、重複は省いて記述していきます。例えば「しかし、それらの知識や情報は画一的・均質的なものでしかなく、地域の独自な文化や伝統は一度失われると二度と手に入れることはできないものである。」
以上、例文をまとめておくと「IT産業の発達には警戒すべきである(自分の考えB)。なぜなら、各地に存在する文化や伝統を破壊するおそれがあるから(理由D)である。たしかに、IT産業の発達によって世界中の知識や情報をどこにいても手に入れることができる(言い換えE)。しかし、それらの知識や情報は画一的・均質的なものでしかなく、地域の独自な文化や伝統は一度失われると二度と手に入れることはできないものである(振り戻しF)。」短い文章ですが、自分の考えがよく説明され説得力がある文章になっていると思います。この段階まで書ければ、400字~600字程度の小論文にはすぐ引き伸ばすことができます。