経営コンサルタント田上康朗の雑感帳

経営コンサルタント田上康朗が、気ままに本音で記す雑感帳です。書く日もあれば書かないときもあります。

見えないから落とし穴

2010年04月03日 | Weblog
価格競争が高じると、経営者というものは、一応に利益確保に躍起になる。

そのため品質より原価に意識がいく。その結果、品質が落ちる。
そしてまた恐いことは、廃棄処分に目をとがらせ始めることである。
これまでこうした事例を幾度となくみてきた。

S市のビジネスホテルの経営者は、痛んで廃棄した食材を、
「焼くなりにるなり再加工すれば、まだつかえるじゃないか」
と板長を叱った。
板長が退職。
 その後、個のホテルは食中毒を引き起こし、新聞に報じられ
 不振に陥りその社長は退任することになる。


 ある中堅食品スーパーの話。
鮮魚売り場や精肉売り場の冷ケースの半分近くのスペースが、
二次加工食材で占められた時期が続いてた。

表向きは「2次加工食材充実による差別化」であるが、実は・・・。
トップから利益低下を責められた担当部長が、追いつめられ
配下に古い食材の再加工を指示した結果である。

2次加工とは香辛料や味付け加工して再販すること。
再加工日時で製造日のラベルが貼られる。
だから消費者が気づくことはない。
食べるときは火を通すから食中毒が起きることもまずない。

ところが、である。
こうした2次加工処理は、パートたちの仕事である。
彼女たちは、仕事だから命じられた通りやる。
しかし買い物をするときには消費者であり一家の主婦。
で妥協は決してしない。結局このスーパーは、倒産した。

表向きは競合激化だが、真相は違う。
客離れによる販売不振である。客離れの理由は巷の"噂"である。

これが、従業員が自分の店で買い物をしない本当の理由とみてよい。
従業員が自分で働いている店で買い物するかどうかは
愛社精神の云々なんてことじゃない。貴重な情報提供なのである。

せっかく従業員が自店で買い物をしないという行動で、
見える形として経営者に情報発信をしても、
トンチンカンな対応でその情報を消し、
まったく的はずれな対応をし、傷口を広げる。
「経営者よ、何をもって情報、情報といっているのか」
と言いたい。これをトンチンカンといわず、なんといおう。

だがこうした話が、実は商店街や個々の店で何気なく行っている
バーゲンセール、シール3倍セール、イベントなどと
どう違うのかと問われ、「違う」と断定できるであろうか。


落とし穴の本質は、見えず隠されていることにある。

人も自分も陥りやすい穴を事前に見越し、あるいは人が落ちるのを見て
 避ける人こそ賢明な経営者といえるのではないか。