眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

磯辺揚げ

2012-12-14 11:33:29 | 短歌/折句/あいうえお作文
いにしえの
ソラシドたちは
ベッカムの
アーリークロスに
芸術をみる
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ニンジンとおばあさん(やまとなでしこ)

2012-12-13 16:49:32 | アクロスティック・メルヘン
優しい母の話は大好きだったけれど、
まだおばあさんと話すことは不慣れで、
問いかけられて驚いたり、
なになにそれはいったいどういうこと、と目が
点になったり、黙り込んでしまったり、
仕方がないことだったけれど、
困った毎日が続くのでした。

優しい友達はいるにはいたけれど、
まことの友達という友達は、
遠くの町に引っ越してしまったし、
「ななちゃんなんて嫌い!」
天にも届くほどの大きな声で、
しびれる一言を投げてくる者もいて、
子供って大変だなと思うのでした。

「やれやれまた散らかして!」
「またニンジンを残しているのね!」
と言っておばあさんは叱ります。
「ななちゃんまた嫌われたのね!」
「天狗なんていやしませんよ!」
「シンデレラもいやしませんよ!」
「今度は許しませんよ!」

やかましいおばあさんの声が嫌いで、
まるっきり聞いている振りをしながら、
とんでもなく違うことを考える。
夏いっぱいに咲いた向日葵に、
手を伸ばしてあるべき光の方向を教える
使命がもし自分にあったならば、
「こっちよ! ほら、こっちを向くのよ!」

優しい先生はいるにはいたけれど、
まことの先生という先生は、
遠くの学校に飛ばされてしまったし、
「ななちゃんなんて大嫌い!」
天下に轟くような強烈な声で、
しばしば子供じみたストレートな、
告白を受けることもあるのでした。

「野菜を食べなさいと言ったでしょ!」
「またニンジンを残しているの!」
と言っておばあさんは叱ります。
「ななちゃんまた嫌われたのね!」
「天才なんていやしませんよ!」
「シーラカンスももはやいません!」
「古典もちゃんと読むのよ!」

優しい母の話は大好きだったけれど、
まだおばあさんとはうまく合わなくて、
遠くに行った人たちのことばかりが、
懐かしく思えてしまうような夜は本を一冊、
手に取って、もっともっと遠い世界の人のことを、
親身になって思ったり、
子守唄代わりにするのでした。

休み時間はいつものように一人で、
窓の外の飛行機雲を眺めていると、
突然、耳元で声が聞こえはっとしました。
「ななちゃんのこと苦手!」
照れたように、その子は言いました。
芝生がゆっくりと色づいていくように、
心にざわざわとしたものが訪れるのがわかりました。

厄介なニンジンのこと、
まだ不慣れなおばあさんのおしゃべりのこと、
飛び続ける雲を千切った言葉のことを思っていました。
「ななちゃん何かいいことあったの?」
天狗も天使もシンデレラもいないけれど、
しばし空想に耽りながら、新しく現れた
言葉のことを思っていました。

やがて我に返ると目の前には課題が見えます。
「またニンジンを残しているの!」
時は今です。
「ななはニンジンが苦手!」
天にも届くような声で言いました。
7時半を少し回ったテーブルの前で、
困ったような顔のおばあさんがいました。
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風の議員

2012-12-12 22:43:41 | リトル・メルヘン
「傾いているようですが」
 新しく建った塔は西日を受けながら、今にもこちらに倒れてくるのではと思われた。
「わざとそうしているのです。安全上」
 それで合っているのだと議員は言った。
「風の強い日に、自転車をどうすると思います?」
 風の強い日だった。歩道の端に隙間なく自転車が並んでいた。ずっと止まっている物もあれば、今止めたばかりの物もあるのかもしれない。何のことだろう……。風と自転車がどうしたというのだろう。

「今日は風が強い」
 自分が起こした風だというように威厳を込めて言った。
「こうするんです!」
 言葉と共に蹴り上げる。議員の黒い踵に押し出されて自転車は豪快にドミノ倒しとなり、音に気づいた人々が一斉にこちらを見た。
 私はすぐに議員から距離を取った。

 どうして握手なんてしたのだろう……。
 ほんの少し前に握った議員の厚い手の感触が、まだ残っていた。

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卒業

2012-12-11 20:54:04 | 2秒小説
子犬と一緒に歳をとってボールを置きました。
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郵便屋さん

2012-12-11 00:07:21 | 忘れものがかり
郵便屋さんを
待っていたので
すべての足音は
郵便屋さんだった

途中までは
郵便屋さんで
一歩一歩
着実に近づいてきて
前を通り過ぎる
瞬間別人になる

次こそは

期待して
期待して

期待するから
別人になるのか

私は
もう期待することをやめて
ただ
待つことにした

足音が
やってくる
近づいてくる

くる

こちらへと
着実に
こちらへと
向かって

足音が
足音が

きっと 郵便屋さんだ

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嘔吐物

2012-12-10 23:57:17 | 短歌/折句/あいうえお作文
大空と
海はもつれて
とけあって
ふつつかだけど
ついていきたい

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夜明けのモッピイ

2012-12-10 20:24:10 | 夢追い
 血色のよい芸能人が、画面いっぱいにあふれる手の込んだ料理の数々を口に運んでいた。八時半にもなればお腹が空くのも当然だったが、テーブルの上に並び始めるものも、湯気の立ち上がるものも何もなかった。そもそも人の気配がなく、晩御飯が始まるという様子ではないのだった。ここにいては生活が荒んでしまう。階段を上がると、二人はいつでも眠れるよな格好で横たわっている。
「ご飯は?」
 父は、枕の傍で不思議そうな顔をして僕を見た。
「お父さんは朝から何も食べてない! 開けっ放しの窓から雨にも打たれたし、一人で泥棒とも戦った!」
 知らんがな。お父さんのことなんか知らん!
「スナックへ行こう!」
 名案を思いついたというニュアンスで父が言った。
 みんなで? の一言がもう言えなくなっていた。ずっと昔だったら、自分が自分でないくらい小さかったら、言えたかもしれないのに。どこへでも勝手に行けばいい。そう口にしないことが、今は精一杯だった。
「それより今から面接に行こう」
 今度は母が代案を出してきた。どうしてそういう発想が生まれる?
「酷い子。でも、いいところも、いい時もたくさんあるんだから……」
 そんなことより、今は腹ごしらえだろうが。世間の常識を知らないのか?
 しかしお腹が空いたということを精一杯の声で伝えることができない。
 隔たり……。今はそれだけがとても強い。
(面接受かるといいね)他人事のように思った。
 自立した自分が一人街を歩く姿が見えて、笑みが零れた。
 おやすみなさい。もう今日は疲れたでしょう。

 四時半だというのに誰かがガラス戸を叩く。知った顔だったので鍵を開けた。
「鉛筆とコンパスある?」
 コンパスは見つからなかったので鉛筆を二本用意した。
「これでいい?」
 コーチは黙って頷き、土の上に二本の鉛筆を使って円を描いていった。それが各自のポジションになる。
「これは練習メニュー?」
「まだ作成途中のね」
 円と円とでパスを交換しながら、即座に次の場所に移動する。パス&ゴーの練習だった。庭中狭しとボールが転がって土埃が舞う。いつの間にか多くの練習生たちが集まってきていた。ミスをした生徒のボールが円と円とのパスコースに入ってきて、しばし中断が生じる。
「これはこうなるよ」
 メニューの問題点が浮上する。その内今度は、パスを出そうとする者の前に小動物がやってきて邪魔をし始めた。
「誰がつれてきたんだ?」
 心当たりのある者はいなかった。練習が終わっても、小動物はどこにも行かず、休憩の輪の中に紛れ込んでいる。人懐っこさはわかるが、名前がわからなかった。細長い体の上に、少し不釣合いな大きな頭を載せていた。
「モッピイだよ」
 誰かが言った。
 トイレに行くと用を足している途中でモッピイがやってきて邪魔をした。流れを途中で止めて、モッピイを追い払う。仲間の噂を聞いてか、他のモッピイたちも中に入ってきてわいわいとした。モッピイのことを知らない小さな子供などは、鬼が来たと言って泣き出してしまった。悪気はない奴だと言って安心させるが、すぐには泣き止まない。食っちゃうぞ! 脅しをかけてモッピイを追い出した。

「雪?」
 女は目を覚ました。硝子ケースの中から出てきた女は、自分の想像に描いた女とは違っていた。半信半疑で窓に顔を近づけてみる。雪。確かに、降っているのは雪のようだ。どうして今になって降り出したのだろう。昨日、降った雪ならまた別の時間の流れを作り出すこともあっただろう。どうして今日で、彼女の傍で降るのだろう。
 夜明けの街では、カメラを手にした男女が、それぞれの現在地を記念にしようと落ち着きなく動き回っている。
「せっかく来たところ悪いけど」
 観光客らしい男がカメラを渡されている。
 トイレに行き用を足していると忙しない足音と共にモッピイがやってきて邪魔をした。モッピイの首をつかんで、外につれていく。悪気はないのだが、邪魔ばかりするので困った奴だ。
「フィルム代もらいました」
「馬鹿! 返せ! いらないに決まっているだろう」
 師匠のような人に責められて、男は金を返す女を探さなければならなかった。一瞬モッピイを見て、膝を折った。
 列車は長いトンネルの中に入っていく。その間にチャンネルを変えるとそこはヤマトの船内のようだ。実写ではなく、ちゃんと本物のしまさんがいる。録画もされているので、本気で見ることはやめにした。それよりも冷蔵庫の中のサンドイッチだった。日付を確かめたところやはりトマトサンドは今日中に食べなければならない。トマトサンドを取り出してみると蓋が閉まらなくなった。俺も取り出さないかと中の物が訴えたり混乱を起こしているのを冷静に落ち着かせる。最後まで挟まって抵抗したのは、小豆色した豚肉だった。トマトサンドを食べ切ってしまうとそれ以上やるべきことは何もなかった。

 誰かがガラス戸を叩く。
 ああ、この流れはもう知っていた。

 僕は鉛筆を二本を用意して鍵を開ける。
 練習が始まる。パスが流れる。
 モッピイはやってこない。
 淀みなくパスが流れて練習が終わる。

 おつかれさまでした。
 静かに、平和におしっこが流れる。

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豪腕クリーン

2012-12-09 18:37:07 | 2秒小説
クリーンなイメージが人ごみを整理しました。
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4秒ルール

2012-12-09 11:53:35 | 2秒小説
人ごみに生まれて4秒間は無敵でした。
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自分磨きの旅

2012-12-08 10:27:49 | 2秒小説
手洗いの数だけ綺麗になりました。
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おいしい器

2012-12-07 16:32:59 | ショートピース
鳴り物入りで飛び込んでくると駅前を占拠した。移動式カフェはコーヒーカップを一新してから一躍人気者となり、甘党微糖無糖派層も取り込んで、極寒の12月を温めたのだった。「味はカップで変わるのさ! 中身を変えるより遥かに簡単だ」店長は行列を見下ろしながら白い息を吐いた。#twnovel

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大分トリニータ

2012-12-07 00:20:35 | アクロスティック・メルヘン
追って連絡しますと言ってから、
王が14回交代しました。
1千年も経とうかという頃に、
「足し算が上手くなる足湯を見つけなさい」
時を隔ててようやく声がしたのでした。
「リフティングキングがユングと寝具に詳しいのだとか」
ニートモが漠然とした情報をもたらしたことから、
多角的に足取りを追う計画が始まったのでした。

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自然が一番

2012-12-06 15:58:19 | 2秒小説
小枝とキノコがおかしな人を提訴しました。
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パラパラレシピ

2012-12-06 00:38:52 | 夢追い
 駅を歩くのはスーツに捕らえられた人々で、他人の捕らわれ振りを観察して立っていた。自分の捕らわれ方もそれほど間違ったようでもないと少し安心感を覚えた。列車が到着する。乗り込もうとする人々と競り合いながら、無数にも見える人々が降りてくる。その勢いに吸い取られそうになるのを、必死で踏ん張る。「乗りません! 僕は乗りません!」
「駅長室は?」
「あっちです」
「ありがとう」
 そうして歩き出してみると男の指差した方向のなんと曖昧だったことか。適当な親切は人を惑わせる。こっちなのか、あっちなのか、こっちで合っているのか。こっちに歩いていくのが正しいのか、できれば頷いて示してくれないだろうか……。振り返ると彼はもう群衆の中に姿をくらましていた。教え逃げだ。間違っていると思われる方向に歩いた。行き先を変えれば、そちらも間違っている疑いが強かったからだ。
 雑貨売り場のような明るい店内、活気のある人々の声。やはり、あっちだったか……。疑念は強まっていくのに、歩みは止まらない。「いらっしゃいませ」もうすぐ誰かがそう言って、僕を迎えてくれるかもしれない。

「いらっしゃいませ」
 そうして迎えなければいけないのは僕の方だった。上着を脱ぐが適当な置き場が見つからず、床の隅に置く。客がやってくる。
「チケットは?」
 さっき買ったと言う。どこで? 男は質問には答えずに、領収証が欲しいと言う。なに? 話を先に進めるつもりか。和食が欲しいと言う。ソファーの席に呼ばれて行くと、薬がたくさん増えたので空のグラスをもう一つくれと言う。セルフではないのか? 僕は預かったままのクレジットカードを持ってパンをくわえた人に恐る恐る持っていく。本当にこの者のカードだったろうか? 男は黙ってカードを受け取る。まさか自分のでもないカードを無言で受け取るなんてことはないだろう。その模様はカメラにも映っていることだし、そうして問題は一つ一つ解決していく。はい、はい、グラスね、空のグラス。グラスを取ろうとすると誰かが気を利かせて水を入れてくれている。ああ、せっかくだから、水入りのと空のと二つ持って行こう。しかし、もうグラスがない! 領収証の人は誰だった? 壁沿いの三人組の一人のようでもあるし、ソファーの一人のようでもある。「えー、先ほどの……」どちらからも反応がないところをみるとどちらでもないのか……。見当違いが花開く間、料理は何も完成しない。壁を歩いているのは、蜘蛛だ。

 蜘蛛はピーッと風船ビームを出すとその先には小さな点が見えた。光が溶けると点はすぐに子蜘蛛に変わった。これがやがて成長して部屋中が蜘蛛だらけになってしまうと考えるとぞっとした。
殺ろうか
 今の内に殺ってしまおう。そうだ、どちらを?
 目の前で殺せば、恨みをかってしまう。かといって先生を殺せば、誰が明日から教えるのだ。
 先生はビームを糸に変えながら、壁上りを教育している。米粒ほどの大きさで。

本格パラパラチャーハンスタート!

 周りがどれほど忙しくても関係なかった。彼女は本格中華コーナーの箱の中に閉じ込められて、そこだけを任せられていたからだ。
「どうして断らなかったの?」
 素人と本格とのギャップがおかしくもあったが、彼女は断れなかったのだ。断るということは去ることと同じだった。彼女は小さなレシピだけを頼りに、本格と名を打たれた箱の中に居座ることを選んだのだった。ついに、中華コーナーにも客がやってきて、やってくる時はまとまってやってくるもので、彼女は練習も十分でないまま同時に複数のチャーハンを作らなければならなくなった。完成度よりも近道を彼女は求めてしまう。
「待って! レシピを」
 マネージャーが飛んできて、彼女に指示を出す。忙しくても、レシピ通りの手順を踏むように。
 レジを開けて僕は札を数えた。九万九千円と結論付けられる。もう一度最初から……。
「待って! まだ数えないで!」
 マネージャーが飛んできて、今はまだ触らないようにと指示を出す。レジに触れなくなったので、仕方なく誰のかわからな土産物を開封して、カウンターの隅に並べた。二体の兎を立てて置いて、ひとまず満足した。

「駅長室は?」
 兎の陰からスーツの男が現れて訊いた。カウンターはホームにつながっているのだった。
「あっちです」
 僕は、紳士的に男を本格中華コーナーの方に案内した。
 噂が噂を呼んで、早くも繁盛店の仲間入りをしている。
「待って! まだ帰さないで!」
 相変わらずマネージャーが彼女の傍に張り付いていて、レシピを持ってくるように言う。
 求めに応じて差し出されたレシートをばらばらにして、彼女は鍋を振るった。
 紙吹雪が、彼女の腕によって高々と舞い上がる。
 人々はしばし足を止めて、レシピの中に捕らえられていた。

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原色のヒーロー

2012-12-05 21:12:47 | ショートピース
「とりあえず3分割しましょう」多すぎては大人でも混乱するからと先生は言い、赤青黄色の3種に分かれた。「わかりやすいのが1番。原則これでまいりましょう」勝った後で元の色に戻るという決め事で、色鉛筆は自分のカラーを伏せながら各地に散って行った。大運動会の始まりである。#twnovel

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