いっちょー会

被害者の、被害者による、被害者のための交流会

住宅弱者のサポートを!元厚労省 村木厚子さんら全国組織を設立

2019-09-28 19:30:22 | Weblog

         住宅弱者のサポートを! 

     元厚労省 村木厚子さんら全国組織を設立 

住宅弱者のサポートを!元厚労省 村木厚子さんら全国組織を設立
https://suumo.jp/journal/2019/09/17/167062/

「一般社団法人全国居住支援法人協議会」が設立された。といわれてもよく分からな
い人が多いだろう。住まいに困っている人を支援しようという団体なのだが、その呼
びかけ人が元厚生労働事務次官の村木厚子さんやホームレス支援などで知られる奥田
知志さんという、実践的な方々なのだ。どういった団体なのか、直接お二人に伺って
きた。

「一般社団法人全国居住支援法人協議会(以下、全居協)」とは、「住宅確保要配慮
者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律の一部を改正する法律(以下、改正住
宅セーフティネット法)」で指定された「住宅確保要配慮者居住支援法人(以下、居
住支援法人)」による全国組織となる。

これでは分からないと思うので、もっとわ分かりやすく説明しよう。

賃貸住宅の入居が難しい人たちの居住を支援する団体を組織化

賃貸住宅を借りようとする場合、家賃滞納の可能性が高いとか、孤独死の危険性があ
るといった理由から、入居を受け入れてもらえない人たちがいる。低額所得者、被災
者、高齢者、障害者、子育て世帯などとされ、総称して「住宅確保要配慮者」と呼ば
れており、その数は増え続けている。

こうした人たちの住宅として、かつては公的住宅が受け皿となっていた。ところが、
家余りの今は、これ以上たくさん公的住宅を造る状況ではないため、政府は民間の住
宅を活用しようと考え、住宅セーフティネット法を改正し、以下の施策を設けた。
・住宅確保要配慮者向け賃貸住宅の登録制度を設ける
・登録住宅の改修費用や入居者の家賃などに経済的な支援をする
・住宅確保要配慮者に対する居住支援の活動をする団体を「(住宅確保要配慮者)居
住支援法人」に指定し、後押しをする

この「居住支援法人」は、2019年5月6日時点で38都道府県213法人が指定され、賃貸
住宅への入居にかかわる情報提供や相談、見守りなどの生活支援、登録住宅の入居者
への家賃債務保証などの業務を行っている。

この居住支援法人の全国組織が、今回設立された「全居協(ぜんきょきょう)」だ。

全国組織の呼びかけ人のユニークさに注目

全居協の設立に注目した理由は、その呼びかけ人の存在にある。

呼びかけ人は、元厚生労働事務次官・津田塾大学客員教授の村木厚子さん、全国賃貸
住宅経営者協会連合会会長・三好不動産社長の三好修さん、生活困窮者全国ネット
ワーク共同代表・NPO法人抱樸理事長の奥田知志さんだ。

村木厚子さんといえば、厚生労働省で数少ない女性局長として活躍していたとき、郵
便料金の割引制度の不正利用に関して虚偽有印公文書作成・行使の容疑で逮捕・起訴
され、164日間も拘置所に留め置かれ、その後、無罪が確定した、という経歴の持ち
主だ。

一方、奥田知志さんは、30年以上続くホームレスの支援などで知られている人だ。
こうしたユニークな人たちが呼びかけ人となっているからには、“法律ができたので
とりあえず全国組織をつくりました”といった、絵に描いた餅の団体ではないだろう
と興味を持って、お二人に話を伺うことにした。

まず、村木さんだが、当初は労働省で障害者雇用に取り組んできた労働畑の出身だっ
た。中央省庁再編で厚生労働省になった際、旧厚生省と旧労働省の交流人事として、
障害者福祉の担当課長に任命され、そのまま児童福祉など福祉畑に留まることにな
る。そして、あの冤罪事件に巻き込まれる。拘置所を出たのち、生活困窮者対策の担
当になると、生活に困窮する背景には、拘置所にいた人たちと同じような共通の課題
があることが分かった。退官後の今も、生活に困っている人への支援を続けている。
また奥田さんの場合、牧師として北九州市八幡の教会に赴任したときが、かつて街を
活気づかせた炭鉱の閉山や製鉄所の縮小などにより街の活力がなくなり、野宿者が増
えだしたころに当たった。彼らの支援を始めたのが原点となり、ホームレスへの炊き
出しや自立支援などのボランティアを行うNPO法人抱樸(ほうぼく)を立ち上げる。
現在、設立から31年目を迎え、今では半年間の自立プログラムで、9割を超える人が
自立できるようになっているという。

「住宅」ではなく「居住」を支援するという意味

お二人とも、生活困窮者には「ハード+ソフト」の支援が必要だと口をそろえる。
奥田さんには、印象深い事例があるという。最初に支援したホームレスの事例だ。
活動開始当時は、野宿している人には住所がないので、生活保護も受けることができ
ない。そこで、アパートを借りられるようにして、生活保護の受給もできるようにし
た。これで自立支援が終わったと思っていたら、実際には問題の解決にならなかった
というのだ。その後アパートを誰も訪れていなかったら、半年後に近隣から異臭の苦
情が出た。訪れてみると、部屋はゴミ屋敷と化し、電気などのライフラインも止まっ
ていた。

奥田さんは「経済的困窮を解消するだけでは不十分で、社会的孤立の解消も必要」と
痛感したという。困窮している人の中には精神的な障害があったり自立した生活を送
れなかったりする人もいるので、見守ってくれる人、サポートしてくれる人の存在も
必要だ。つまり彼らに支援するのは「ハウス」ではなく「ホーム」だと。

村木さんも今回、名称に「住宅」ではなく「居住」を使っていることがポイントだと
いう。

児童養護施設を出た後の子ども、刑務所を出た後の人たちが、立ち直ったかのように
見えても元に戻ってしまうことがある。その理由は、例えば、児童施設で育つ子ども
は、決められた献立の食事を日々提供されていて、家庭では当たり前の「明日何を食
べたいか」聞かれたこともなければ、前日の残り物を食べたこともない生活をおくっ
ている。皆で守るルールしか知らず、自分なりの楽しみを見つけたり、周囲の人と折
り合いをつけたりする経験が不足しているのだ。したがって、地域の人たちとのつな
がりのある生活をとり戻し、そのネットワークに組み込まれるようにすることが重要
なのだ。それには、住む場所(ハード)だけでなくそこに暮らす人への支援(ソフ
ト)が必要だという。

奥田さんも、家族の機能を社会化することの重要性を語る。従来の日本の社会保障制
度は、企業と家族が支える仕組みになっていたが、雇用システムも変われば家族も脆
弱化して、人を支える仕組みが崩れてしまった。これまで家族が担ってきた機能をい
かに社会が担えるかが、支援のカギになるという。

国土交通省、厚生労働省の連携がなければ成立しなかった団体

さて、今回の居住支援のカギになったのは、省庁の連携だ。

厚生労働省の福祉分野では、養護施設や老人福祉施設、医療施設といった「施設」で
受け入れるか、自宅にいながら通所施設に通う形でサポートするかになるので、施設
に入れず住宅のない人へのケアができない。一方、生活困窮者が住宅を借りにくい実
態を把握しているのは、国土交通省の住宅分野だ。住宅に困る人がいる一方で、近年
では、空き家の増加という課題を抱えている。

村木さんたちが開催していた非公式な勉強会に参加していた国土交通省の女性官僚が
福祉分野に深く関心を持つようになり、両省の抱える行政課題がうまく重なって成立
したのが、改正住宅セーフティネット法だ。この法律によって、居住支援法人がで
き、その全国組織となる全居協が成立した。つまり、両省の連携がなければ、全居協
もできなかったことになる。

また、「行政だけでなく、それに関わる民間も縦割りになっていた」と奥田さんは指
摘する。

全居協の会員登録数は、7月末時点で153(総会議決権有の1号会員75、無の2号会員
47、団体の賛助会員13、個人の賛助会員18)。このうち、いわゆる福祉系の法人と不
動産系の株式会社が半数ずつの構成になっているのも、大きな特徴だ。

さらには、刑務所を出所した人の居住支援を課題に抱える法務省も、全居協の活動に
関心を示しているという。居住支援が再犯防止に役立つからだ。縦割りの行政として
は珍しく、3省が連携する可能性が出てきたというのも興味深い。

全居協は今後どんな取り組みをする?何に期待する?

さて、全居協は立ち上がったばかりだ。今後はどういった活動になるのだろうか?
村木さんによると、「ハード面では実際に使える住宅をどれだけ供給できるか、ソフ
ト面では多様なニーズに対して既存の制度(国土交通省の住宅セーフティネット制度
や厚生労働省の介護保険や障害者福祉、生活困窮者自立支援制度など)をしっかり活
用できるか、また、それだけでは対応できない点もあるので、それを補う仕組みをど
こまで柔軟につくれるかが課題」だという。また、「持続可能にしなければならない
ので、事業として継続できるモデルにしていくことが必要」だとも。そのためには
「支援居住法人が、まず集まって理念を共有すること、情報交換をすること、よい事
例を参考に事業モデルをつくり上げることに取り組んでいきたい」

一方奥田さんは、「居住支援法人を本業とするのは難しい」と言い切る。どういうこ
とかというと、「それぞれの本業である福祉や不動産の業務を通じて、困っている人
を助ける活動に広げることで支援するのが居住支援法人。だから、本業の事業モデル
の価値を多様化するしかなく、居住支援という新しい価値を創造することが必要」
と、事業モデルの必要性を指摘する。ただ、「全居協に多様なプレイヤーが参加して
くれた。異業種の枠組みの中でそれぞれ違う視点から事業を検討し、新しい持続性の
ある事業構想を持つことで、縦割り行政のハブの役割も担える」と考えている。
そして、お二人共通の願いは、「全国の困っている人と全居協の居住支援法人とをつ
ないでいくこと」だ。信頼できる人たち同士、協力し合っていかないといけないの
で、頼りにできる組織にしていきたいという。

今後、全居協を中心とした居住支援法人が、困っている人たちの救世主になることを
筆者も大いに期待している。

○全国居住支援法人協議会のサイト
https://www.zenkyokyou.jp/