住宅セーフティネット法改正の波紋
シェアハウス普及に弾みか
空き家改修費用、1戸100万円補助
住宅セーフティネット法改正の波紋 シェアハウス普及に弾みか 空き家改修費用、1戸100万円補助
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今秋にも施行される見込みの改正住宅セーフティネット法に関心が寄せられている。空き家などを再生し、住宅弱者(住宅確保要配慮者)の入居を拒まない賃貸住宅として民間家主が都道府県などに登録する制度が創設されたからだ。中でも、シェアハウスが同登録制度の対象に加えられたことから、その普及に弾みがつくのではないかと関係者の期待が高まっている。更に登録基準を満たすための改修費については、1戸当たり最高100万円の補助が受けられることも話題を呼んでいる。
同改正法は4月19日の参議院本会議で全会一致で可決・成立した。セーフティネット制度は、自力では良質な住宅を確保することが困難な人たちを対象に国や地方公共団体が公的住宅(URや公社の賃貸、特定優良賃貸など)の供給を促進し、生活の安定を図るのが主な目的。
今回の改正は空き家対策と連動させ、空き家や空室などを改修した民間賃貸も対象とするなど、その政策手段の幅を大きく広げたのが特徴。
そのため、一戸建て住宅の空き家を再生し、5LDKの間取りなら入居者は5人までとするなど、良質なシェアハウスの供給を理念としている日本シェアハウス協会(山本久雄会長)は、今回の改正をシェアハウス普及の大きなチャンスと捉えている。
ただし課題もある。シェアハウスの全個室を住宅確保要配慮者(高齢者、子育て世帯、低額所得者など)向けとすることは、その経営上リスクが大きい。もちろん、改修費補助は必ずしも全室を要配慮者向けとする必要はない。例えば、5室のうち3室を専用住宅として登録するのであれば最大300万円の補助が受けられる。しかし、シェアハウスの契約期間は「6カ月〓1年未満」が多く、入居者の入れ替わりが激しい。登録期間は10年以上となっているので、何室を専用住宅とするかの判断が極めて難しい。
シェアハウス運営事業者にとって気になる点は他にもある。例えば登録基準によると個室面積は「1人1室で9m2以上」とされているが、母子家庭で親子が同じ部屋に入居する場合はどうなるのか(面積要件が9m2よりも広くなるのか)、高齢者とは何歳以上なのか、自宅を所有している単身高齢者がシェアハウスに移り住む場合も対象となるのか、入居者が外国人の場合も対象となるのかなどである。
更に高齢者や外国人が収入分位25%以下の低額所得者として家賃補助(国費上限2万円/月)を受ける場合の要件はどうなるかなど、現段階では不明な部分も多い。これらの点について、国土交通省は近日中にも明らかにしたいとしている。
格差拡大も背景に
【解説】 国土交通省がシェアハウス(共同居住型住宅)を住宅セーフティネット制度の対象に加えた背景には、いくつかの社会事象が関与している。
一つは、民間の戸建て空き家が増加傾向にある中シェアハウスとしての再生・利活用には社会的意義を見出しやすいということだ。例えば、今後増加する単身高齢者の住み替え先として、多世代が共生できるシェアハウスは高齢者だけが集うサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)とは異なるタイプの受け皿となり得ること。また、若年層や一人親世帯などで顕著になりつつある経済的格差拡大を踏まえると、賃料が比較的低廉で自助・互助を基本コンセプトにしているシェアハウスはこれからの居住形態として重要な社会インフラとなる可能性が高いことなどである。
特に、依然として高齢者などの入居を断る民間家主が多い中で、”一つ屋根の下”に集う疑似家族が民主的に生活ルールを定めていけるシェアハウスは、ある意味最も先進的な賃貸住宅とも言えるからである。 (本多信博)