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「韓国江原ランド視察調査報告」

2014-08-14 19:38:28 | Weblog

                                 【寄稿 消費者法ニュース】

                              「韓国江原ランド視察調査報告」 

                          全国カジノ賭博場設置反対連絡協議会   

【寄稿 消費者法ニュース】

 「韓国江原ランド視察調査報告」

        全国カジノ賭博場設置反対連絡協議会 事務局次長 司法書士 新川眞一
                           
1、はじめに
 私は、本年6月22日、23日、堀田文一大阪府議が中心となった実行委員会による「韓国カジノ賭博場(江原ランド)視察」に出向き、初日夜に実際にカジノ場に入場してのカジノ体験、2日目の午前には同ランドが運営する「賭博中毒管理センター(KLACC)」の所長朴ソンジェ氏らとの対談交流を行ったので、要旨そのご報告を致します。

2、ソウルからバスで3時間半の片田舎へ
 22日お昼前にソウル仁川空港に到着。バスの中でお弁当を頂いて、途中1ヶ所だけ手短に史跡観光をしたあと、一路、江原道へ。現地に到着したのは、夕方の5時半頃だった。
 廃坑跡の村とは聞いていたが、行く道中は山また山に囲まれる道また道を走るのみ。ようやく現地に入ったとたん、山に囲まれた谷間に、ネオンがきらびやかな質屋街がいきなり目に飛び込んでくる。それがなんともけばけばしい。ざっと周囲を一瞥しただけでも約8割は質屋だ。あとの2割は食堂レストランとマッサージ店だけだ。看板やネオンからみてピンク系のマッサージ店のようだ。私たちは、ホテルに到着するまでの約1時間を焼き肉レストランにて早い夕食をとった。
 
3、質屋街をムービー撮影
  私は、皆と食事をしたあと、ムービー片手にひとりで街なかを撮影に回った。あまたある質屋のうち、半分くらいは乗用車のポスターが貼られていた。ベンツ、BMWなどだ。車の質入れを受け入れる店のようだ。これが一時最高4000人もの「カジノホームレス」を生んだと言われている質屋街なのかと感慨に浸る。バス添乗員の話だと、大半のカジノ客はソウルから車でやってくるそうだ。自家用車あり、タクシー相乗りあり。そして、カジノで負けたら車を質に入れて、一発大逆転に掛けるのだそうだ。日本には帰りの交通手段すら無くしてしまうようなことをする人はそんなに多くはないだろう。なぜ車まで質に入れるのだろうかと少々疑問に思っていたが 翌日に中毒センター事務局長からきいた話で納得した。センターでは、中毒者への対応として、帰宅するだけの電車賃をセンターが交付することもあるのだそうだ。だから車を質に入れてしまっても平気でいられるのだろう。およそ日本では考えられないことで、これこそ『マッチポンプ」の典型例だと考えさせられた。
 あと残り半分の質屋は、腕時計が主だった。質草となった腕時計は実物が店内に展示されている。ロレックスなどどれも高級品ばかりだ。このほか、サングラスなども並んでいた。
 4件目あたりを撮影したところだった。私もだんだん夢中になってきて、できるだけ店内の様子を写そうとズーム撮影をしたり、体を近づけたりしていたときに、店の奥でソファーに掛けていた男性店員が某か大声で私に向かってまくし立ててきた。だが韓国語なので私は何を言われているのか判らない。まったく気にしていないそぶりをしながら、徐々に足を遠ざけつつ、車道を横断して、道の向かい側に待避した。
 道の向こう側は、マッサージ店だ。入り口が四角のネオンが点滅していて、中には、スタイルのよいチャイナ服姿の若い女性の看板が、風俗店のようなつくりのマッサージ店だった。入り口を撮影して、ここでいったん撮影終了。バスに乗り込み、目的地「江原ランドコンベンションホテル」に移動した。添乗員の話では、カジノ客は、ホテルに泊まるのではなく、こうしたマッサージ店や車内に寝泊まりしている人がほとんどだそうで、カジノが併設されている宿泊施設であるホテルには皆泊まらないのだそうだ。宿泊費よりもカジノに金をつぎ込むということなのだろう。

4、ホテル到着 ~日曜日でカジノは満員、でもホテルに客はなし~
 質屋街の撮影を終えて、私たち一行は夕方6時半頃にホテルに移動し、チェックイン手続きをした。同ホテルはカジノが併設されている「MICE」(Meeting(会議・研修・セミナー)、Incentive tour(報奨・招待旅行), Convention またはConference(大会・学会・国際会議), Exhibition(展示会)の頭文字をとった造語で、ビジネストラベルの一形態)施設のほか、スキー、ゴルフ場なども併設されている統合リゾートだとのこと。
 添乗員がカジノ場入り口で従業員に聞いたところによると、当日は日曜日とあって内国(韓国)人の客でいっぱいとのことだ。にもかかわらず私たちのようなホテルに宿泊する客は、他に見る影もない。ホテルフロントロビーは閑散としていた。日本のパチンコ店内は満員だがその周辺の商業施設はガラガラ空きのシャッター通りとよく似ていた。

5、カジノ入場口での攻防
 午後7時30分頃より、私たち一行はカジノ場に出向いた。入り口の受付で担当者が「内国人が入れるキャパは3500人で、すでに3450人くらいは入場しているので、私たち外国人が着席して遊戯できる場所があるかどうか保障はできない」とのこと。そこで、私たちは、いったん外国人専用ブース(私の事後の感覚では全体の5パーセント程度のスペースだったように思う)で遊んで頂いて、そのあと三々五々、内外国人問わず遊べる一般のブースで遊んで頂いてはということになった。同じ建物内であるのに私たちが宿泊するホテルの方は私たち以外には客の姿を見ることもないほど閑散としていたのと対照的だった。外国人は入場時には原則としてパスポートを預けさせられるが、なんとか添乗員が交渉してくれて添乗員の責任でパスポートまでは預けずに済んだ。それでもいったん退場して再入場するときには個別にパスポートを預かるというのが条件だ。あれやこれやと添乗員が交渉してくれてやっとのことで入場するまで約30分かかった。よほど警戒されているのか、トラブルを避けようと慎重な対応をしようとしているのかと思ったほどだ。

6、空港並みの厳重警戒~金属探知機あり、撮影も録音も禁止に~
 ところが、肝心のカジノ賭博場、なんと!!場内は、カメラもムービーも一切禁止とのこと(ある意味当然か)。 したがって、カジノ場内の様子については、入り口のみ密かに撮影した制止画のみとなることをお許し願いたい。
 入口ゲートでの警戒も徹底している。空港のそれと同じような金属探知機、手荷物X線ゲートがあり、所持品全部が調べられる。それだけではない。X線ゲート通過後も、職員からカバンの中のカメラを任意提出させられた。さらに私のビデオムービーは強力な封テープのあるビニール袋に入れさせられて返却された。これでは容易にビニール袋を開けることは出来ない。私にとっては両手を縄で縛られたような感じでやっと入場できた。

7、監視体制は場内でも徹底されている
 場内は天井が高い。いたるところに黒半球の監視カメラあり、なんと表現して良いのか、チータ肌模様のような天井とでもいうのか、雨あられの銃弾痕のような天井とでもいうのか、これでは、すべての観客の顔だけでなく手や足の動きに、不審なところがないかどうかまで詳細にわかるだろう。
 またも事件が起こった。 入場して約10後のことだった。あちこちに佇立している従業員の一人が私のところにやってきて何やら指示した。添乗員がそばにいたのですぐに意味がわかりほっとした。私がかぶっている「帽子を脱げ、そうでないと顔や表情がカメラに写らないから」と指図してきたのだ。私はすぐに帽子を脱いだが、黒スーツ姿のその男性スタッフの眼光は異様に鋭かった。

8、場内のようす(外国人専用ブースでバカラ)
 かくて私たち一行は、外国人専用ブースに案内された。外国人客は私たちだけだったようだ。入場に際して入場料7500ウォンを支払ったが、外国人には、どうも5000ウォン分の無料サービス券が配られるようで私たちもこのチケットを使って初回無料でバカラを楽しんだ。その後、私は、3000ウォン程度をつぎ込んで、スロットなどを行ったが、まったく勝てなかったため、被害が少なくて済んだ。

9、場内のようす(スロット)
 カジノ場に入ってすぐに目に入ったのは何百台ものスロットマシンが並ぶスペースだ。ここはほとんど満席だ。
 ここにいる韓国人の客は、みなうつろな目で、座席に後傾姿勢で、浅く座り、黙々と、ボタンを押すことだけを繰り返している。決してアクティブではない。そうだ日本のパチンコ、パチスロに打ち興じている顧客と同じ表情だ。入場前に入り口で、大型スクリーンに映されていたコマーシャル動画には、蝶ネクタイ黒スーツの男性と、おしゃれなワンピースとジュエリーに身を飾った女性たちが、シャンパングラスを向かい合わせながら笑顔でカジノに興じている場面とは全く違う光景だ。実際に座ってスロットを打っている韓国人たちは、みんな疲れて見える、目がうつろだ、だらしないような服装だった。

10、場内のようす(ルーレット、バカラ、ポーカー)
 これと対照的なのは、バカラ、ポーカー、ルーレットなどが設置されているスペースにいた客たちだ。彼らは、いすに前のめりするように座っている。目はうつろではなく血走っていると表現した方が適切だ。そして、掛ける金額も半端ではない。5人くらいテーブルを囲んでいるが、必ずその中に、一人くらいは、1回に5万ウォン札(日本円で5000円程度)10枚とか、20枚とかを皆に見せるかのように掛けていた。脇には自動集札機があって即座に金額と枚数が判る。そして、ディーラーが配ったトランプが一瞬のうちに勝ち負けを決める。即座に、勝者には、コインが配られる。勝った者が、即座に退席して換金場にゆくことはない。どのテーブルも5~6人くらいが座り、そしてその周囲に野次馬が集まっていて、私たちは、少し離れて背伸びをしながらその光景を見つめていた。いずれにせよ、スロット客とは違ってアクティブである。反対に「ディーラー」(胴元 賭場を仕切る職員)のほうは、プレーヤー客とは違って、まったく落ち着いている。客が勝っても負けても、また、どれだけ多額の金銭を掛けようが少額であろうが、表情一切を変えることがない。 接客業でありながら、笑顔一つ見せないディーラ-の顔、、、「これをポーカーフェイスと言うのだな」と妙な納得をした。私はポーカーフェイスもアクティブもどちらも、一種のオーラとでも言える空気に圧倒されるかのような恐怖感に襲われながら、我慢の限界を感じて、ここでカジノ場を退出した。午後10時前くらいだった。

11、KLACC(賭博中毒管理センター)との懇談
  翌日午前、私たち一行は、KLACC(賭博中毒管理センター 代表センター長 朴ソンジェ常務)の職員らと約2時間半の懇談交流を行い、江原ランド設立の背景及びその歴史、賭博中毒管理・予防等の具体的対策などについての説明を受けた。(本稿では紙数の関係でその全てを報告することが出来ず、追って別媒体での公表に委ねたい)
 説明の最後に同センター事務局長が日本のカジノ招致の動向にふれて下記のとおり語り、民間IR方式によるカジノ招致についての疑念を呈されたことが印象的だったので紹介をして報告を締めくくりたい。
      「最後に。私たちはカジノを運営して13年になります。13年間私たちがカジノを運営しながら感じたことは色々あります。こちらのカジノは、地域住民たちの選択の余地のない「劇薬処方」でした。」
      「 でもどんな徹底的な中毒防止管理システムを備えていたとしても、「射幸産業」としての副作用(すなわち)家族崩壊、自殺、地域共同体の破壊などを根本的に防ぐことは出来なかったのです。ですので、地域再生の戦略としてカジノ招致をするのは、射幸産業であることを念頭に入れてとても慎重に行われなければなりませんし、徹底的な準備が必要です。」
      「また、わが江原ランドは、国家が運営するので「統制」が可能です。ですが、民間企業が投資するという理由でカジノを作ったならば、副作用を防ぐことは出来ないと思います。以上、私たちの事業についてのご説明を全て申し上げました。みなさまのご参考になればと思います。終わります。(拍手)」