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私が描いた武富士、レナウン、振興銀行の儲け方 「お騒がせ企業」を飲み込む新・金融王

2011-12-23 19:13:02 | Weblog

        武富士・レナウン・振興銀行  

      「お騒がせ企業」を飲み込む新・金融王 

私が描いた武富士、レナウン、振興銀行の儲け方 「お騒がせ企業」を飲み込む新・金融王
篠原 匡
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20111207/224934/

 2006年の改正貸金業法や最高裁判決によって、消費者金融業界は壊滅的な打撃を受けた。だが、焦土と化した業界で、勢力を拡大している企業集団がいる。それは、藤澤信義氏が率いるJトラストとネオラインホールディングス(HD)だ。両社とも藤澤氏が社長を務めるが、資本関係はない独立会社だ。
 これまでに、イッコー(現Jトラスト)やクレディア、三和ファイナンス、プロミスやアイフルの子会社、ロプロなどを傘下に収めた。この8月には、楽天KCのカード事業を買収。最後は下りたものの、武富士のスポンサーにも名乗りを上げている。
 2011年9月末の貸付残高は約1300億円(JトラストとネオラインHDの合計)。2008年4月に15億円だったことを考えれば、その急拡大が際立つ。東京大学医学部卒という異色の経歴を持ち、ライブドアクレジットの社長も務めた藤澤氏の眼には何が映っているのか。
 なぜノンバンクの買収を積極的に進めたのか。その理由の1つに、過払いの影響が少なかったことがあります。

藤澤 信義(ふじさわ・のぶよし)氏
1970年岐阜県生まれ。東京大学医学部を卒業後、2001年にビィー・ジャパンに入社。2003年社長に就任。その後、2005年にライブドアクレジット社長を経て、かざかファイナンス社長に就任すると、当時のスポンサーだったアドバンテッジパートナーズからMBOで独立、ネオラインキャピタル社長に就任した。現在はJトラストとネオラインHDの社長を務める。

 2005年9月、私が社長を務めていた不動産担保融資を手がけるビィー・ジャパンがライブドアの傘下に入り、その後ライブドア不動産になりました。ただ、その直後にライブドア事件が起きまして…。翌年の1月に堀江(貴文)社長が逮捕されると、私の上司が目の前からいなくなっていきました。
 その当時、私はライブドア不動産だけでなく、消費者ローンを手がけるライブドアクレジット(現ネオラインキャピタル)の社長を務めていましたが、金融機関の借り入れなどもあったため事後処理に忙殺された。それもあって、消費者ローンの貸し付けに消極的にならざるを得ませんでした。
 その状況下で、我々が何をしていたかというと、無担保の消費者ローン債権を回収する一方で、担保を取って利息制限法の範囲内で融資する担保ローン残高を増やしていました。その後、ライブドアの金融部門はアドバンテッジパートナーズの傘下になりましたが、その間もポートフォリオの入れ替えは進めていたんです。
 現状、消費者ローンや商工ローンなどのファイナンス事業は上場会社のJトラストに集約しつつありますが、Jトラスト自体の過払いリスクはほとんどありません。ライブドア事件の逆風が強く、社会的に何もさせてもらえなかったというのが実状でしたが、それが不幸中の幸いとなりました。

 ポートフォリオの入れ替えにめどをつけると、藤澤氏は経営不振に陥った消費者金融や事業者金融を次々と買収していく。新興ノンバンクに過ぎないネオライングループはどうやって買収資金を調達したのか。

勝手にキャッシュが入ってくる

 後ろ盾に金融機関がないのに、何であんなにキャッシュを持っているのか、別に「本尊」がいるのではないか、などと言われますが、消費者ローン事業はいったん貸し付けを止めると、利息と元金の回収でものすごく資金が戻ってくるんですよ。我々の場合、毎月回収される金額は債権残高の5%ほどに上りました。
 クレディアに関して言えば、買収時点で約600億円の債権残高がありましたが、一方で200億円を超える現預金を持っていたので、実質的にキャッシュアウト(資金流出)がほとんどなく子会社化できました。三和ファイナンスも約400億円の債権残高がありましたが、キャッシュアウトは基本的にゼロでした。
 この2社の債権残高は合計で約1000億円。先ほど申し上げた通り、債権残高の5%が戻ってきますので、月50億円のキャッシュイン(資金流入)になる。その一方で、18%以下の金利で貸し出せる客はそれほど多くない。この2社のローン債権を購入したことで、キャッシュポジションはどんどん高まりました。
 もちろん、過払いリスクという将来債務も引き継ぎましたが、もとがそんなに高い買い物ではないので、リスクをとってもいいのではないかと思いました。また、クレディアが破綻した当時は「過払いって何?」という感じで状況が読めないことから、買い手がほとんどいなかった。そういう時は、いい条件で取引できますよね。
 過払いリスクに関して付け加えれば、弁護士や司法書士ではなく、原告、つまり借り手に直接払い続けたことで、和解できる確率が上がったことも大きかった。
 弁護士や司法書士の中には依頼者の利益ではなく、自己の報酬最大化のために和解に応じない人物がかなりいました。こういった弁護士や司法書士にとって、借り手に直接支払われると(途中で手数料を抜きにくくなるため)困るんですね。この手法を取り続けたことで、「取り損ねるよりはいい」として、和解に応じるケースが増えました。念のために申し上げますが、誠意を持って交渉に当たろうとする弁護士や司法書士には、こちらも誠意のある条件を提示しています。

 ローン債権の買い取りで積み上がるキャッシュ――。潤沢な資金を手に入れた藤澤氏は、ノンバンク以外の投資も加速させていく。その1つが、2009年9月に株式を取得したレナウンだった。だが、筆頭株主として乗り込んだ藤澤氏はレナウン経営陣と対立し、最後までその状況を解消することができなかった。

レナウン買収の挫折で学んだこと

 当時の筆頭株主だったプライベートファンドが「売りたい」と声をかけてきました。彼らの話では「経営陣には根回しができている」ということでしたし、買収金額も20億円強と1カ月の回収金の範囲内でした。レナウンの高いネームバリューを考えれば、悪い話ではないかな、と。そこで、ネオラインキャピタルを組合員とするファンドと合わせて、約20%の株式を取得しました。
 ところが、レナウンの経営陣が会ってくれない。「なぜだろう」と思っていたら、「そんな話は聞いていない」と。根回しができていなかったんですね。
 当時の保有比率は約20%ですから、できることと言えば、株を買い増すか、株主としての権利を行使するくらい。少しずつ株を買い進め、25%近くまで比率が高まって、ようやく話を聞いてもらえる雰囲気になりました。
 ただ、その後に役員となりましたが、完全に「アウェー」の状態でしたね。
 レナウンの再生案を僕なりに一生懸命提案したのですが、まったく受け入れてくれない。2~3カ月、役員会に出て、いわゆる「昔の大企業」とはこういうものか、と分かりまして、「この会社を再生させるには中国資本に変えるか、アパレルを辞めるか、どちらかしかありません」とお話ししました。
 実は、今は中国企業の山東如意が筆頭株主になっていますが、その前に山東如意の10倍くらいの規模の中国国営のアパレル会社に出資のお願いにいったんですよ。その時に、「前向きに検討する」という返事をもらって、それをレナウンにも話したのですが、「国営なので軍事色が強い」と認めてもらえませんでした。本音は、僕の提案なので嫌だったんでしょう。
 しまいには、連結売上高の40%を占める有力子会社のレリアンを伊藤忠商事に売却してしまった。レリアンも一体でほしい、という話があったのに、なぜ売却してしまうのか。値段が安いというのもあって、「それはおかしい。株主代表訴訟に値する」、と。それでも売却を強行したので、役員を辞めました。
 レナウンの件では、大きな挫折を感じました。小僧1人、有名企業に乗り込んで行っても何も動かせない、株式を25%持っても邪険に扱われることを学びました。今も2万株を持っていますが、7億~8億円は損失を被っている。山東如意が企業価値を上げてくれることに期待しています。

 もう1つの投資案件に、東証マザーズ上場のアミューズメント関連会社、ネクストジャパンホールディングスがある。時価総額が5億円を割り込み、上場基準に抵触していた。しかも、海外逃亡の末に脱税で逮捕された人物と関係の深い企業が大株主に名を連ねていた。

うちは買収ファンドではない

 レナウンに投資した頃のことでした。「このままだとネクストジャパンが来月にも民事再生になる」という相談が持ち込まれたので、第三者割り当て増資を個人として引き受けました。僕は23歳から30歳まで、ゲームセンター、カラオケ店、ビリヤード店で働いた経験があり、何とかできると思ったんです。
 僕は、(脱税で逮捕された)その人に会ったことがないんですよ。ただ、そういう株主がいるという話は聞いていたので、株式を直接取引するのではなく、(少数株主にするために)第三者割り当て増資にしてもらいました。今のところ、経営上、特に影響はありません。
 レピュテーションリスクを気にしないのか? それがある企業に、わざわざ飛び込んでいるわけではありません。僕は今、41歳ですけど、買収を決めたその時点でその情報を持っていなかった。今は企業買収の体制が整備され、事前に調査するチームがありますが、当時はまだ作られていなかった。
 ネクストジャパンについては、営業利益も上がっており、本業はうまく回り始めています。問題は、子会社を減損した影響で、ネクストジャパン自体が債務超過に陥ったことです。今は、上場廃止の猶予期間入りとなっています。
 もっとも、ネクストジャパン単体は債務超過ではありません。増資することもできますが、その子会社の業績も急回復しているので、もう少し様子を見ようと思っています。必要最小限の希薄化で済むように自己資本を引き上げることを考えており、株主総会でもそう申し上げました。
 業界の歴史を振り返れば、ゲームセンターから家庭用ゲームに移行し、それが携帯アプリに変わっている。今後、ゲームセンターが大きく発展するかというと、それはほぼあり得ません。かといって、市場がさらに縮み続けるかというと、どこかで縮小均衡の状態になると思うんですよ。
 その中で、携帯アプリなどにも対応できるように小さなゲームメーカーを買収して、アミューズメント業界の川上から川下までを一貫して手がけるような体制を構築できれば、ある程度はやっていけるんじゃないか。もちろん、単なる投資ではなく、ゲーム事業全体として育てていくつもりです。
 うちは会社をいっぱい買うのでファンドと見られているかもしれませんが、4000人を雇用しているれっきとした事業会社です。より多くの社員の雇用を守ることが企業の責務だと本気で考えています。消費者金融業界はどんどん会社がなくなっていますよね。1社ぐらい元気のいいところがあってもいいでしょう(笑)。

 藤澤氏は東京大学医学部を卒業後、不動産金融の世界に飛び込んだ。医学部生がなぜ、不動産担保ローン会社の社長になり、消費者ローンを買収し、アミューズメント企業のオーナーになったのか。

東大医学部に入るも、「ダメ人間」でした

 正確に言うと、東京大学に入学しましたが、ほとんど大学に行かない問題児でした。学部を決める時、たまたま医学部に拾ってもらっただけなんです。結局、9年間大学に在籍していましたが、最後は周囲から「税金を使っているんだから卒業だけはしろ」と言われて、1年だけ真面目に通って卒業させてもらいました。
 大学時代に何をしていたかといえば、1年生や2年生の時は麻雀や競馬、パチンコにのめり込んでいました。カネがなくなるとバイトで稼ぎ、またオケラ(一文無し)になるという繰り返し。そういう「ダメ人間」の生活を続けていましたね。
 その後、23歳頃にアルバイトをしていたゲームセンターでマネジャーになり、第2次UFOキャッチャーブームを仕掛けたりしました。卒業後もバイトを続けていましたが、30歳になって真面目に仕事をしなければまずいな、と。それで、就職情報誌で初任給が高かったビィー・ジャパンに入社したんです。

 リーマンショック後、破竹の勢いで買収を続けた藤澤氏は2010年12月に破綻した武富士のスポンサーにも応札したが、「選定の透明性が欠ける」として入札から撤退。結局、スポンサーは韓国のA&Pファイナンシャルに決まった。武富士のスポンサーになっていたら、何をしようと考えていたのか。

武富士を舞台に考えた「儲けのカラクリ」

 武富士の顧客基盤を生かした保証業務を考えていました。例えば、全国に提携先の銀行ネットワークを作り、武富士のアセットをそのまま銀行に渡して、うちが保証するという事業モデルです。実は、このモデルは西京銀行で成功を収めています。
 貸し倒れコストや販管費、広告宣伝費を考えると、消費者ローン事業の利益は頑張っても4~5%程度。過払いリスクを引きずったままでは、たぶん利益は出ないでしょう。バックに銀行がいればともかく、独立系として資金調達もままならない状況では、消費者ローンの残高を増やしていくことは不可能です。
 ただ、目の前には顧客は何百万人といるわけで、この資金需要を考えると、彼らを銀行につないで、それを保証していくことが我々の役割だろう、と。このモデルを地方に広げていく展開を、武富士でやりたかった。
 恐らく、貸金業法の改正で多重債務者の多くは闇金に走ってしまった。その代わり、今残っているのは真面目に返済している「いいお客様」です。そう考えれば、貸倒率も下がっているだろうし、武富士の顧客に対する保証業務でも十分にペイできる。
 本当は、保証業務というよりも融資を増やしていきたいのですが、今の法律のままでは、消費者金融業者が貸付残高を増やしていくことは難しい。今は、既存の残高と保証残高の合計が減らないように、一生懸命頑張っています。なかなか思い通りにはいきませんが…。

 藤澤氏とネオライングループは2010年9月に民事再生法の適用を申請した日本振興銀行との関わりを指摘される。事実、ネオライングループは振興銀行から300億円近く借りていた。

振興銀行には騙された

 振興銀行は収益を上げ、自己資本を高めたいという事情があり、我々には資金調達のニーズがありました。お互いの事情がマッチして、協力関係にあったのは確かです。ただ、我々は振興銀行のネットワーク企業ではありませんし、一定の距離感を取っていました。
 事実、(振興銀行社長だった)木村剛さんと仲がいいと言われますけど、食事をしたのは2回だけ。後は年に2~3回、「表敬訪問」をするだけでした。その程度の関係なのに、いろいろな記事を書かれました。
 (ネットワーク企業の)NISにも出資しましたが、これも振興銀行が業務停止処分を受けた時にネットワーク企業の資金繰りがつかないと泣き付かれたために実施したものでした。資金を貸すことにリスクがあったので、株式を引き受ける形にしたんです。
 僕の立場から見れば、「振興銀行に騙された」と思っています。
 確かに、300億円規模の調達はできましたが、保証債務の帰属を巡って振興銀行の破綻後に裁判になりましたし、再生の手助けをして欲しいというので、プロジェクトチームを組んでやっていたのに、再生会議の数日後に我々に黙って民事再生法の申し立てをされてしまった。
 これまでの経験では、頼まれた案件は、買収できているんですよ。楽天KCにしても、1年ほどかかりましたが、最後はうまくまとまりました。逆に、取りに行った案件はうまくいかない。武富士が典型ですよね。
 今はグループ全体で300億円ほどのキャッシュがあります。投資は縁とタイミングなので、話があればいつでも聞く用意はあります。

 


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