眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

モンキー・マジック

2019-07-24 16:08:02 | リトル・メルヘン
「なんでこんな星にしたんだよ」
「そうだ。もっとあったよね」
「さっきのでよかったじゃない」
「本当だ。よほどよかった」
「お前らな。だったらさっき言えよ」
「言いましたけどね」
「ちゃんと言えよ。ぼそぼそ言ってただろ」
 
「でも酷い星」
「何も得るものが見当たらない」
 流石にもう黙って聞いていられなかった。田舎だから自分たちしかいないと思っているのか。だが、ここは私の愛する街だ。もう隠れているのはやめた。
「お前らあんまり調子に乗んなよ」
「お前こそ何だ? 部外者は引っ込んでろ」
 
「はあ? お前らの方が部外者なんだよ」
「何だ、やるのか? 俺たちに手を出したら地球がなくなるぞ。わかってんのか?」
「これはプライドの問題なんだよ」
「それより君は人類、いいや地球生命のことを考えるべきでは?」
「人類のことなんて知らない。私は自分しか愛せないんだ」
 
「何こいつ、頭悪そうだな。やっちまえ!」
 私は覚えある空手を使って侵略者を懲らしめた。生身の彼らは口ほどになく弱かった。大人と子供以上の実力差がはっきりと見えた。とてもかなわないことを悟ると彼らは散り散りになり逃げながら詫びながら母船の中に逃げ込んでいった。
 
「二度と来るなよ!」
 UFOは離陸すると一瞬で空の彼方へ消えてった。幼稚な道徳に反して高度な科学を持っていることが推測される。
 一人だけ残されたボスの目がすかっかり死んでいた。私は荷造り用の紐できつく縛りつけて自宅へ連れ帰った。
 
「食べるか?」
 ボスはバナナを半分だけ食べた。
 翌日になり、私は人類の発展のためにボスをNASAに届け出た。
 
「これは猿ですよ」
 そう言われた瞬間、確かにボスは猿にしか見えなくなっていた。
(ここに来るまで宇宙人だったのに)
 そんなことを言ってももはや何の信憑性もない。言い続ければ私の立場が危うくなるばかりだ。
 仕方なく私はボスを動物園に連れて行った。
 バナナを食べる度に、ボスは猿らしさを増し、人懐っこい笑顔を見せるようになった。これなら、どこに行ってもすぐに馴染めるかもしれない。私の中にボスに対する親心などあるはずもなかったが。
 
「昨日までは宇宙人だったんですが」
 園長の前で、私は正直に打ち明けた。
 
「これはあなたのお母さんですよ!」
 私ははっとしてバナナを食べた。私も猿か。
 
 
 
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本は読まない方がいい

2019-07-24 15:59:49 | 忘れものがかり
本を閉じるのが好きだった
閉じた瞬間
現実の世界が帰ってくるが
意識の半分は本の中に残っている
そんな宙ぶらりんが心地よい
 
 昼休みに学校を抜け出して
 異世界に迷い込んでいる
 帰ることは帰るけれど
 そんなに急いで
 帰らなくてもいい
 無理をして
 帰らなくてもいい
 こっちが楽しければ
 こっちでもいい
 あちらに本当の世界が
 (もう一つの世界)
 あると思えれば心に余裕が持てる
 
読み終えてしまえば
そこにある世界は閉じてしまう
 
読まずにおけば
ずっと大丈夫
 
いつでもいつまでも
 
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ひとこまのダメージ

2019-07-24 15:32:42 | 【創作note】
誰にも読まれない小説を書いていた
あとになって見返してみれば
我ながら酷く思える
 
それでも
書いてる時には
それなりに「よい」と思って書いているんだよ
 
一番辛いのは
偶然それを見かけた人に
30秒ほどで酷評されてしまうことだ
 
「判断が速い」
 
それが案外すべてだったりして……
そんな「ひとこま」が
作者を大変凹ましたりすることもあった
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なにわの泡銭

2019-07-23 07:41:00 | 短歌/折句/あいうえお作文
エンタメのドンが注いだ生涯の口約束はサイダーの泡
(折句「江戸仕草」短歌)
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社長さんそれはない

2019-07-23 06:15:04 | 夢追い

 

 遅れてきたわけでもないのに置き去りにされている。そのような宴の中にいた。話すことは何もない。話せる人はどこにもいない。ドリンクは一つも届かない。社長だけがそれを注文できるのだ。天井を見上げる。どこまでも高く、星が透けて見えるほどだった。視線を元に戻すと哀れな宴が戻ってきた。社長のいる一角だけが光って見えた。あそこへ乗り込んでアピールできたら……。唾を飲み込む音がはっきりと聞こえるほど、僕の周りは静かだった。耐えきれなくなって目を閉じた。見上げなくても遙か遠くにある星を見ることができた。その中のいる人の声に耳を傾けることもできる。現在地から限りなく引き離されていく。宴の中にも座布団の上にも、自分の肉体はなくなっている。
(駄目だ)
 自分だけの世界に入り込めば、寂しい宴を消すことはできる。同時にそれは自分を消すことだ。もはや誰からも見つけられることはないだろう。そうなれば負けだ。(何の負けだ)恐ろしくなって席を立った。
 いっそ離れよう。遠くへ。上も下もない。勝ちも負けもないような、遠くへ……。経験を置いて、しがらみを断って、自分を知る者がまるでいないほど、遠くへ。そこで言葉は通じるだろうか。すべてをリセットするようなことが簡単にできるのだろうか。潔い決断と引き替えに失うものの多さを想像して身震いした。そうするくらいならもう一度……。ためらいの中に落ちて一層強く震えた。
 社長に向かって、最も厄介な存在に向いて、笑うなり、要求するなり、することは、本当にできないことなのか。
「なあ、あんた。これをお願いできないかな」
 遠い街で突然話しかけられたような気がした。(僕はまだここにいたのか)
「銀将をあの通路に等間隔で並べてくれないかな」
「えっ?」
「俺たちにはできないことだからさ」
 あまりにも簡単で、妙に心に響く言葉だった。世の中にそんな望みがあったなんて……。
「銀だけでいいの?」
 うれしそうに男は笑い、先の望みを話し始めた。
「その次は楽しみがあるんだ。この街を金や銀や飛車や角や桂や香で飾り立てるんだよ! 勿論、歩もいっぱいいっぱい……」
 夢の先端に手を貸せることが誇らしくうれしかった。僕は男の手から四枚の銀将を預かった。ドリンクも何もなくても、もう寂しくはなかった。
 
 
 
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どうか手をあげないで

2019-07-22 22:04:51 | ワニがドーナッツ!
10人の手があがるとそこまで
舞台を下りなければならない
 
始まってまもなく
5人が手をあげた
ここまでは計算通りだ
彼らはロケットスタートしか求めない
 
ここからが勝負だ
前振りにどうかつきあってくれ
6人目の手があがる
待て待て まだだぞ
結論を急ぐなよ。見届けて損はない
 
7人目
待てって つられんな
おとなしく聞けよ
いい子いい子
ワニワニワニワニ
 
よし
ここから転換するぞ
一気に世界が弾けるぞ
さあ
8人9人10人!!!
 
「そこまでー!」
おい! お前ら!
もう少しで面白くなるとこだったのに
 
(人の話はちゃんと最後まで聞け!)
 
「はい。残念でした。
また面白いネタを考えて挑戦してください!」
 
(その先にあったんだよ)
 
もう
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スペシャル・ライブ

2019-07-21 13:28:04 | ワニがドーナッツ!
蠅のパスを受けた害虫オールスターズの
10番はゴキちゃん すかさず蜘蛛へパス
リターンを受けてドリブル突破
巧みなフェイントでディフェンスをかわして
そこからミドルシュート!
強烈な弾道だ!
これは惜しくもクロスバーを直撃
 
ワニがドーナッツ!!
 
ここで前半終了のホイッスルが吹かれました
エースのゴキちゃん
後半は
ゴキブリフレンズのユニフォームを着て出場です
 
 
 
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話芸契約

2019-07-20 10:36:00 | 短歌/折句/あいうえお作文
エンタメのドブにはまって書面なき暮らしの中をさまよえる芸
(折句「江戸仕草」短歌)
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改行アクセル

2019-07-19 08:29:00 | 短歌/折句/あいうえお作文
改行が語りを飛ばす未来へとイメージだけを親友にして(折句「鏡石」短歌)
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本当はスキップしたかった

2019-07-19 04:18:34 | リトル・メルヘン
最新のバージョンに
私をアップデートしてちょうだい
 
恒例の大型アップデートにかかる時間は
およそ150年
長いとは言えないがそう短くもない
その時、僕はここにいるだろうか
まるで想像もできなかった
 
どうしても必要なの?
 
何も言わずに頷いてみせる
君の未来志向に
逆らうことはできなかった
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猫とアンケート

2019-07-19 03:09:13 | 夏休みのあくび(夢追い特別編)

「早めに入ってWiFiするのが得なんだけど」

 団体客が一斉になだれ込んで来た。そのせいかウエイターは大急ぎでスープの器を運んで来た。すべての指が器の中に入っている。一口飲むとそれはすっかり冷めていた。髪の毛が一本浮かんでいるのが見えた。自分のものだろうか。すくい取ってみるとそれはとても長かった。

 三十センチ。僕のとは違うね。

 手の平で眺めている内にそれは黒から銀色に変わり始めた。震えながら、縮んだ。これは一本ではなく、一匹だ! 

 意図的なものか、偶然かはわからない。とにかく、彼らは団体客を優先的に扱ったのではなかったか。突然、それは機敏になって手の平から飛び出した。待て! 追いかけて、テーブルを離れた。団体客のキャリーの間を縫って逃げて行く、銀の虫を追って厨房に入った。

「捕まえて!」

 中は会議中だった。ちっ! 男はペンを回しながら舌を打った。

「また出たか」

「踏むんだ!」

 テーブルの脚と男たちの脚の間を縫って、虫は時に縮み、時に消えながら、最後は料理長の手によって捕獲された。

「クレームは直接、上階の社長室へお願いします」

 銀の虫を手に取って、エレベーターに乗った。

 社長室のドアをノックする。

「こんなものが、出たんですが」

 秘書はすぐに社長に電話を入れ、先客との会話に戻った。部屋の隅では、老人が金槌を手に物作りに没頭していた。社長を待つ間、部屋の中を観察した。寝そべるには絨毯は深すぎて、少し気が引けた。本棚には世界のメルヘン全集が並んでいて、この会社のルーツが窺える。みんな、人を楽しませることに必死だ。ちょうど手の届くところにあった本の一冊を適当に開いて読んでいるとドアが開いて社長が入って来た。

「お呼びですか?」

 ここでは社長よりも秘書の方が偉いらしい。

 僕はポケットに大事に保管しておいた虫を取り出して見せた。手の平に載せて見るとそれは長いスカーフだった。

「今はこんなに大きくなったけど、元は虫なんですよ」

「ふーん」

 社長はどこか他人事のように薄い関心を示しただけだった。謝罪の言葉など何一つもなかった。ふーん……。そうかい。それだけかい。

 しばらくすると社長室の中は、見学の子供たちや外国人たちであふれ始めた。待つ間にも随分と疲れたし、人の多さにも嫌気がさして来た。

 もういいや……。

(こんな会社やめてやる)

 エレベーターを降りながら決意を固めていた。

 一階では、更に団体客の数が増していた。

 表に出たところで、どこにもまだ就職などしていなかったことを思い出して、はっとした。けれども、どこか清々しい気持ちにもなった。僕はポケットに両手を突っ込んで、見知らぬ街を歩き始めた。

 

 

 

狭いところを上手く通れないので、街頭に立って猫にアンケートを試みた。

「最も狭いところはどこでしたか?」

 足早な猫に交じって、足を止める猫もいた。

 彼らの答えはあまり素直ではなかった。ヒントになるようなものは得られなかった。総じて、猫の答え方は、ぶっきらぼうだった。

忙しそうに通り過ぎる猫、迷惑そうに大回りして行く猫、すぐ近くまで寄って来たと思ったら、突然背中を向けて猛ダッシュして行く猫。最後の回答は何だったのか……。もう思い出せないほど、親切な猫から遠ざかった。冬支度にでも入ってしまったというように、すっかり冷たいモードに入ってしまった。

「よろしかったら、アンケートに……」

 顔色をうかがって声をかける。細身の、少し柄の良さそうなのが、近づいて来る。久しぶりに、絡むことができるかもしれない。猫は、下から睨みつけるように、こちらを見た。

「猫の手は余ってなんかないよ!」

 やはり駄目だった。冷たいモードはそう簡単に抜け出せるものではなかった。少しの言葉を拾えていた頃が、懐かしい。ファイルをもう一度、見返してみる。大した言葉があるわけではなかったけれど、今を生きる猫の声に趣を感じていた。

「何かお困りのようですね」

 驚いた。よほど困っているように、見えたのかもしれない。

「私が手を貸してあげてもいいよ」

 願ってもない話だった。彼女はかつては人と一緒に暮らしていたこともある、年老いた猫だった。色々あって、今は独りで暮らしているということだ。猫のことを猫に聞いてもらえるなんて、心強い。頼もしい援軍を得て、猫の回答は少しずつ戻って来た。

「ちょっと、そこの猫、止まりなさい」

「……」

「今までで最も狭かったところはどこですか?」

「それは私が生まれる前に住んでいたところだよ。多分、その名残かな。今でも私は狭い場所を好んで通るんだ」

 問う者によって、答え方もまるで変わってしまうことが驚きだった。僕だけだった時とは、何か空気が違っている。

「狭いと思ったことは、一度だってなかったよ。僕はただ自分の愛する場所に落ち着いているだけさ」

「狭き門って何? 自分が単に下手くそなだけじゃない?」

 猫はぎょろりと向いて言った。言葉が胸に刺さる。

 アンケートは深夜になっても続いた。長老の背に控えて、まるで僕がアシスタントのようになっていた。メインストリートを遊び疲れた猫たちが通り過ぎる。

「ちょっと君」

 

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お約束

2019-07-19 02:42:00 | 短歌/折句/あいうえお作文
エンタメはどうなることや書面なき口約束はさよならのため
(折句「江戸仕草」短歌)
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君は何者だ?

2019-07-18 11:12:08 | 【創作note】
    色々やっていると色々迷う時間がある。
 例えば何か一つの断片が強く浮かんできた時などに。
 
短歌にするか
自由詩にするか
エッセイにするか
お話にするか
(お話と言ってもどんな?)
日記にするか
つぶやくか
(つぶやいて終わりにするか)
人に話すか
(人に話して終わりにするか)
寝かせておくか
(もっと大きな何かに化けるまで)
 
 トマトだったら
 そのまま食べるか
 炒めてパスタに入れるか
 鶏肉と一緒に煮込むか
 スライスするか
 (スライスしてオイルづけにするか)
 かじりつくか
 寝かせておくか
 (寝かせておいて誰かが食べるか)
 
自分はいったい何がしたいんだ?
自分は何者なんだ?
何を言いたいんだ?
何をすべきなんだ?
そうした様々な問いが湧いてきて
どうしていいかわからなくなったりして
ねえ
 
で、まあ
表現の形は色々あるけれど
何をやろうが
 
「君は君でしょ」
 
 
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しあわせの道

2019-07-17 21:17:00 | 短歌/折句/あいうえお作文
落ち着けるモスバーガーへてくてくと70分はしあわせの道
 
(折句「おもてなし」短歌)
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あなたの嫌いな仕事

2019-07-17 06:41:15 | 【創作note】
本当は詩を書いていたかったが
あなたはそれを望まない
 
「ちゃんと稼ぎなさい」
「早く家族を作りなさい」
「早くごはんを食べなさい」
「もっと野菜を食べなさい」
「みんなに合わせて。遅れないで」
「迷惑だけはかけないで」
「挨拶だけはちゃんとしなさい」
 
どうして言ってくれないの
 
好きなように書きなさいと
 
 
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