政府内でも発送電分離の議論が進んでいるようです。テレビ番組でも諸悪の根源は電力会社の地域独占であり、発送電分離すれば問題は解決するとの見解が述べられております。果たして、発送電を分離しさえすれば、そのようなバラ色の未来が拓けているのでしょうか? 既に発送電を分離している諸外国では、何の問題も発生していないのでしょうか? この議論は緊急性を要する問題なのか、もっと先にやるべきことがあるのではないか?
多くの国民(私を含め)は、発送電分離に関して議論するための情報と知識が不足していると思います。そうした中で、「日本の電気料金は高い!」、「発送電分離をすれば電気料金が安くなる!」、「JRやNTTの例を見よ!」と言われれば、それもそうだなと思ってしまいます。これと同じ議論が議員定数の削減です。議員定数を削減すれば、コスト削減ができるという主張です。コスト削減のためならば議員報酬や政党助成金の削減でもできますよ。私には自分の権益は確保しておいて、他人(落選した人)に不利益を押し付けようとしているように見えてしまいます。これは私の僻みでしょうか。リストラと称して従業員を解雇するのに似ております。その責任者たるものが、最後には自分自身の首を切ったということをあまり聞いたことがありません。
いっけん正論に聞こえるものほど眉に唾をつけてみた方が良いのではないかと思います。講演会などで、数値を挙げて説明されるとなるほどと思うことがよくあります。しかし、その数値をいちいちメモを取り、後で調べることはしないものです。そして、その論者の結論だけを納得してしまうのが世の常です。統計資料を引用した説明も説得力があります。しかし、その統計そのものの信頼性を検証することは難しいものがあります。ある一定の恣意が働いている統計があることも指摘されているところです。
また、脇道に逸れてしまいました。発送電分離に関する議論は、緊急を要するものではないと考えます。長期的には議論する必要性はあるとは思いますが、「新エネルギー政策の行方」で書いておりますように電力不足対策(原発の再稼動問題)が急がれます。それに加えて中東情勢が緊迫する中、原油依存体質脱却へ向けての議論が優先すべきと考えます。
どの道、電力自由化が進展しても発電業者は火力発電が主流となるでしょう。その際の燃料は天然ガスが最も有力です。この天然ガスは既に価格が高騰している状況です。制度を議論することも必要でしょうが、足元には火が迫っていることをお忘れなく!
<参考> 「発送電分離について」