長尾たかしの・・・未来へのメッセージ

自民党衆議院議員長尾たかしのブログ。平成11年からネット上で情報発信を継続。サラリーマン生活を経て政界へ。

TPP問題、医療界が押さえるべきツボ

2012-01-07 00:00:00 | TPP
ロハス・メディカルという医療専門誌の取材を受けた。以下、TPPと医療に関わる問題について掲載されているので、ご一読頂きたい。


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TPP問題、医療界が押さえるべきツボは②―長尾敬議員に聞く
(2011年12月22日 18:14)

 前回に続き、TPP問題の医療界に及ぼす影響についてそれぞれの立場の国会議員から語っていただきます。今回は慎重派の立場を取る長尾敬衆院議員(民主)です。

 TPP交渉参加に関する議論はいまだ続くが、水掛け論の応酬になっている場面が多々見られる。賛成派と反対派の主張の根拠が違うまま議論していることが一つの理由だろう。
 そこでこのインタビューでは分かりやすく議論を整理するため、それぞれの立場の国会議員に次の3つの質問に答えて頂くことにした。

①TPP交渉参加することにより税収が増え、それによって社会保障費も増えるという絵を描くことはできるか?
→賛成派の主張の根拠は「税収増による経済の活性化」といったことなど。仮にそうなったとして社会保障費にも移されるなら、医療界の診療報酬を上げることだって考えられるようになるのではないか? そもそもここが食い違っていると議論にならないため、整理する。

②医療界の懸念する、国民皆保険制度への影響や営利企業の参入は、どれぐらいの可能性で起こってくると思うか。またそれらから守るために、国会議員としてどうしていくか。
→医療界の最大の懸念の部分。

③日本の医療界への外国資本参入、また混合診療解禁は、そもそも「悪」なのか?
→②に関連するが、本当にこれらは悪い事なのかどうかという議論がそもそもされていない。


 第一回目は、長尾敬衆院議員。


長尾敬氏プロフィール
昭和61年 立命館大学経営学部経営学科卒
同年 明治生命保険相互会社入社
平成14年 同社退社
同年 民主党大阪府第14区総支部長に就任
平成21年 衆院選に民主党公認候補として立候補、当選

◆国会の役職
厚生労働委員会委員
拉致問題特別委員会委員
東日本大震災復興特別委員

※取材を受ける立場について
私はTPPを一括りにして全面反対というのではなくて、あくまで慎重派という立場からお話をさせていただきます。



①TPP交渉参加することにより税収が増え、それによって社会保障費も増えるという絵を描くことはできるか?
私は思いません。逆に税収が増えると言っている人はどういう根拠で言っているのか、議員同士で話をしてもはっきりと説明できる方がいないのです。仮に日本がTPP10カ国目として加わったとすると、10カ国のGDP(国内総生産)を比較すると、その91%を日本とアメリカが占めています。これでは事実上の日米間交渉になってしまうわけで、賛成派は「アジアの成長を取り込む」と言いますが、これでは説得力が弱いと思います。私はTPPについて全面的に否定はしませんし、国益につながることなら大いにやったらいいと思うのですが、税収が増えるというファクトやエビデンスが私には分かりません。

たとえば農業分野について自由化した方がいいという農家の方はおられますが、そういう方はオンリーワンの強いノウハウを持っておられます。だけどそういう部分的な話に合わせるわけにはいかないでしょう。日本の経済全体としての底上げになるというところについて、納得いく説明を聞きたいと思っています。



②医療界の懸念する、国民皆保険制度への影響や営利企業の参入は、どれぐらいの可能性で起こってくると思うか。またそれらから守るために、国会議員としてどうしていくか。
割合は分かりませんが、今後に臨んでいくに当たって、理論武装なり交渉武装をしておかないと侮れないという気持ちはあります。その根拠は過去の歴史です。私は民間の生命保険会社に17年いたので1994年に合意した日米保険協議を体で感じています。情けない言い方をすればトラウマになっているのです。保険には、死亡保険などの第1分野、年金保険などの第2分野、それ以外の医療保険などが入る第3分野があります。日米保険協議によってそれまで規制されていた第3分野がいよいよ解禁されるぞと、国内外の保険会社が待ち構えました。しかし実際には、国内系生保には団体型(従業員を被保険者とする法人契約)しか解禁せず、外資系生保には市場として最も期待される個人向け単体商品を解禁させてしまったのです。単体商品が国内の生保に解禁されたのは2年半後で、私たちはその間にほとんどの個人のお客様を外資系保険会社に取られてしまったのです。それを一つの契機に、国内の保険会社がバタバタと倒れ、外資に買収されていきました。このような歴史的事実から考えれば、世界が羨み、日本が誇るとも言える国民皆保険制度を、同じようにして何らかの形でアメリカンスタンダードに合わせざるを得なくなる局面は起こり得ると思います。

小泉政権下での郵政民営化では最終的に国内法が変えられました。当時は「特定郵便局長は準公務員で世襲になっていておかしい」などと郵便局の組織の問題であるかのように見せながら、実は簡易保険や郵貯マネーが狙われていたわけです。それは郵政選挙の争点にはなりませんでしたが、後々になって民営化は間違いだったと反省されています。つまり国内法の変更は、変えようという勢力が国会や霞が関にできてしまえば可能なのです。

他にも例はあります。アメリカからの外圧を受けて1991年に行われた大規模小売店舗法の改正によって、それまでなかったような大型店舗が住宅街の真ん中にできるようになりました。ウォルマートやカルフールが参入し、今でもトイザらスは残っていますよね。そうして大型ショッピングモールがどんどん郊外にできて、一方で"シャッター商店街"ができてしまったわけです。もう一つ大きかったのは2000年に施行した建築基準法の改正で、それまでの仕様規定が性能規定に変えられ、検査が民間開放されました。これによって外国の資材住宅メーカーが参入できるようになり、結果的に地震に弱い建物がたくさんできて、耐震強度偽装事件につながりました。保険業法、大店法、建築基準法、さらに郵政民営化。日本の国内法は米国の圧力で次々と変えられているのが実際です。国内法があるから大丈夫だというのは真実ですが、アメリカから見れば「変えてしまえばいい」というだけのこと。でも実際に変えたのは、われわれ日本人なんですよ。

もう一つ言えば、条約は位置付けとして国内法より上位にあります。確かに日本が批准している「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」などは国内で守られていません。しかし、本来は条約の内容に沿って国内を変えていかなければいけませんし、それに言及した国会答弁もあります。国内法を変える十分な追い風になるものです。

医療界の方々には、一歩立ち止まって慎重に、これらの危険性を骨の髄まで感じていただきたいと思います。繰り返しますが過去の事例はいくらでもありますし、医療はターゲットになるでしょう。たとえばジェネリック。アメリカとオーストラリア間のFTAにより、オーストラリアでは米国の薬品メーカーの特許の期間が延長されています。また製薬企業の卸値が高く維持されるようになっていて、これは製薬企業からの卸値がオーストラリアの3~10倍になっているアメリカに合わせた結果です。同じ内容が日本との交渉の中でも出てくる可能性は排除できないでしょう。

混合診療については立ち位置によって見方が違うと思っているので、私自身は本音を言うと中立の立場です。解禁することで救われる命もあるだろうし、医療の質が低下するという懸念があることも承知しています。



③日本の医療界への外国資本参入、また混合診療解禁は、そもそも「悪」なのか?
立ち位置によって善にも悪にもなると思います。営利を目的にすることのプラスもあればマイナスもあります。では今の医療界のすべてが善かと言ったら、そうではないと思います。例えば働いている医師や看護師の方々の善意や使命感によってギリギリで成り立っている医療現場もあるでしょうが、一方で"白い巨塔"のような世界もありますよね。「株式会社」だから悪とは言えないし、医療界の中にも善悪はあります。利益を追求しようと思えば、営利企業であれば人の花畑を荒らすようなことは簡単にできてしまいます。医療は市場価格ではないと思っていますから、安ければいいみたいな話になると質は落ちてしまいます。一方で値段を釣り上げていこうというやり方もあるでしょう。しかし医療は命にかかわることなので、やることをきちんとやったらコストはかかってきます。そうやって考えていかないといけないものなので、市場価格で安くしよう高くしようというものではないと思います。

しかし、実際にどうなっていくかは見えないので理論武装が必要です。厚労省や農水省が扱う分野であっても、交渉の前面に立つのは外務省です。100%思うようには伝わらないと思った方がいいと思うし、外務省が入れば日米間交渉の過去の流れにどうしても引きずられてくる部分があります。このため、必ず政治家が内容をチェックしなければなりません。最終的には事前事後の国会承認が要りますからね。



④フリートーク
違う業界の話ですが、自動車関連業界はTPPへの交渉参加を推進していますね。しかし現在フォードと米国自動車工業会は日本に対して、ハイブリッド車の中身と技術を教えろという内容の要求を突きつけてきているんです。どういうことかというと、日本はTPPに参加すれば輸出が多くなって状況はよくなりそうだと見込んでいて、それより円高の方が大問題だと考えている現状です。そこで車を売りたいけど日本の優秀なハイブリッド車の性能が障壁になっている米国は、ハイブリッド車の技術を「渡せ」か「やめろ」と、そういう意味合いに取れる要求を突き付けてきたのです。つまりルールを変えてきた。こういう例は今までにもあって、例えばF1では1988年にマクラーレン・ホンダが16戦中15勝と圧倒的強さを誇っていたのですが、翌年にルールが変わってターボエンジンが禁止されてしまいました。勝てないならルールを変えてくるのが外国の戦略で、TPPにおいては交渉のルール作りが競争になるわけなんですよ。TPPについて慎重な準備が必要と言うのはそういう意味で、相手がどう出てくるか分からないのです。私は根っからの保険屋なので、ことに臨むには準備が9割だと思っています。今後何を突き付けられても、国益を守るだけの理論武装をしていきたいと思っています。TPPについては、日本の文化的なものを崩しにかかられると考えて準備した方がいいと思っています。

オバマ大統領は皆保険制度をやりたかったけどできなかったわけです。それなら日本の方から交渉に際して「それならあなたたちも皆保険制度を作ってくださいよ。それから交渉しましょう」と言うぐらいのことを言えるようになっていいと思います。それぐらいの交渉力が必要ですよね。日本の国民皆保険がなくなったら民間医療保険が入り込んできて、一番儲かるのは保険業界です。向こうは本気で国内法を変えようとやってくるでしょうし、そういう歴史があります。慎重に構えて、ことに臨む準備をしなければなりません。

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79 コメント

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Unknown (Unknown)
2012-01-07 22:29:32
>たとえば農業分野について自由化した方がいいという農家の方はおられますが、そういう方はオンリーワンの強いノウハウを持っておられます。だけどそういう部分的な話に合わせるわけにはいかないでしょう。日本の経済全体としての底上げになるというところについて、納得いく説明を聞きたいと思っています。


問題はオンリーワンの農業技術やいろんなものをもっていたとして、TPPは関税だけではなく
そうした農業において伝統野菜や在来種を
遺伝子組み換えの種苗で駄目にする可能性が非常に大きいと思います。
JAの方々の関税撤廃ばかりに目が行っているのは、なにか違うと思います。

商品を駄目にされるという危機感をもってほしいですね。

返信する
mudai (run)
2012-01-08 04:15:45
http://www.youtube.com/watch?v=IWEb5LEi5Pw

エントリーと内容が違いますがご勘弁を。上の動画をご覧になってください
長尾さん、大阪ですよね?
大阪の日教組組合の教師ってこんなにひどいんですか?ショックでした。
私は東京ですが、日教組が幅を利かせていることは聞いています。後々孫を公立に入れることが恐ろしくなりました。
経済的に余裕がなければこんな教師たちに教育されなければならないんでしょうか?
返信する
長尾先生がんばってください (ななし13)
2012-01-08 09:14:21
医療界からは大変懸念されていますが、賛成か反対か、ではなく、医療界への外国資本参入、営利企業の参入、混合診療解禁などが、どのような影響を及ぼすのか、もっと議論される必要があります。理論武装がなく、TPPに突っ込んでいくのは危険です。

なお、混合診療については、政府公認の混合診療である先進医療制度が知られていないように思います。
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/sensiniryo/

日本医師会資料p18では、「先進医療の機動性を高めることで、国民の要望に応えることが可能」とされています。
http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20110302_1.pdf
返信する
Unknown (Unknown)
2012-01-08 14:50:57
李大統領は「日帝の強奪図書が韓国に戻るなど昨年一年は文化系も大切な一年だった」と評価して、「大韓民国が文化芸術のおかげで経済が恩恵を受けていて、この頃は文化芸術が経済を助けてい
る」と強調した。

強奪図書などと言われてますよ。むしろ写本を譲渡してもらった立場なのに。
抗議しなくていいんですか?
スワップも全く感謝されてないようですし、
恩を仇で返す典型的な民族ですな。
返信する
専門誌ですか (上田 和哉)
2012-01-08 15:47:47
医療業界の実態をもう少しお勉強されることをお願いしておきます。

ACCJ、M社・J社・F社など日本法人の粗利率、国内メーカーのコストなどを踏まえたうえでの話を業界紙ならばされるべきでしょう。

ジャパンプレミアムというほど高価な実態は、米国と比較されるだけ(それならば簡単に資料はあるでしょう)でもお分かりいただけるものと思います。国際比較はどうなっていますか???

一般誌で語られるならば、問題なき内容ですが、専門誌になるなら、読まれるのは業界の方々です。もう少し勉強されてから語るべきでしょう。

一度T会病院資材課の関係者と話す機会をもたれてはいかがでしょうか。

先生は専門誌をどれくらい読まれているのでしょうか???
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Unknown (MR.T)
2012-01-08 16:49:35
確かに高級品として、日本の農産物が売られていたりするね。しかし、高付加価値商品は必需品ではない。

 部分的に高付加価値商品を作る農家があるから、他はユダヤの安い農作物を買うべきだ等という発想は間違っている。

 全体を見ていないではないか。TPP推進の輩によく、日本も競争できる農産物があると、ミスリードする輩には要注意だ!
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Unknown (Unknown)
2012-01-08 18:45:08
上田、お前は専門家か?
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Unknown (八尾市  川村)
2012-01-08 19:58:52
アメリカと対等に物が言えるのであれば交渉に参加してもいいでしょう。しかし、今の内閣にそんな期待は持てません。
アメリカは自国の考えが世界のスタンダードだと思っていて、それに合わせる様に迫ってきます。
自動車の関税は2.5パーセントでしかも現地生産が進んでいるのであまりメリットはないでしょう。円が2円高くなればチャラです。
またアジアの成長を取り入れるなら中国が入っていないので意味がありません。
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Unknown (Unknown)
2012-01-08 20:29:19
上田がここの掲示板に固執されるのはなぜ?
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Unknown (MR.T)
2012-01-08 21:45:29
とにかく、農業を競争させるともっといいものが食えるなどと、騙されてはいかん。

 更に自給率を上げることこそ、政治家の仕事!
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