いっちょー会

被害者の、被害者による、被害者のための交流会

立ち退き迫り、隣の部屋壊す 名古屋駅周辺で「地上げ」

2018-12-30 21:20:54 | Weblog

           立ち退き迫り、隣の部屋壊す 

            名古屋駅周辺で「地上げ」

立ち退き迫り、隣の部屋壊す 名古屋駅周辺で「地上げ」
斉藤佑介 佐藤英彬
https://www.asahi.com/articles/ASLDY51VMLDYOIPE00N.html

 再開発が進む名古屋駅周辺で、不動産業者による「地上げ」が進んでいる。隣の空き部屋が壊された
り、一方的に契約解除通知をされたりと、立ち退きを迫られる人もいる。業者側は、地価上昇が続く間に
「資産の有効利用」を狙っているようだ。

 名古屋駅西口から南に歩いて約15分。1938年と46年に建てられた2棟の長屋には、計10戸あ
るうち3世帯が暮らしている。

 バリバリバリ――。今年3月、耳をつんざく音が周囲に響いた。空き部屋の窓ガラスが割られ、戸が外
された。所有する不動産会社(大阪市)の関連会社員の男性2人がスーツ姿でハンマーなどを手にしてい
た。

「不安あおる一昔前の手法だ」

 「出て行けってことなんだろうね。でもここら辺に住んでいる人はみんな顔なじみだし、今さら知らん
とこ行っても生きていけないよ」。長屋で60年以上暮らす男性(89)は言う。

 男性宛てにはその1カ月前、弁護士を通じて解約を申し入れる通知書が届いていた。
 25歳で結婚し、妻とその両親…


単身高齢者らが住宅借りやすく 家主に葬儀費など補償 中野区

2018-12-27 16:18:10 | Weblog

          単身高齢者らが住宅借りやすく 

          家主に葬儀費など補償 中野区  

単身高齢者らが住宅借りやすく 家主に葬儀費など補償 中野区
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/list/201812/CK2018122702000126.html

 中野区は来年一月から、民間の賃貸住宅で入居を断られやすい単身高齢者や障害者らの入居を支援する
制度「中野区あんしんすまいパック」を始める。民間事業者が入居者の安否を確認し、家主には入居者が
死亡後にかかった葬儀費用などを補償する内容で、料金の一部を区が補助する。

 孤独死が増加傾向にある中、家賃滞納や死後の対応などへの不安から、家主に貸しづらい意識があるこ
とを受けて実施する。入居者には週二回、安否を確認する電話がかかり、その結果は指定連絡先にメール
で送られる。入居者が死亡した場合、家主は葬儀費用の補償(上限五十万円)と、家財の片付けや原状回
復にかかった費用補償(葬儀と合わせて百万円以内)が受けられる。

 区はサービス事業者のホームネット(新宿区)と協定を結び、初回登録料の一万六千二百円を全額補助
し、入居者は月額利用料の千九百四十四円を負担する。補助対象者は前年の所得額などに条件がある。区
は本年度、四十件の利用を見込んでいる。

 区によると、このような民間事業者のサービスへの利用助成は全国初。今後はサービスを選べるよう協
定事業者を増やしていくという。 (渡辺聖子)


厚労省がお墨付き?貧困ビジネス拡大の懸念

2018-12-17 21:28:58 | Weblog

             厚労省がお墨付き? 

            貧困ビジネス拡大の懸念  

厚労省がお墨付き?貧困ビジネス拡大の懸念

生活保護費を搾取する「大規模無低」の正体 厚労省がお墨付き?貧困ビジネス拡大の懸念
風間 直樹
https://toyokeizai.net/articles/-/254894

生活保護費の受給者の生活支援をめぐって、大きな問題が浮上している。
保護受給者数は2018年7月時点で約210万人。2015年3月をピークにその総数は減少に転じている。世帯類
型別に見ると、リーマンショック後は若年層などが増えたが、近年は景気回復を受け減少。母子世帯や傷
病・障害者世帯なども同様に減少している。

一方で拡大の一途をたどるのが、高齢者世帯だ。世帯類型別ではすでに5割を超え、受給者のうち全体の
47%は65歳以上の高齢者となっている。高齢の保護受給者数は、この20年で約3.4倍に拡大。中でも「高
齢単身者」の増加が大きい。

住居を失った多くの高齢単身者の終の住処(ついのすみか)となっているのが、一時的な居所と位置づけ
られている社会福祉事業の1つ、「無料低額宿泊所」(無低)だ。

生活保護で暮らす高齢者の「受け皿」

無低は「生計困難者のために、無料又は低額な料金で、簡易住宅を貸し付け、又は宿泊所その他の施設を
利用させる事業」として社会福祉法に位置づけられている。一方、生活保護法は居宅保護(自宅における
生活支援)を原則としており、補助的に救護施設や更生施設などが保護施設として位置づけられている。
そうした中で、無低のみが拡大を続けてきた。

背景として考えられることは、単身高齢者の場合、民間アパートなどを借りようとしても拒否されるケー
スが多く、保護施設に加え養護老人ホームのような老人福祉施設も不足していることが挙げられる。その
中で無低が生活保護で暮らす高齢者の「受け皿」として機能してきた経緯がある。

もちろん無低の中には、小規模なグループホームの形態で社会福祉士など福祉専門職が中心となり、巡回
などを通じて利用者の生活安定に取り組んだり、福祉事務所や医療・福祉サービス事業者と連携し、適切
な支援を提供したりする施設もある。

そうした小規模ながら良質な施設がある一方、拡大が続くのが入所者が多く要介護者も多い「大規模無
低」だ。法的規制が少なく設置運営基準が緩いこともあり、1999年に特定非営利活動促進法(NPO法)が
成立すると一気に広まった。

一部の運営事業者は1施設当たりの入所者数を大規模化。ホームレス状態にある人に、公園などで運営事
業者自らが「相談」と称して声をかけ、施設に入れてしまう勧誘行為も横行した。
住居を失い福祉事務所に生活の相談に行くと、「大規模無低の利用を促された」と話す保護受給者は多く
存在する。こうした運用実態が特定の大規模無低の急拡大に拍車をかけた可能性が高い。今では全国で無
低施設数は537、入居者数は1万5600人に至っている。経営主体の8割弱がNPO法人だ。

生活保護費はほとんど手元に残らない

無低事業者は、保護受給者が受け取る住宅扶助や生活扶助の中から、さまざまな「利用料」と称し毎月徴
収する金銭を運営財源としている。中にはそのほとんどを徴収する悪質な大規模施設運営事業者も存在
し、「貧困ビジネス」と批判されている。

ある大規模無低から逃げ出してきた元利用者は、「施設では家賃のほか、高い食費や水道光熱費や共益費
も払わされ、生活保護費はほとんど手元に残らず生活再建につながらなかった」と話す。
2015年に厚生労働省が実施した実態調査では、本来は一時的な居住場所であるはずの無低が、入所期間4
年以上に及ぶ入所者が全体の3分の1を占めていることが明らかとなった。これはつまり、一度無低に入っ
たら出ることが難しい実態がある、ということになる。

大規模無低の運営実態はどうなのだろうか。金銭管理と称し生活保護費を丸ごと取り上げたり、「施設内
就労」の名の下で福祉の専門資格を有しない保護受給者を施設職員に据えて働かせたりするケースがあ
る。1つの居室をベニヤ板で間仕切っただけで天井部分が完全につながっている居室を、「簡易個室」と
称し50?200人を1つの施設に「収容」するような大規模無低も関東各地に存在している。


こうした大規模無低の運営事業者などによる悪質な貧困ビジネスの実態を厚生労働省も問題視。厚労省が
2015年に定めた現行のガイドラインでは、個室を原則とし、居室面積は7.43平方メートル=4畳半相当以
上とされている。狭い床面積の場合は、住宅扶助(家賃)を減額する仕組みも導入された。

だが、こうした最低限の規制すら骨抜きにしかねない議論が浮上している。厚労省は11月、貧困ビジネス
への規制強化などに関する検討会の初会合を開催した。無低の最低基準や保護受給者の日常生活支援のあ
り方などについての検討を踏まえ、厚生労働省令や条例を策定するスケジュールを示した。

「簡易個室」を最低基準として公認?

検討会の開催は規制強化の流れの中に位置づけられるが、業界関係者の間では「厚労省は『簡易個室』を
最低基準として公認するのではないか」との懸念が広がっている。

それは厚労省が初会合で示した資料に、「多人数居室、一つの個室をベニヤ板等で区切ったいわゆる『簡
易個室』も一定数存在する」と、その存在を前提としているかのような記載がされているためだ。
現行ガイドラインでは「個室が原則」とされているが、仮にこの「簡易個室」が無低の最低基準として認
められれば、これまで相部屋を中心に大規模展開してきた無低運営事業者でも、ベニヤ板で簡単に1部屋
を間仕切りさえすれば、そのまま生き残れることになる。
この点については、12月17日の第2回検討会で議論される見通しだ。議論の行方によっては、悪質な貧困
ビジネスの「儲けのカラクリ」を排除するどころか、その存在を肯定することになりかねない。そうした
正念場を早くも迎えている。

ホームレスの“自立”を“孤立”にしない。北九州市NPO「抱樸」の住宅セーフティネットとは
エディター&ライター 萩原詩子
https://www.homes.co.jp/cont/press/rent/rent_00620/

住まいの確保はプロセスに過ぎない。自立後も続ける“伴走型支援”

福岡県北九州市の認定NPO法人抱樸(ほうぼく)は、1988年からホームレスの自立支援を行ってきた。活
動開始から30年の間に、抱樸の支援で自立を達成した人は3,250人に上る(2018年3月末現在)。その人数
もさることながら、重要なのは、自立できた人の9割以上が、その生活を続けられていることだ。抱樸の
支援の大きな特徴は、自立後も続く“伴走”にある。

抱樸理事長の奥田知志さんは、“伴走型支援”の原点となった体験を振り返る。
「活動を始めた頃は、私たちも、路上からアパートに移り、生活保護を受け、就職するまでの支援しかし
ていませんでした。ところがある日、元ホームレスの一人が住むアパートの大家さんから『部屋からおか
しな臭いがするから来てくれないか』と呼び出されたんです」。

駆けつけてみると、部屋の中はまさに“ゴミ屋敷”状態。うずたかく積もったゴミの山に埋もれるように
して、丸くなって眠る人影があった。「当時彼はまだ50代。おそらく知的障害があったと思われますが、
それにしても、野宿していたときのほうがまだ清潔だった。住まいを確保して、問題を解決したつもり
だったのに、また新しい問題が起きていたんです」。

ここまでではなくても、就職して自立すれば、それで“めでたし”ではない、と感じる例は少なくなかっ
た。「路上からアパートに移っても、部屋の中でひとりぽつんと座る姿から受ける印象は、駅の通路で段
ボールを敷いて座っていた日と、あまり変わらないんですよね」。

その理由に気付かせてくれたのも、ホームレスの一人だった。
その頃北九州市では、中学生によるホームレス襲撃事件が頻発し、問題になっていた。しかし、被害者側
であるはずのその人は「中学生たちの気持ちが分かる」と言ったのである。
「深夜2時に外でホームレスを襲ってるってことは、その子たちが家にいないことを、誰も気に懸けてい
ないんだろう。家はあっても、帰る場所がない。誰からも心配されない子どもの気持ち、おれには分かる
な」。

そこで、奥田さんは考えた。「“家”に象徴される物理的・経済的な問題が解決しても、家族や友人、地
域といった“帰る場所”がなければ、本質的な解決にはならない。“家(ハウス)”があっても、“ホー
ム”がなければ、人の心はホームレスのままなのだ」と。そのときから、“伴走型支援”の模索が始まっ
た。

大家の不安を取り除き、生活を継続できる、支援付き家賃保証の取り組み

そもそも、ホームレスにとって住宅の確保が難しい最大の要因は、家族の欠如にある。保証人が立てられ
ない、生活が安定しない、孤独死の可能性がある---いずれも大家にとっては大きなリスクだ。
そこで抱樸はまず、生活支援付きの「保証人バンク」を設立した。

自分で保証人を確保できない人から利用料4万円(更新時は1万円)を預かって保証人を提供する。利用料
の3分の1は保証に備えて積み立て、3分の1を生活支援スタッフの経費に、残り3分の1を自立支援の貸し
付け金として用意するというものだ。生活支援スタッフは、就労や生活相談の対応、本人の希望に応じて
家計や積み立て管理のサポートを行う。

家探しには、不動産会社と連携して「自立支援居宅協力者の会」をつくった。入居希望者の情報を提供
し、「保証人バンク」の裏付けによって物件を仲介してもらう。併せて、入居後の見守り、特に家賃滞納
などトラブルの早期発見に協力を求めた。生活支援スタッフが速やかに介入することでトラブルの芽を摘
み、事態の悪化を防ぐ。これにより、「保証人バンク」利用者の生活継続率は自立者全体の92%より6ポ
イント高い98%に達した。

2017年夏から、「保証人バンク」は、家賃債務保証会社リクルートフォレントインシュア(現オリコフォ
レントインシュア、以下OFI)との連携で、新しい生活支援付き連帯保証「くらし安心サポートプラス」
に発展した。通常の保証会社の審査に通らない人を対象とした保証だ。

連携の提案は、保証会社の側からもたらされた。当時の担当者はこう語ったという。
「滞納が起きたとき、ただ職員が訪問して請求を繰り返しても、相手はドアを閉ざすだけでした。対決で
はなく、一緒に問題に取り組む姿勢がなければ、債務事故はなくならない。それで、生活支援の専門家に
協力を求めたいと考えたんです」。

「くらし安心サポートプラス」の仕組みはこうだ(下図)。

賃貸住宅の入居希望者は、抱樸と生活支援契約を結び、月額2,000円(税別)の生活支援費を支払う。こ
の生活支援を前提に、入居者はOFIと賃貸保証契約を、大家と賃貸借契約を結ぶ。入居後、OFIは、家賃と
共益費、その1%の保証料(初回は1ヶ月分)と生活支援費を代行収納する。併せてOFIは月に2回、オート
コールによる安否確認も行う。オートコールに反応がなかったり、家賃が滞納されたりすれば、すぐに抱
樸に通報して生活支援につなぐ。

OFIは、抱樸と連携することで債務事故による損失が抑えられるようになり、抱樸は、これまでゼロに等
しかった生活支援の費用が継続的に得られるようになった。

ただ、この仕組みもまだ十分ではない。1人当たりの生活支援費が月2,000円では、100人支援してようや
く20万円にしかならない。生活支援スタッフを1人置くにも足りない金額だ。そして、通常の審査に通ら
ない100人を、1人でフォローするのは容易なことではない。
これまでのところ、抱樸は生活支援スタッフの人件費の多くを寄附で賄っている。しかし、継続的な支援
のためには、さらなる工夫が必要だ。

サブリースによって住宅と支援費用を確保する、新しい仕組み

2017年秋から抱樸は、自らマンションを借り上げて“大家”となる、新しい事業に取り組んでいる。
きっかけは「自立支援居宅協力者の会」のメンバーで、地元の不動産会社、田園興産の社長と奥田さんの
雑談だった。田園興産は北九州市内で多数の賃貸住宅を経営しているが、このところ学生向けワンルーム
の空室が増えているというのだ。

奥田さんは考えた。「住む家に困っている人がいる一方で、不動産オーナーは空き家に困っている。家賃
債務保証会社は滞納事故で困っている。そして私たちは支援費用が足りなくて困っている。これらをまと
めて解決する方法はないものか」。

そこで思いついたのが、抱樸が田園興産の空室を借り上げて入居者を募る、サブリース方式の住宅支援
だ。田園興産には、空いている部屋をまとめて借りる代わりに家賃を安く抑えてもらい、入居者には生活
保護の住宅扶助で払える金額で貸し出す。家賃保証には前述の「くらし安心サポートプラス」の仕組みを
使う。これにより、抱樸は2,000円の生活支援費に加え、サブリースの差益によって、一室あたり月額約1
万1,000円の支援費用が確保できる。

現在稼働中の生活支援付き賃貸住宅「プラザ抱樸」は鉄筋コンクリート12階建ての大型マンションで、
110室中60室を抱樸が借り上げている。個々は独立した住まいでありつつ、一棟にまとまっているので、
支援スタッフもこまめに訪問でき、常駐の管理人による24時間の見守りが可能になった。

入居しているのは元ホームレスのほか、高齢単身者や障害者、あるいはその両方の属性を持つ人もいる。
DVから逃れて仕事を探す途中の女性もおり、年齢も性別もさまざまだ。「福祉の制度上では、介護、障害
という線引きに沿った対応しかできない場面もあります。けれどもプラザ抱樸はふつうの賃貸住宅だか
ら、どんな事情の人でも支援できるのです」と奥田さん。

2018年10月現在、「プラザ抱樸」は60室のうち46室を見守り支援付き住宅に充てているが、今後は国土交
通省の「住宅セーフティネット制度」を利用した登録住宅や、「スマートウェルネス住宅等推進モデル事
業」の補助金を活用した地域交流サロンも設ける計画だ。近く障害者のグループホームをつくる予定があ
るほか、「刑余者の受け皿となる自立準備ホーム、児童養護施設出身者や高齢者の就労支援機能も組み込
んでいきたい」と奥田さんは目標を語る。

出会いから看取りまで。家族に成り代わって最期まで伴走を続ける

「プラザ抱樸」は支援があれば一人で生活できる人が対象だが、それもできなくなった人のためには、共
同生活が送れる無料低額宿泊所「抱樸館北九州」を用意している。介護保険や障害者福祉などの制度外の
施設なので、誰でも入居可能だ。

ここでは、食事の用意はもちろん、必要に応じて服薬の補助や病院への同行、介護サービスとの連携に加
え、買い物の代行や金銭管理も行う。館内では体操や音楽などのレクリエーション、花見やクリスマスな
ど季節の行事も開催している。

「最終的に、医療や介護の専門的ケアが必要になったときには、専門施設につなぎます。看取りまで行っ
てこその“伴走型支援”なのです」と奥田さん。
抱樸では、自立者が相互に支え合うためのグループ「なかまの会」に加え、地域住民にも参加を呼びかけ
て「互助会」をつくっている。会費は月500円。毎月の誕生日会やバス旅行などのイベントを企画し、長
寿祝いや入院見舞いも届けるが「いちばん大事な働きは“お葬式”」だと奥田さんは言う。
「ホームレスが路上で亡くなったとき、その8割はお葬式を出してもらえません。その人の死を弔うこと
は、家族の最後で最大の機能です。家族に代わって互助会でお葬式を出すことが、本当の“地域共生”だ
と考えています」。

 東京新聞 無低問題

無低・貧困ビジネス問題について東京新聞が取り上げています。12/17に厚労省の検討会があり、まずい状況です。

第2回社会福祉住居施設及び生活保護受給者の日常生活支援の在り方に関する検討会

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000139576_00003.html

ぜひ傍聴を。申込は木曜日の3時までです。

及川智志


住まいの確保はプロセスに過ぎない。自立後も続ける“伴走型支援”

2018-12-13 21:56:52 | Weblog

          住まいの確保はプロセスに過ぎない。

            自立後も続ける“伴走型支援” 

ホームレスの“自立”を“孤立”にしない。北九州市NPO「抱樸」の住宅セーフティネットとは
エディター&ライター 萩原詩子
https://www.homes.co.jp/cont/press/rent/rent_00620/

住まいの確保はプロセスに過ぎない。自立後も続ける“伴走型支援”

福岡県北九州市の認定NPO法人抱樸(ほうぼく)は、1988年からホームレスの自立支援を行ってきた。
動開始から30年の間に、抱樸の支援で自立を達成した人は3,250人に上る(2018年3月末現在)。

その人数もさることながら、重要なのは、自立できた人の9割以上が、その生活を続けられていることだ。

抱樸の支援の大きな特徴は、自立後も続く“伴走”にある。

抱樸理事長の奥田知志さんは、“伴走型支援”の原点となった体験を振り返る。

「活動を始めた頃は、私たちも、路上からアパートに移り、生活保護を受け、就職するまでの支援しかし
ていませんでした。ところがある日、元ホームレスの一人が住むアパートの大家さんから『部屋からおか
しな臭いがするから来てくれないか』と呼び出されたんです」。

駆けつけてみると、部屋の中はまさに“ゴミ屋敷”状態。うずたかく積もったゴミの山に埋もれるように
して、丸くなって眠る人影があった。「当時彼はまだ50代。おそらく知的障害があったと思われますが、
それにしても、野宿していたときのほうがまだ清潔だった。住まいを確保して、問題を解決したつもり
だったのに、また新しい問題が起きていたんです」。

ここまでではなくても、就職して自立すれば、それで“めでたし”ではない、と感じる例は少なくなかっ
た。「路上からアパートに移っても、部屋の中でひとりぽつんと座る姿から受ける印象は、駅の通路で段
ボールを敷いて座っていた日と、あまり変わらないんですよね」。

その理由に気付かせてくれたのも、ホームレスの一人だった。

その頃北九州市では、中学生によるホームレス襲撃事件が頻発し、問題になっていた。しかし、
被害者側であるはずのその人は「中学生たちの気持ちが分かる」と言ったのである。

「深夜2時に外でホームレスを襲ってるってことは、その子たちが家にいないことを、誰も気に懸けてい
ないんだろう。家はあっても、帰る場所がない。誰からも心配されない子どもの気持ち、おれには分かる
な」。

そこで、奥田さんは考えた。「“家”に象徴される物理的・経済的な問題が解決しても、家族や友人、地
域といった“帰る場所”がなければ、本質的な解決にはならない。“家(ハウス)”があっても、“ホー
ム”がなければ、人の心はホームレスのままなのだ」と。そのときから、“伴走型支援”の模索が始まっ
た。

大家の不安を取り除き、生活を継続できる、支援付き家賃保証の取り組み

そもそも、ホームレスにとって住宅の確保が難しい最大の要因は、家族の欠如にある。保証人が
立てられない、生活が安定しない、孤独死の可能性がある---いずれも大家にとっては大きなリスクだ。

そこで抱樸はまず、生活支援付きの「保証人バンク」を設立した。

自分で保証人を確保できない人から利用料4万円(更新時は1万円)を預かって保証人を提供する。
利用料の3分の1は保証に備えて積み立て、3分の1を生活支援スタッフの経費に、残り3分の1を自立支援の貸し
付け金として用意するというものだ。生活支援スタッフは、就労や生活相談の対応、本人の希望に応じて
家計や積み立て管理のサポートを行う。

家探しには、不動産会社と連携して「自立支援居宅協力者の会」をつくった。入居希望者の情報を提供
し、「保証人バンク」の裏付けによって物件を仲介してもらう。併せて、入居後の見守り、特に家賃滞納
などトラブルの早期発見に協力を求めた。生活支援スタッフが速やかに介入することでトラブルの芽を摘
み、事態の悪化を防ぐ。これにより、「保証人バンク」利用者の生活継続率は自立者全体の92%より6ポ
イント高い98%に達した。

2017年夏から、「保証人バンク」は、家賃債務保証会社リクルートフォレントインシュア(現オリコフォ
レントインシュア、以下OFI)との連携で、新しい生活支援付き連帯保証「くらし安心サポートプラス」
に発展した。通常の保証会社の審査に通らない人を対象とした保証だ。

連携の提案は、保証会社の側からもたらされた。当時の担当者はこう語ったという。

「滞納が起きたとき、ただ職員が訪問して請求を繰り返しても、相手はドアを閉ざすだけでした。対決で
はなく、一緒に問題に取り組む姿勢がなければ、債務事故はなくならない。それで、生活支援の専門家に
協力を求めたいと考えたんです」。

「くらし安心サポートプラス」の仕組みはこうだ(下図)。

賃貸住宅の入居希望者は、抱樸と生活支援契約を結び、月額2,000円(税別)の生活支援費を支払う。こ
の生活支援を前提に、入居者はOFIと賃貸保証契約を、大家と賃貸借契約を結ぶ。入居後、OFIは、家賃と
共益費、その1%の保証料(初回は1ヶ月分)と生活支援費を代行収納する。併せてOFIは月に2回、オート
コールによる安否確認も行う。オートコールに反応がなかったり、家賃が滞納されたりすれば、すぐに抱
樸に通報して生活支援につなぐ。

OFIは、抱樸と連携することで債務事故による損失が抑えられるようになり、抱樸は、これまでゼロに等
しかった生活支援の費用が継続的に得られるようになった。

ただ、この仕組みもまだ十分ではない。1人当たりの生活支援費が月2,000円では、100人支援してようや
く20万円にしかならない。生活支援スタッフを1人置くにも足りない金額だ。そして、通常の審査に通ら
ない100人を、1人でフォローするのは容易なことではない。

これまでのところ、抱樸は生活支援スタッフの人件費の多くを寄附で賄っている。しかし、継続的な支援
のためには、さらなる工夫が必要だ。

サブリースによって住宅と支援費用を確保する、新しい仕組み

2017年秋から抱樸は、自らマンションを借り上げて“大家”となる、新しい事業に取り組んでいる。
きっかけは「自立支援居宅協力者の会」のメンバーで、地元の不動産会社、田園興産の社長と奥田さんの
雑談だった。田園興産は北九州市内で多数の賃貸住宅を経営しているが、このところ学生向けワンルーム
の空室が増えているというのだ。

奥田さんは考えた。「住む家に困っている人がいる一方で、不動産オーナーは空き家に困っている。家賃
債務保証会社は滞納事故で困っている。そして私たちは支援費用が足りなくて困っている。これらをまと
めて解決する方法はないものか」。

そこで思いついたのが、抱樸が田園興産の空室を借り上げて入居者を募る、サブリース方式の住宅支援
だ。田園興産には、空いている部屋をまとめて借りる代わりに家賃を安く抑えてもらい、入居者には生活
保護の住宅扶助で払える金額で貸し出す。家賃保証には前述の「くらし安心サポートプラス」の仕組みを
使う。これにより、抱樸は2,000円の生活支援費に加え、サブリースの差益によって、一室あたり月額約1
万1,000円の支援費用が確保できる。

現在稼働中の生活支援付き賃貸住宅「プラザ抱樸」は鉄筋コンクリート12階建ての大型マンションで、
110室中60室を抱樸が借り上げている。個々は独立した住まいでありつつ、一棟にまとまっているので、
支援スタッフもこまめに訪問でき、常駐の管理人による24時間の見守りが可能になった。

入居しているのは元ホームレスのほか、高齢単身者や障害者、あるいはその両方の属性を持つ人もいる。
DVから逃れて仕事を探す途中の女性もおり、年齢も性別もさまざまだ。「福祉の制度上では、介護、障害
という線引きに沿った対応しかできない場面もあります。けれどもプラザ抱樸はふつうの賃貸住宅だか
ら、どんな事情の人でも支援できるのです」と奥田さん。

2018年10月現在、「プラザ抱樸」は60室のうち46室を見守り支援付き住宅に充てているが、今後は国土交
通省の「住宅セーフティネット制度」を利用した登録住宅や、「スマートウェルネス住宅等推進モデル事
業」の補助金を活用した地域交流サロンも設ける計画だ。近く障害者のグループホームをつくる予定があ
るほか、「刑余者の受け皿となる自立準備ホーム、児童養護施設出身者や高齢者の就労支援機能も組み込
んでいきたい」と奥田さんは目標を語る。

出会いから看取りまで。家族に成り代わって最期まで伴走を続ける

「プラザ抱樸」は支援があれば一人で生活できる人が対象だが、それもできなくなった人のためには、共
同生活が送れる無料低額宿泊所「抱樸館北九州」を用意している。介護保険や障害者福祉などの制度外の
施設なので、誰でも入居可能だ。

ここでは、食事の用意はもちろん、必要に応じて服薬の補助や病院への同行、介護サービスとの連携に加
え、買い物の代行や金銭管理も行う。館内では体操や音楽などのレクリエーション、花見やクリスマスな
ど季節の行事も開催している。

「最終的に、医療や介護の専門的ケアが必要になったときには、専門施設につなぎます。看取りまで行っ
てこその“伴走型支援”なのです」と奥田さん。

抱樸では、自立者が相互に支え合うためのグループ「なかまの会」に加え、地域住民にも参加を呼びかけ
て「互助会」をつくっている。会費は月500円。毎月の誕生日会やバス旅行などのイベントを企画し、長
寿祝いや入院見舞いも届けるが「いちばん大事な働きは“お葬式”」だと奥田さんは言う。

「ホームレスが路上で亡くなったとき、その8割はお葬式を出してもらえません。その人の死を弔うこと
は、家族の最後で最大の機能です。家族に代わって互助会でお葬式を出すことが、本当の“地域共生”だ
と考えています」。


社会的弱者を「劣悪な終の棲家」に押し込みかねない住宅政策の危うさ

2018-12-07 20:02:04 | Weblog

         社会的弱者を「劣悪な終の棲家」に 

         押し込みかねない住宅政策の危うさ  

社会的弱者を「劣悪な終の棲家」に押し込みかねない住宅政策の危うさ
https://diamond.jp/articles/-/187729

厚労省の「目立たない」検討会が社会的弱者の暮らしを大きく変える

 2018年12月17日、厚労省は「社会福祉住居施設及び生活保護受給者の日常生活支援のあり方に関する検
討会」の第2回を開催する予定である。この非常に長いタイトルを持ち、しかもそれほど注目されていな
い検討会は、近未来の日本の高齢者や社会的弱者の「住」を大きく変えてしまうかもしれない。

 日本の「健康で文化的な最低限度」の住については、すでに面積と設備が、国交省の「最低居住面積水
準」に定められている。今回の検討会の成り行きによっては、国交省の定めた「最低」以下の住を、厚労
省が定めて定着させることになりかねない。

 「日常生活支援住居施設」を一言で言えば、「人的支援つき無料低額宿泊所」だ。無料低額宿泊所は、
すでに住居を喪失していたり、あるいは住居を喪失したりしそうな生活困窮者に対して、一時的に無料ま
たは低額で住居を提供するものである。「一時的」とされているのは、生活保護の原則はあくまで居宅、
地域での安定した住生活を前提にしているからだ。

 しかし、高齢・障害・犯罪歴などがネックとなって、あるいは地域の家賃相場が生活保護の想定してい
る住居費に比べて高すぎ、実際に住むことのできるアパートを見つけられない人々も多い。日常生活に
様々な支援を必要とするため、支援なしで1人暮らしを営むのは困難な人々もいる。管理スタッフのいる
無料低額宿泊所は、好都合といえば好都合かもしれない。そして、「一時」のための無料低額宿泊所での
暮らしが長期化し、ついにはそこが「終の住処」となることも珍しくない。

 無料低額宿泊所は生活保護法に定められているが、社会福祉に関する法律の規制対象とならない「施
設」もある。簡易宿泊所(いわゆる「ドヤ」)もあれば、法的には「老人ホーム」ではない事実上の老人
ホームもある。故意に法の規制を逃れている場合もあれば、あるべき居住と支援の姿を考えた結果もあ
る。一定の防火対策が採られている場合もあれば、不備がある場合もある。まぎれもない「貧困ビジネ
ス」もあれば、良心的な運営がされている場合もある。

 ともあれ、厚労省が提示しているスケジュールによれば、2019年4月頃までに、主に「社会福祉住居施
設」の建物や住居部分のハードウェアに関する部分が決定される予定である。その大枠は、早くも12月17
日に予定されている第2回で決定される可能性が高い。

 検討会の最初の大きな焦点は、「スプリンクラーの設置は義務化するのか」と「アパートの1室をベニ
ヤ板などの間仕切り壁で仕切った『簡易個室』を認めるかどうか」の2点になりそうだ。まず、実質的に
は相部屋である『簡易個室』の成り行きに注目すべきだろう。

簡素な間仕切りだけの簡易個室 業者にとって財源は「税金」

 無料低額宿泊所の居室には、個室、「いわゆる簡易個室」、多人数居室(相部屋)の3通りがある。
「いわゆる簡易個室」とカギカッコでくくったのは、現在のところは正式に公認されていないまま、11月
5日に厚労省が開催した第1回検討会の資料に出現しているからだ。

 高齢化と人口減少が著しく進行している関東のベッドタウンに実在する、ある無料低額宿泊所の「簡易
個室」を運営しているのは、「貧困ビジネス」として名高い事業者だ。おそらく6畳と思われる1室が、角
材とベニヤ板で出来た間仕切り壁で仕切られており、1人あたりのスペースは2.3畳程度。布団を敷くと、
0.5畳以下のスペースしか残らない。出入り口となっているのはカーテンだ。そして、間仕切り壁の上下
には隙間がある。隣の物音も匂いも筒抜け、というわけだ。

 もしも、この2つの6畳間をそれぞれ「個室」として扱えば、2人が暮らせることになるのだが、間仕切
り壁によって1室を2つの「簡易個室」とすれば、4人を収容できる。

 生活保護の家賃補助の基準額は、同地域では4万5000円だが、狭すぎる場合には30%までの減額が行わ
れる。最大の減額幅が適用されると、1人あたり3万1500円となる。4人分なら12万6000円だ。
 ところが同地域の家賃相場を見ると、同等のファミリー向けマンションの家賃は、最大で5万円程度な
のだ。そう都合よく「常に満室」とはいかない可能性を考えて、生活保護からの家賃収入の毎月平均が10
万円としても、家賃だけで5万円の利益が得られることになる。

 この無料低額宿泊所は、老朽鉄筋マンションを使用して運営されているのだが、中に同じような「簡易
個室」が80人分、つまり本来のマンションの20室分あるのなら、家賃収入だけで年間1200万円の利益とな
る。しかも財源は生活保護費、すなわち税金だ。

安全面の懸念が解消されればそれでよいのか

 この「簡易個室」には、安全面の懸念もある。
 火災の際、もしも火元が下の階なら、窓を開けてベランダに逃げるのが自然だろう。しかし間仕切り壁
があるため、片側の人が窓を開けてベランダに出ようとしているとき、もう片側の人は出られない。若い
健常者なら、状況を判断してキビキビと避難できるかもしれない。しかし、このような施設に生活保護を
利用して居住している人々の約40%は65歳以上だ。約50%は40~64歳だが、精神障害・知的障害・発達障
害などの障害を抱えていることが多い。だから支援を必要としており、そこにいるのである。

 建物自体は、老朽化しているとはいえ鉄筋コンクリート造なので、スプリンクラーを設置することは可
能そうだ。しかし、スプリンクラーを設置して避難までの若干の時間稼ぎを可能にしたところで、それほ
ど安全性が高まりそうな感じはしない。

 さらに、「簡易個室」とするための間仕切り壁や、出入り口となっているカーテンも、私が見たとこ
ろ、防燃・難燃加工がされているわけではない。角材やベニヤ板やカーテンを、燃えにくい素材の製品に
交換することは、それほど困難でも費用がかかるわけでもないだろう。しかし、入所者の行動の自由を奪
うわけにはいかない性格の「宿泊所」だ。あらゆる私物、あらゆる寝具について、万全の対策を行うこと
は不可能だろう。

 安全性の面から見ると、追求できるのはせいぜい、同等の集合住宅並みの「安全」だ。それならば、一
般のアパートやマンションで、生活保護制度本来の「居宅」での生活を支援し、人的支援を充実させる方
が好ましいのではないだろうか。
 さらに、近隣社会への経済的・社会的影響も考える必要があるだろう。

地域経済にも貢献せず 誰の利益になっているのか

 1つの施設に80人が居住し、地域で消費生活を送ることは、もしかすると地域の中規模スーパーの撤退
を予防するかもしれない。馴染みのパン屋さんで毎日、昼食の惣菜パンを購入することが、そのパン屋さ
んの「やりがい」を支え、地域との交流のきっかけになるかもしれない。では、その80人は、生活保護費
のうち何円を自分の意志で消費できるのだろうか。

 生活保護から支給される生活費は、年齢によって異なるが、施設利用料はあくまで「1人あたり」だ。
家賃補助と合わせて8~9万円程度の利用料には、食費や水道光熱費なども含まれているのだが、本人の手
元に残るのは1万5000円~2万円程度。1日1箱のタバコと若干の必需品で消えてしまう。これでは、地域で
消費するわけにはいかない。ちなみに食事は、1日500円でも「高すぎる」と感じられるほど粗末なもので
あるが、入所者は1ヵ月あたり3万円の食費と合計2万円の水道光熱費・管理費を支払っている。

 近隣地域で、アパートの一部を利用して「施設臭さ」のない無料低額宿泊所を営んでいる別の事業者の
場合、利用料は1万円前後に抑えられ、本人の手元には6万円以上が残る。その現金は主に、地域での消費
に使用されることになる。近隣で買い物をすれば、馴染みの店ができ、会話が生まれる。そして近所の顔
見知りが増え、通りすがりに挨拶をする間柄の人が増えていく。もちろん、入所者の部屋は個室である。
 その事業者は、入所を長期化させない方針を貫いているため、1人暮らしの可能な入所者は一般のア
パートに転居していく。地域に「馴染み」ができた状態でのアパート探しと転居は、その後の安定した居
住につながりやすい。

 事業者は、入所中もアパートへの転居後も、適宜、訪問して必要な支援を行っている。そのことも、本
人と周辺の安心につながる。なお、1人暮らしの継続が困難な入所者に対しても、入所を長期化させず、
適切な社会福祉施設等への入所を支援している。

 本人の「住み心地」という面で、確実な指標になるものの1つは「失踪率」だ。失踪率は公開されると
しても名目はさまざまで、名目によらず公開している事業者は非常に少ない。しかし今回紹介した2つの
事業者は、いずれも公開しており、違いははっきりしている。

 最初に紹介した「簡易個室」の事業者では、おおむね6人に1人が失踪しているのに対し、次に紹介した
地域の中の「個室」の事業者では、多く見積もっても失踪者は14人のうち1人にとどまっている。

無料低額宿泊所が終の住処に 現状を追認しかねない厚労省

 長年にわたって、生活困窮者の「住」にかかわる活動を続けている稲葉剛さん(つくろい東京ファン
ド・立教大学准教授)も、厚労省の検討会の成り行きを気にかけている。

 「無料低額宿泊所が終の住処になってしまっている現状を、追認してしまうような制度改革にならない
かと、懸念しています」(稲葉さん)

 建前は、貧困ビジネスを排除し、良質な人的支援に対しては金銭的に報いることだ。しかし、その期待
通りになりそうにない原因は、入所の契機にもある。

 「誰がそこに住むかは、福祉事務所が決めるわけで、本人の意向はないがしろにされがちです。本人が
『地域の中で暮らしたい』と思っていても、福祉事務所に『無理』と言われたら、亡くなるまでそこにい
るしかありません」(稲葉さん)

 さらに問題なのは、せっかくの民間企業の活動の芽を潰しかねないことだ。2015年、川崎市の簡易宿泊
所で火災が発生し、生活保護で暮らす人々を含む11名が亡くなった悲劇から、全国の賃貸住宅オーナーの
団体「ちんたい協会」は、生活保護で暮らす人々を含む「住宅弱者」に対する住居の提供に取り組み始め
た。その成果は、国交省の「セーフティネット住宅」として制度化されている。まだ歩み始めたばかりの
制度だが、少子高齢化と空き家・空き室問題を背景に、「住宅弱者」が地域で普通に暮らせる制度づくり
と実行は、少しずつ進展しつつある。

 「高齢者でも障害者でも生活保護でも民間賃貸住宅に入れるように、賃貸住宅業界も国交省も動いてい
ます。今回の厚労省の検討会は、それに逆行する可能性もある動きではないかとは思っています」(稲葉
さん)

きちんとソロバン勘定を 人権侵害で「トク」する人はいない

 ケースワーカーから見れば、気がかりな「住宅弱者」たちが地域に分散して住んでいるよりは、いくつ
かの施設に集中しているほうが、仕事はラクかもしれない。受け持っている100世帯のうち60世帯が、2つ
の施設に居住しているのなら、最低で年に2回と定められている訪問調査の手間は「100世帯分」ではなく
「おおむね42世帯分」になるだろう。さらに、近隣や家主との間で発生するトラブルも回避されるため、
業務の手間は、全員が地域生活の場合の40%以下まで減らせるかもしれない。

 「福祉事務所に『居宅移行が難しい人』、つまり1人暮らしが難しい人は、高齢であったり、何らかの
障害を抱えていたりすることが多いです。ご本人が抱えている何らかの生きづらさの正体は、認識されて
いない精神障害、知的障害、発達障害であることが少なくありません。その方々をアパートに移行させて
地域生活を支援するのではなく、施設に留め置くのは、『国連障害者権利条約違反である』とも言えるの
ではないかと思います」(稲葉さん)

 誰かの人権を制約することで、福祉事務所を含め、社会は若干の「トク」をするのかもしれない。しか
し人権侵害は、そのことによる「トク」を上回る大損を社会にもたらす可能性もある。日本は2014年に、
国連障害者権利条約の批准国になっている。世界に「条約を守ります」と約束してから5年も経たないう
ちに、政府が条約に違反する政策を推進しはじめたら、国際社会は日本をどう見るだろうか。
 経済効率から物事を考えるのなら、それはそれで1つの道筋だ。せめて、きちんと考えて、日本社会全
体での「大損」を避けるべきではないだろうか。
(フリーランス・ライター みわよしこ)