「副立会人の先生が入ってきました。何かいい手でも思いついて、たまらなくなって、こっそり助言をしに入ってきたのでしょうか、先生」
「何をおっしゃる。そんなわけないじゃないですか、田辺さん」
「ほほほほっ、違いますか。これは大変失礼いたしました」
「仮に思いついたとしても、絶対に言いません。将棋では助言というのは、絶対の禁じ手ですから、もしもそんなことをしてしまったら、二度と対局室には入ってこれなくなります」
「立ち会いの先生方は、思っても見守っているだけですね」
「勿論、そういうことです」
「はい。この後も、名人戦生中継をお楽しみください」