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東京弁護士会・非弁護士取締委員会の弁護士に家宅捜索…非弁業者に蝕まれる業界の闇

2018-10-22 22:45:09 | Weblog

      東京弁護士会・非弁護士取締委員会の弁護士に家宅捜索 

           非弁業者に蝕まれる業界の闇 

東京弁護士会・非弁護士取締委員会の弁護士に家宅捜索…非弁業者に蝕まれる業界の闇
https://biz-journal.jp/2018/10/post_25204.html

 非弁業者の闇はどこまで解明されるのか――。
 9月20日、大阪地検特捜部は広告代理店「HIROKEN」(東京都目黒区)や取引先の「あゆみ共同
法律事務所」(東京都千代田区)の大阪事務所などを弁護士法違反容疑で家宅捜索した。弁護士資格がない
事務員に債務整理業務を行わせていたとされる。

 「前々から非弁業者と疑われていた3大業者のうちの1社」――。貸金業界関係者はHIROKENにつ
いてそう話す。非弁業者とは、広告代理店や経営コンサルタント業を表向きの看板としつつ、食えない弁
護士や司法書士に寄生して「非弁活動」や「非弁提携」で荒稼ぎを行う業者を指す。

 一般に非弁業者は、顧客の紹介数や回収金額の多寡などに応じ広告料などの名目で法律事務所から周旋
の対価を吸い上げ(=非弁提携)、ひどい場合には事務長などの肩書で責任者を派遣して実務全般を取り仕
切り、スタッフを派遣して法律事務を自らの手で行う(=非弁活動)。こうなると、弁護士は単なる名義貸
しだ。こうした行為は、顧客など関係者の利益を損ない、ひいては法律秩序を乱しかねないため、弁護士
法で厳しく禁じられている(司法書士も同様の行為は、司法書士法、および日本司法書士会連合会が定め
る司法書士倫理で禁じられている)。

 にもかかわらず、過払い金返還ブームが盛り上がったここ10年で、そうした業者は水面下で急増した。
「サルでもできる」と言われた過払い金返還請求の単純さや、インターネットの普及による集客のしやす
さも非弁業者が跋扈する一因だ。過払い金ブームの一巡で、非弁業者が侵食する法律事務は今日、債務整
理やヤミ金業者との返金交渉、交通事故の示談交渉などにも広がっているとされる。

 そうしたなか、「街角法律相談所」なるマッチングサイトで債務整理の集客を行っていたHIROKE
Nは、とりわけ非弁提携の疑いがかねてから囁かれていた業者だった。送客数に応じ成果報酬を受け取っ
ているのではないかと見られていたからだ。前出の関係者によれば、街角法律相談所に5月時点で登録さ
れていたのは、冒頭のあゆみ共同法律事務所はじめ弁護士事務所が7事務所、司法書士事務所が12事務所
の計19事務所に上る。

 今回、司直の手が入ったことで、HIROKENによる違法行為の有無については早晩シロクロが付く
はずだが、前述の3大業者のうち別の1社をめぐっても先頃、不可解な動きがあったところだ。ここではそ
の業者を仮にA社と呼ぶことにしよう。

サルート法律事務所

 今年8月15日、「サルート法律事務所」(登記名は弁護士法人サルート)なる東京都内の弁護士事務所が
突然解散を決議して清算手続きに入った。じつは、同事務所をめぐっては昨年7月、東京国税局査察部や
日本弁護士連合会などを宛先とする「調査依頼」と題した告発文書が各方面にばらまかれていた。事務所
を実質的に運営しているのはA社であるとの内容で、そこには責任者のフルネームまで記されていた。内
容が事実なら当然、非弁活動や非弁提携が疑われる。

 サルート法律事務所の過去を調べると、好ましからざる事実に突き当たる。登記簿を見ると、同事務所
はもともと2014年8月に「RESTA法律事務所」の名称で設立された。当時の代表弁護士は高齢で、実
質的なボスと目されたのは別の弁護士だった。が、その弁護士にはかなりの問題があった。2014年7月に
摘発されたNPO法人を隠れ蓑とする大型の非弁提携事件で在宅起訴された弁護士3人のうちの1人だった
からだ。

 事件後の同年11月、これまた高齢と思しき“第3の弁護士”が社員に加わり、事務所名はサルート法律
事務所へと変わった。この間の2016年3月、もともと名ばかりだった可能性の高い当初の代表弁護士は死
亡している。こうした変遷の末、突然、事務所は閉鎖と相成ったのである。

 他方、A社は2008年6月、山口県下関市のアパートの一室で合同会社として設立された。代表者は運送
会社に勤めた後、司法書士事務所で事務員をしていたという。A社はその後、株式会社化し、東京都内に
本店を移転、弁護士など士業向けコンサルを表看板に業容を拡大した。内容は不明ながら冒頭のHIRO
KENとも取引関係にあるようだ。

 確かに、サルートとA社との緊密な関係を窺わせる事実はある。サルートの清算業務を引き受けた法律
事務所はA社の主要取引先なのである。サルートの所属弁護士4人のうち代表を除く3人は、今年3月に新
たな事務所を立ち上げているが、そこは清算事務局を務める法律事務所と同じビルの同じフロアでもあ
る。

 告発文書を把握しているとした上でサルートの清算人弁護士はこう説明する。
 「サルートについて非弁行為があったという事実には触れていない。告発文書を把握し継続が無理と判
断したため解散を決めたとは聞き及んでいない。当事務所代表とサルートの代表弁護士が知人であること
から(精算業務に関する)連絡があった」

司法書士事務所の経営を牛耳る

 果たして、非弁業者の荒稼ぎぶりはどの程度のものなのか。それが垣間見られる実例がある。そこには
件のA社も登場する。A社を呼び込んだのは親密関係にあると見られるB社で、さらに兄弟分で探偵業も
兼営するC社や、もともとは不動産会社の営業職だった人物が設立したD社が群がった。

 それら業者が金づるとしたのは司法書士のX氏だった。もともとは関西に事務所を構えていたが、10年
余り前に中堅電機メーカーの名義株をめぐる恐喝未遂事件に連座して服役。出所後に上京して事務所を再
開していたところ、自民党代議士秘書の紹介で借りた雑居ビルの大家の案内でB社代表と知り合った。

 「ネット広告による集客やスタッフ派遣、管理システムの構築などを任せてくれれば、利益の2割を渡
す」――。2014年秋、X氏はB社代表からそう持ちかけられたという。B社はその年3月に設立されたば
かりで、まだ30代と思しき代表は行政書士事務所で働いていたとの触れ込みだった。X氏とB社は同年11
月30日付で業務委託契約書を締結。委託費用は「業務の分量に従う」とされていた。

 以来、X氏の司法書士事務所はB社代表が牛耳ることとなる。やがてB社からは事務員が派遣されてき
た。X氏はキャッシュカードや銀行印なども預け、入出金管理や手続き代行までほとんどをB社が行っ
た。

 B社が牛耳る事務所が主に手がけたのは、アダルトサイトを悪用したワンクリック詐欺の返金交渉だっ
た。着手金3万円前後でインターネット広告を出すと、顧客は次々集まった。その数は1日30件以上に達し
たという。

 事務所に派遣されてきたスタッフは手元のパソコンを操作しながら、電話で案件を大量に捌いていっ
た。X氏はそれを後ろから眺めるだけの毎日である。事務所からは月給をもらう身となり、その額は当初
30万円。事務所が繁盛すると100万円にアップした。

非弁業者の荒稼ぎぶり

 しかし、蜜月関係は2016年5月を境に悪化した。インターネットの掲示板に誹謗中傷の書き込みを行っ
ていたことがばれ、X氏が2カ月間の業務停止処分を受けたからだ。事務所は業務縮小を余儀なくされ、
結局、2017年4月に関係は完全に決裂した。その後、キャッシュカードなどを取り戻したX氏が銀行口座
を調べると、当初の約束に反し、事務所の収益のほとんどがB社やその周辺に流れていたことが明らかに
なったという。

 筆者が入出金記録を精査したところ、次のようなことがわかった。顧客からの入金は主にみずほ銀行、
三井住友銀行、りそな銀行に開設された3口座とクレジットカード代行会社の計4ルートで集められ、ある
程度積み上がるとソニー銀行の口座に順次移し替えられていた。2015年4月から2017年3月までの約2年間
にソニー銀行の口座に入った売上金は3億1552万円に上った。それらはB社はじめ特定の5社にほとんどが
吸い上げられていた。そのうちの1社がA社だった。

 前述のソニー銀行の口座からA社には5377万円が流れていた。さらにA社代表の自宅に登記された合同
会社にも532万円が出金されていた。事務所を牛耳ったB社に流れたのは8184万円。不思議なことに、最
も多額のカネが流れた先はその兄弟分であるC社で、金額は1億1855万円にも上った。さらにD社には
1152万円が出金されていた。これら特定先への出金額の合計は2億7100万円。売上金のうち実に85%超が
吸い上げられていた格好だ。

 もちろん事務所を牛耳っていたB社に呼び寄せられたA社などは、非弁提携と同様の行為に当たらない
正当な取引を行っていただけかもしれない。しかし、出金自体は杜撰そのものだった。総勘定元帳による
と、出金の多くは名目を広告宣伝費としていたが、出稿先や回数、単価などはまったくわからない。出金
のうちいくつかは「諸口」とされ、詳しい仕訳すらなされていなかった。端数のない丸い金額も散見され
る。また、特定先への出金以外でも現金による引き出しも時折見られた。どんぶり勘定と言って差し支え
ない不透明さである。

 特定先のうちD社の代表は2017年7月、「つばめ総合法務事務所」なる合同会社を設立している。その
業務執行社員に据えられたのは、淫行などで2回も業務停止処分を受けたことのある問題司法書士だっ
た。X氏に代わる寄生先にしようとしたのだろう。もっとも、設立から5カ月後、問題司法書士は預かり
金流用などで無期限の業務停止処分を食らっているから、幸いにして、不届きな企ては途中で頓挫したこ
とになる。

非弁業者に蝕まれる弁護士業界

 前に述べた非弁行為が疑われる3大業者のうち残る1社は2014年11月、ある上場会社の傘下に入った。直
後の翌年2月、創業者は脱税で在宅起訴されている。共犯関係にあった同業者とともに周囲では実質的に
牛耳っているとされる法律事務所がいくつか囁かれ、実際、そのうち千葉県内にある事務所では代表弁護
士が顧客と面談をしていなかったことが判明し、2016年12月に3カ月の業務停止処分が下っている。

 しかしながら、脱税を立件したものの捜査当局は当初狙った非弁行為の摘発はできなかった。業者の傘
下事務所と噂されたうち埼玉県内の法律事務所をめぐっては、地元弁護士会が刑事告発も視野に非弁行為
の実態を調べたが、やはり処分などには至っていない。一般に、非弁行為の解明はかなりの困難を伴うの
が実情だ。そうした隙を突き、非弁業者は大抵、短期間で寄生先の弁護士や司法書士を乗り換えていく。

そうしたなかには反社会的勢力の関与が疑われるケースもあり、事態は極めて深刻といわざるを得ない。
 今回、家宅捜索が入ったあゆみ共同法律事務所の代表弁護士は東京弁護士会で非弁護士取締委員会に所
属していた。業界が非弁業者に蝕まれている現状を、これほどあからさまに物語る事実はほかにないだろ
う。
(文=高橋篤史/ジャーナリスト


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