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被害者の、被害者による、被害者のための交流会

「断らない賃貸」広がらず 高齢者ら支援制度1年

2018-11-29 13:04:37 | Weblog

           「断らない賃貸」広がらず 

            高齢者ら支援制度1年 

「断らない賃貸」広がらず 高齢者ら支援制度1年
https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/201811/0011855339.shtml

 賃貸住宅への入居を断られることが多い1人暮らしの高齢者や低所得者らの住宅を確保するため、国が
昨年10月から始めた空き家登録制度が低調だ。国土交通省は2020年度までに入居を拒まない民間登
録住宅を17万5千戸にすることを目標に掲げているが、12県がいまだ登録数ゼロ。兵庫県も25年ま
でに7千戸にする計画案をまとめたが、現状はわずか53戸と実現のハードルは極めて高そうだ。(前川
茂之)

 高齢化の進展で1人暮らしの高齢者が増える中、孤独死や家賃滞納の懸念などから、お年寄りが賃貸住
宅の入居を断られるケースは年々、増加傾向にある。

 県によると、賃貸住宅オーナーへの調査で、入居を断った経験を複数回答可で聞いたところ、最も多
かった対象者は高齢者で58・1%に上った。次いで外国人46・5%、障害者27・6%、ひとり親家
庭20・7%と続く。

 こうした「住宅確保要配慮者」に、地域の空き家を活用してもらおうと、国は昨年4月に住宅セーフ
ティーネット法を改正し、民間の不動産業者らに、高齢者らの入居を拒まない空き家を都道府県や政令
市・中核市に登録してもらう制度を同10月から始めた。制度に登録すれば、低所得者の家賃を月額4万
円まで行政が補助するなどの仕組みも用意した。

 ただ、開始から1年余りの26日時点で全国の総登録数は5131戸と、目標値の2・9%にとどま
る。兵庫県内は神戸市の53戸のみ。お隣の大阪府は全国最多の3810戸で、大きく水をあけられてい
る。

 県住宅政策課は低調の理由を「制度の認知度が低い上、登録する明確なメリットが少ない」と説明す
る。県はてこ入れ策として、登録の壁となっていた手数料(6700~2万円)を10月から無料にし、
供給目標数や支援策などを示した計画案を策定。高齢者らの見守り活動などをする団体を「居住支援法
人」として認定し、登録オーナーに安心感を与える体制づくりに注力する。同課は「高齢者や低所得者ら
の支援体制が整えば、オーナー側も登録もしやすくなるはず。地域の空き家解消にもつながり、好循環が
生まれるはず」としている。

■支援団体「福祉目線の制度に」

 「アパートの建て替えで立ち退きが決まったが、行き場所がない」
 神戸すまいまちづくり公社が運営する「市すまいとまちの安心支援センター」(すまいるネット)に
は、転居先に悩む高齢者らから数多くの相談が寄せられる。身寄りもなく、頼れる友人もいない。保証人
や緊急時の連絡人がいない単身高齢者は公営住宅にも入れず、家賃のより安い、環境の悪い住宅へと流れ
ていくケースが多いという。担当者は「登録されているセーフティーネット住宅では物件数が少なく、案
内が難しい」と頭を抱える。

 一方、不動産業界からは「貸主が求めているのは安定的な家賃収入。家賃滞納やトラブルの可能性があ
る人を、登録してまで受け入れようとする業者は少ない」(神戸市の業者)との本音も聞かれる。

 低額所得者に4万円を家賃補助する制度も、財源を市町が一部負担するため、兵庫県内に導入市町はな
いという。県の居住支援法人に指定されている「県社会福祉会」は「住宅確保要配慮者は生活保護や介護
支援など、行政の福祉サービスを必要としている人が大半。本当に必要なのは、そうした住宅困窮者をど
う見つけ、支援するかという福祉的な視点だ」と指摘する。

【セーフティーネット住宅制度】入居拒否を受けることが多い単身高齢者やひとり親家庭などの住まいを
確保する制度。登録住宅は「セーフティーネット住宅」としてホームページで公開されており、?住宅確
保要配慮者の入居を拒まない?床面積25平方メートル以上(シェアハウスは専用部分9平方メートル以
上)?耐震性がある-などが要件。兵庫県は要配慮者を高齢者や低額所得者以外に、被災者や障害者、犯
罪被害者、LGBTなどと規定。土砂災害特別警戒区域では登録制限を設けるなどの独自要件も課してい
る。


人生100年時代の「終の住処」どこに――サ高住で高齢者「選別」の実態

2018-11-25 20:27:52 | Weblog

          人生100年時代の「終の住処」 

        どこに――サ高住で高齢者「選別」の実態 

人生100年時代の「終の住処」どこに――サ高住で高齢者「選別」の実態
https://news.yahoo.co.jp/feature/1134

100歳まで生きることが珍しくない「人生100年時代」を日本は迎えようとしている。2018年時点で100歳以上は約7万人。今後も増加が見込まれる。そうしたなか、介護を受けながら暮らすことができる“終(つい)の住処(すみか)”として、「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」も増え、全国で24万戸近くになった。その一部施設で入居者の「選別」が行われているのだという。本来は、主に介護の必要な度合いが低い人向けを想定した施設なのに、寝たきりの高齢者を優先させている、と。いったいどういうことなのか。(取材・文=NHKスペシャル“人生100年時代を生きる”取材班/編集=Yahoo!ニュース 特集編集部)

「いないですね。いつもはこの辺にいるんですけど。車の通りが多いので、危険なんです」
猛暑の7月下旬、福岡市の閑静な住宅街。サ高住「スマイル板付」の岡山正和施設長(40)が、入居者を懸命に捜していた。認知症の山本勇さん、100歳。その行方が、夕食後から分からなくなったのだ。施設の防犯カメラには、車いすを自分でこいで、ゆっくりと交差点を横断する山本さんが映っていた。

約1時間後。山本さんは施設から500メートルほど離れた場所で見つかった。交通量の多い通りの道端で、ぼうぜんと行き交う車を眺めていた。3年前に入居してから、毎日のようにひとり歩きをしてしまい、4キロ離れた場所で警察に保護されたこともあったという。

「部屋をご案内しましょうか」。施設に戻ってきた山本さんが、サ高住の自室に案内してくれた。19平方メートルのワンルームにベッドと小さなタンス。ここが、山本さんの終の住処である。

入居前は、自宅で一人暮らしだった。やがて認知症が悪化し、ガスコンロの火のつけっぱなしも頻発した。そのころ、介護の必要な度合いは低いほうから2番目の「要介護2」。特別養護老人ホームは「要介護3」以上の高齢者しか原則入れないため、サ高住への入居を決めたという。このサ高住の料金は、食費込みで月におよそ12万円。年金で暮らせる場所はここだけだった。

子どもは3人いるが、すでに70歳前後。介護を頼ることはできない。妻は、11年前に交通事故で亡くなったという。

妻の話になると、山本さんが車いすからゆっくりと立ち上がった。車いすの後ろにあるポケットから小さな黒い鞄を取り出す。妻との写真が100枚ほど詰め込まれていた。

「ご覧になってください。女房ですよ。一緒に連れて歩いて、どこにも一緒に持って歩きよる。こっちが亡くなるときは、ともに散ってしまおうと思って」

部屋の壁には、100歳になったときに内閣総理大臣から送られた祝い状が飾られていた。長寿を祝う内容で、「慶賀にたえません」の文字が見える。しかし、山本さんは別れ際にこう漏らした。
「いつまでも生きているのは、おかしいですよ。何も悪いことしたわけじゃないけど」

「自分で動ける」からこそ負担が大きい

いま、このサ高住は深刻な事態に直面している。入居者40人のうち、自分で動くことができる「要介護2」以下は21人。しかも、そのうち15人は認知症で、ひとり歩きなどのために介護の負担が大きくなっているという。その現場も見た。

深夜23時、事務所のナースコールが鳴り響く。職員が駆けつけると、「要介護2」の女性(84)が、部屋をウロウロしていた。不安げな様子で職員に訴える。

「聞こえます? カサカサっていう音が……。部屋に侵入してきた男を捕まえてほしい。そんなふうに隠れてないで顔見せんしゃい、って言うたと。ガタガタ震えよるとですよ、怖い目に遭って」
認知症からくる幻覚だった。幻覚などで混乱したまま動き回ると、事故につながりかねない。昼夜を問わず、職員は入居者から目を離せない。

深夜24時。職員は、104歳の女性の部屋に行った。認知症で「要介護1」だ。ところが、ベッドの上に姿がない。カーテンの陰に隠れていて、出てこようとしない。
職員があわてて声をかける。「そこはベッドじゃないですよ? ベッドに行きましょうか」。すると、女性は拒んだ。

「何ですか? 今ここで一時、遊んでるんです。裸になってるんで、開けないでください!」
押し問答は10分以上続いた。こうしたトラブルは同時多発的に一晩中続くという。

国の定めによると、職員配置の基準はサ高住の場合、「少なくとも、日中1人」。これに対し、この施設では、「日中2人、夜間1人」の計3人を置かなければ、入居者の安全を到底守り切れないという。
岡山施設長は言う。

「放っておけない。ちゃんと見ていかないと、その人の健康が守れないですもんね。大げさかもしれないんですけど、人の命が奪われる可能性もあるんですよね、本当に」

認知症のケアのため赤字経営が続く

サ高住の実態を調べるため、NHKは今年5~9月、全国6646施設にアンケートを実施し、その約3割、1995施設から回答を得た。その結果、要介護認定を受けている入居者のうち認知症の人の割合は55%に上っていることが明らかになった。

厚生労働省の推計によると、65歳以上の高齢者全体に占める認知症の人の割合は2015年で16%。いかにサ高住入居者に認知症の人の割合が高いかが分かる。
認知症の入居者の増加は、サ高住の経営を圧迫している。

収入の柱は、入居者からの「料金」や「介護報酬」だ。このうち、介護保険から支払われる介護報酬は、要介護度の高い人ほど増える仕組みになっている。

ところが、このサ高住「スマイル板付」では、要介護度の低い人が多いため、認知症のケアの負担が大きい割に、介護報酬が少ない。さらに、24時間態勢でケアを行うため、人件費がかさみ、経営を圧迫しているという。オープンから4年、経営は厳しい。

人件費を削るため、岡山施設長が自ら泊まり勤務をこなしている。

ある日の深夜2時過ぎ。夜食のカップラーメンを食べながら防犯カメラのモニターを見ていた岡山施設長は、その手を止めた。外に出ようとする入居者の姿がまた映ったのだ。100歳の山本さんだった。
あわてて連れ戻しに行くと、誰かに呼ばれたのだ、と山本さんは説明した。

「誰かから呼ばれたの? 男の人? 女の人?」(岡山施設長)
「男じゃないかな。外から聞こえたから玄関まで行ったけど、誰もいないし」(山本さん)
岡山施設長は言う。
「入居者・家族から満足していますという声をいただくこともあります。でも経営的には、赤字が続いているっていうのが現実です」

寝たきりがほしい

サ高住の経営実態は全国的にどうなっているのだろうか。サ高住を管轄する都道府県と政令指定都市に情報公開請求をしたところ、サ高住の制度が始まった7年前からこれまでに廃業や登録抹消が少なくとも421件あることが分かった。サ高住の経営はどうすれば良いのか。現場をさらに取材した。

西日本にあるサ高住を見てみよう。5年前のオープン以来赤字続きだったが、昨年初めて黒字に転じたという。経営状況を改善させたのは、昨年、施設長に就任した40代の男性だ。「きれいごとだけでは経営が成り立たない現実を知ってほしい」と、匿名を条件に取材に応じた。

男性は、赤字を抜け出すために入居者の「選別」を打ち出した。介護報酬が高額になる、要介護度の高い人を優先的に受け入れるようにしたのだ。その結果、入居者40人のうち「要介護3」以上が25人になったという。

「会社も赤になれば、職員に給料も払えません。うちはボランティアではありません。株式会社。お金をいただかないと」
選別の基準はもう一つある。それは「事故のリスクの低さ」だという。

「寝たきりの人のほうが、介護は楽だと思います。何がベストかというと、本人さんの意思がないから寝たら寝っぱなし。もうそれがいいです」

取材の日、この施設長は病院に電話をかけていた。退院予定の高齢者を紹介してもらうためだ。1カ月後くらいに部屋が空きそうだから、「要介護3」くらいの人がほしい、といった会話が聞こえる。
なぜ、「要介護5」ではなく、「3」なのか。施設長は言う。

「施設に入ると、だんだんと身体機能が落ちてくる可能性が高いんですよ。3の方が少しずつ悪くなれば次は4になる。だから売り上げが上がるんです」

要介護度の低い人を入居させても、介護報酬が少なく、認知症の人はひとり歩きなどのリスクがある。だから、そういう人から申し込みがあっても「待機してもらう」という。

「『要介護2』以下の人には『まだ空いてません』って言って待ってもらっています。入居希望者の要介護度だけを見て選ぶって、本当に福祉なのかっていうのはあるんですけど、それをさせてるのは介護保険制度かなと思うんです」

こうした入居者の選別を進めた結果、このサ高住はようやく黒字になった。それでも、利益はほとんどない。建設費の借入金もまだ数千万円残っている。

全国のサ高住を対象にしたNHKのアンケートでも「要介護度が低いことを理由に、入居を断らざるを得ない」と記した施設が相次いだ。

「認知症で徘徊が激しい人はお断りしています。『要介護1、2』だけでは経営できません」
「介護職員の報酬が社会的に低いと言われているなか、要介護度の低い人ばかりでは、職員に満足のいく給料が払えません」
自由記述欄にはそんな声があふれている。

「歩ける人は“空室対策”」

入居者の「選別」を始めたこのサ高住も例外的に要介護度の低い人を受け入れることがある。この9月上旬、「要介護1」の夫(91)と「要介護2」の妻(87)が夫婦で入居した。ただし、「短期間で立ち退くこと」が条件だった。施設長が言う。

「空室対策ですね。今から入居者を探すとなれば、1カ月近くはかかる。要介護度が低い人でも入れていかないと運営的には厳しいので」

この夫婦はともに認知症だ。他の人の部屋に入ってトラブルになることも多く、これまでも施設を転々としてきたという。夫は客船の乗員として50年働き、夫婦で2人の子どもを育て上げた。しかし、息子は病気がちで、娘も離れた街で暮らしている。「子どもたちには迷惑をかけたくない」と言い、2人の終の住処を探し続けてきた。

夫婦には、大切にしてきたものがある。古びた、小さな靴箱。そこには家族の思い出の写真などが詰まっている。箱の底にはハーモニカ。家族だんらんのときに、いつも吹いていたという。夫は慣れた様子で昭和の歌謡曲「リンゴの唄」を吹いてくれた。ほとんどしゃべらない妻も、音色を聴いた途端、楽しそうに歌い始めた。

わずか19平方メートルのワンルーム。二つのベッドを並べて暮らす。
「夫婦ですからね。一緒に苦楽をともにして、一生過ごしたいじゃないですか。できるだけ迷惑のかからんように、亡くなることができれば」

「リスクがない」高齢者を受け入れる

9月下旬、このサ高住に病院から連絡が入った。退院予定の高齢者を紹介したいとの知らせだ。病院に向かう車内で、施設長の男性はこう語った。

「車いすって話は聞いてるんですよね。車いすから立ち上がろうとか、ベッドから起き上がろうとか、そういうリスクがなければ、入居させてもいいのかな」

病院に到着すると、車いすにじっと座る男性がいた。脳出血を発症し、体にまひが残る。月に31万円の介護報酬につながる「要介護4」。病院の担当者は「危険行為は全くありません。車いすから立ち上がる、ベッドから自分で起きようとする、そういうことはありません」と言い、施設長はこの男性の受け入れを決めた。

「制度の誤算」

本来、サ高住は主に要介護度の低い人を想定している。しかし実際は、経営上の判断やリスク回避の観点から、要介護度の低い人は敬遠され、高い人が重宝される現実がある。

国土交通省の「サービス付き高齢者向け住宅に関する懇談会」の委員で、日本社会事業大学専門職大学院の井上由起子教授は「制度の誤算」を指摘する。

「もともとサ高住は、日常生活はほぼ自立しているけど、ひとり暮らしは不安という高齢者を想定していました。だから制度上は『老人ホーム』ではなく、『住宅』という位置付け。介護も24時間態勢ではなく、1日数時間しか想定していなかった。ところが、ふたを開けてみれば、特別養護老人ホームに入れない、24時間見守りが必要な認知症の高齢者の受け皿になっている。大きな誤算でした」
長年、ケアマネジャーとして働き、介護現場の実態に詳しい東洋大学の高野龍昭准教授は、利用者本位の制度設計の大切さを語る。

「いまのサ高住は、とにかく“箱を増やす”ことが目的となっていて、結局誰のための施設なのか分からない。まだ元気な高齢者のための『住宅』なのか、要介護度の低い人のための『老人ホーム』なのか、高い人のための『老人ホーム』なのか。施設の目的をはっきりさせたほうがいい」

「ここにいたい」でも退去

客船で働いてきた前出の夫とその妻。この夫婦はサ高住に入居後、1カ月で退去することになった。「要介護1」の夫と「2」の妻。その2人の代わりに、新たに要介護度の高い高齢者の受け入れが決まったからだ。
施設長は夫婦にこう告げた。

「今度、自分で歩けない、ご飯も食べられない人が来ることになりました。奥さんもご主人もまだまだしっかり歩けるし、元気ということで、今日でここは終わりになります」
87歳の妻がすがるように言った。

「私ここにいたい。ここにもうずーっといたい」
夫婦はこの後、老人保健施設に入ることになっている。そこも短期間しかいられない。その次にどうするかはまだ決まっていない。


貧困層の住生活を破壊しかねない「簡易個室」公認が急がれる理由

2018-11-10 11:18:17 | Weblog

            貧困層の住生活を破壊しかねない 

            「簡易個室」公認が急がれる理由 

貧困層の住生活を破壊しかねない「簡易個室」公認が急がれる理由
https://diamond.jp/articles/-/184844

 日本社会の将来に大きな火種を仕込むかもしれないものの、まったく注目されていない厚労省の検討会
がある。そこでは、「簡易個室」が無料低額宿泊所の「個室」として公認されそうな気配なのだ

「簡易個室」の公認が激変させる 人生100年時代のイメージ

 生活保護に関する現在進行形の最大の課題は、2018年10月1日に施行されたばかりの改正生活保護法、
そして生活保護世帯の70%に対する保護費引き下げだろう。それらの影響が少しずつ現れ始めたばかりの
11月5日、厚労省は「社会福祉住居施設及び生活保護受給者の日常生活支援の在り方に関する検討会」を
開始した。

「社会福祉住居施設」とは、いわゆる無料低額宿泊所のことだ。厚労省の資料には、「社会福
祉住居施設(無料低額宿泊所)」と表記されている。無料低額宿泊所は、住居がない人々の一時的な住居
だったのだが、近年は事実上の「定住」に近い使用形態が多い。

 検討会は、この現実を踏まえて開催されているのだが、特に注目されていない。目的は、今年6月に再
改正された生活保護法や関連法案を施行するための厚労省令・施行規則・通知・通達などを定めることで
ある。一見、法改正のような大きな影響力はなさそうだ。

 そのせいか、傍聴席には空席が目立った。メディア関係者の姿が若干は見られたものの、11月8日現
在、全く報道されていない。しかし、この検討会は、日本社会の将来に大きな火種を仕込むかもしれな
い。その火種とは、国交省が定めた日本の「住」の最低基準以下の「住」の公認だ。具体的には、薄い間
仕切り壁で隣のスペースと不完全にしか区切られていない「簡易個室」が、無料低額宿泊所の「個室」と
して公認されてしまう可能性があるのだ。

 無料低額宿泊所は、福祉事務所の「措置」によって入所する施設だ。本人の同意は必要とされるが、雪
の日に無一文で福祉事務所を訪れて、職員に「そこがイヤなら、今晩、寝泊まりできるところはありませ
んよ」と言われたら、同意するしかないだろう。そのような成り行きで、無料低額宿泊所の「簡易個室」
という名の「なんちゃって個室」で生活保護を利用し始めたら、転居できないまま、結局はそこが「終の
棲家」になってしまうかもしれない。すると、「人生100年時代」のイメージは、全く異なるものになる
はずだ。

 私は正直なところ、大きな危機感を抱いている。

行き場のない人々の「終の棲家」辿りついた住居に命を奪われる

 この検討会の背景の1つは、困窮の果てにたどり着いた住処によって生命を奪われてしまう事例の数々
だ。
 2009年、群馬県渋川市の高齢者入所施設「たまゆら」で火災が発生し、高齢者10名が死亡した。死亡し
た10名のうち6名は、東京都で生活保護を利用していたが、都内の施設に空きがないため群馬県の施設に
入所していた。他県の施設も利用するしかないほど、東京都の高齢化問題が深刻化していることは、火災
とともに世の中を驚かせた。

 その後も、同様の施設火災は相次いでいる。2015年5月、川崎市の簡易宿泊所で火災が発生し、10名が
死亡した。2018年1月には、札幌市東区の共同住宅で火災が発生し、11名が死亡した。いずれのケースに
おいても、建物が違法改築された結果として火災に弱い構造となっていたり、防火対策に不備があったり
した。

 入居者や死亡者の多くは、生活保護で暮らす高齢者や障害者など、通常の賃貸住宅に受け入れられにく
い人々であった。無料低額宿泊所は、あくまで住居がない人々の一時的な住居だ。しかし、障害や疾患や
多様な困難を抱えている人々は、「通常の民間アパートで暮らしたい」と望んでも受け入れられにくい。
その場合、無料低額宿泊所に年単位で居住し、そこを実質的に定住先や「終の棲家」とすることになる。
 この現実を踏まえ、「無料低額宿泊所」という制度を基盤として、インフォーマルなサポートを含む多
様な支援を提供している事業者もいる。2018年1月の札幌市の共同住宅も、そのような居住の場だった。
「そこしか行き場がない」という人々が、その住まいに生命を奪われるのは、あまりにも残酷すぎる。何
らかの対策が必要なのは間違いない。とはいえ、「スプリンクラーさえあれば」という単純な問題ではな
い。

スプリンクラーは火とともに 住環境改善の機運を消すかもしれない

 スプリンクラーの最大の問題点は、設置コスト(最低で400万円程度)だ。そして、設置コストが多大
であるにもかかわらず、万能の防火対策にはなり得ず、避難までの時間稼ぎが精一杯だ。

 生活困窮者支援で長年の実績を持つ稲葉剛氏(立教大学特任准教授)が代表理事を務める「一般社会法
人つくろい東京ファンド」では、東京都中野区に2014年に設置した個室シェルター「つくろいハウス」を
皮切りに、新宿区・墨田区・豊島区で個室シェルターやシェアハウスを運営している。それぞれの規模は
2室~7室と極めて小規模であり、「施設らしさ」はなく、通常の民営賃貸住宅に限りなく近い。それが特
徴だ。

 しかし、それらの施設すべてにスプリンクラーを設置すれば、数千万円単位の費用が必要になるだろ
う。将来にわたる維持・管理・老朽化した場合の交換コストを考えると、設置時に助成金があったとして
も、「つくろい東京ファンド」にとって重すぎる負担であることは確かだ。

 費用が低く、費用対効果が高く、継続性を期待しやすい防火対策は、数多く存在する。消火器の設置、
初期消火や避難判断の訓練、避難経路の確保や避難訓練、壁やカーテンなどの難燃化、暖房や調理の可能
な限りの電化など、どの世帯でも実行できそうな「ソフト」や「チリツモ」の数々だ。それらが全世帯の
「当たり前」になれば、地域全体が火災に強くなる。

 すべての住民を対象としたそれらの施策の一環として、「貧」や「困」を抱えた人々の暮らしの場には
たとえば80%以上の実行を要求し、実行の様子を随時チェックすれば、万全ではなくとも十分だろう。
 しかし2015年の消防法改正で、高齢者や障害者を対象とした福祉施設に対し、小規模であってもスプリ
ンクラーの設置義務が定められ、今年4月から義務化された。既存の施設にとっても、費用負担が問題と
なり、設置率は100%に達していない。また今後は、新規に小規模施設を開設したい当事者や支援者を断
念に追い込む要因となりかねない。

 本記事で紹介している厚労省の検討会の対象は、「社会福祉住居施設(無料低額宿泊所)」だが、現在
のところ、スプリンクラーは議題として浮上していない。しかし、焦点の1つであることは間違いない。
高齢者施設・障害者施設で起こったこと、起こり得ることは、無料低額宿泊所でも起こり得る。

貧困ビジネスを排除しようとして 良質な暮らしが排除される不安

 無料低額宿泊所は、本来、一時的な宿泊施設だったが、他に行き場がない人々の定住の場や「終の棲
家」になっている現実がある。いずれにしても、高齢期を迎えた人々、あるいは日本の「普通」から漏れ
てしまった人々の相当数は、無料低額宿泊所を定住の場とせざるを得ない。この現実は、もはや認めるし
かないかもしれない。

 「貧」と「困」を抱えた人々の自己決定と尊厳を最後の日までサポートしている良心的な施設を応援す
る制度の整備、「貧困ビジネス」を退場させる制度の整備は、自分や家族が「もしかしたらお世話になる
かも」という観点からも、歓迎したい。

 この6月、生活保護法の再改正と同時に改正された関連法案は、無料低額宿泊所に対する規制強化と、
単独での居住が困難な人々への日常生活支援を「良質な」無料低額宿泊所で行うことを規定した。「法律
がやっと現実に追いついた」とも「それしかなかった状況が解決されないまま、既成事実がついに公認さ
れてしまった」とも言える。

 では、「良質な」無料低額宿泊所とは何だろうか。2015年のガイドラインで、面積や設備による基準は
「原則として個室」「面積は4畳半以上(特別な事情がある場合には3畳)」と定められている。では、こ
のガイドライン以前に設置された、2.9畳相当の個室と、良質な人的サービスを提供している無料低額宿
泊所は、「良質」ではなく劣悪なのだろうか。

 検討会では、構成員の1人である滝脇憲氏(NPO法人自立支援センターふるさとの会 常務理事)が、山
谷地域を含む東京都台東区で、1990年以来(NPO法人化は1999年)ずっと「行政とともに考えながらつ
くってきた」施設やサービスの数々を紹介した。また、2009年の「たまゆら」火災で暮らしの場を失った
高齢者も受け入れていること、認知症の入居者が地域で草取りなどの役割を担いつつ住民との交流を深め
てきたエピソードについても述べた。そして「面積基準は大切ですけど、長年のその人の暮らしや積み上
げより尊いのでしょうか」と問題提起した。

 「ふるさとの会」の自立援助ホームは、ガイドラインがなかった時期から個室だった。しかし現在の
「3畳」という最低基準に対しては、1平方メートル、1辺が約32cmの正方形1個分だけ不足している。「認
知症でも、がんでも、お金なくても、地域で最後まで暮らせることを証明してきたつもり」という滝脇氏
は、「もちろん最低基準は重要」としつつも、「今暮らしている人の居場所が奪われないような方策のた
めに、知恵を出し合ってほしい」と発言を結んだ。

 「貧困ビジネス」対策は必要だろう。しかしそれが、良質でありながらも厚労省の想定と少しだけズレ
ている既存の事業者を壊滅させてよいのだろうか。過去になかった何かをつくろうとする若者の試みを、
アイデア段階で萎縮させていいのだろうか。私の思い過ごしならいいのだが、過去の経緯を見る限り、現
実になる可能性の根拠が多すぎる。

 そして、厚労省資料にある「簡易個室」という用語が、私のそういう危機感に、ダメ押しの一撃を加え
る。

「簡易個室」の公認は 日本の「住」を破壊しかねない

 無料低額宿泊所の「簡易個室」は、現在のところ公認された存在ではない。厚労省資料には、「多人数
居室、一つの個室をベニヤ板等で区切ったいわゆる『簡易個室』も一定数存在する」という形で登場して
いる。

 無料低額宿泊所には、相部屋の多人数居室もあるのだが、2015年のガイドラインは「居室は個室」を原
則としている。相部屋は今後、存在自体が認められなくなる可能性が高い。しかし、「簡易個室」が公認
されると、相部屋に間仕切り壁を設置して「簡易個室」にすれば、面積等の基準さえ満たしていれば、現
在も相部屋のままである劣悪な無料低額宿泊所が今後も生き残れることになる。もちろん、現在の「簡易
個室」は、そのまま生き残れる。そして、「簡易個室」を認めない意思は、厚労省資料からは読み取れな
い。

 視点を変えて、自治体や福祉事務所の立場から無料低額宿泊所を眺めてみよう。一応は個室だがプライ
バシーはない「簡易個室」が数十室あり、管理人が常駐して入所者を監視・管理している施設は、むしろ
望ましいものかもしれない。さらにスプリンクラーなどの防火施設が設置されていれば、理想的だ。

 「簡易個室」の入居者多数を管理人が管理している施設では、防火対策が充分ならば、火災などの事故
が発生するリスクは低い。トラブルを起こしやすい入所者に対し、管理人の自己判断、あるいは本人の形
式的な合意のもと、自由を奪ったり金銭を使用させなくしたりすることも期待できる。多くのトラブル
は、事前に回避されるだろう。何かトラブルがあっても、ほぼ行政の責任は問われない。そして、そこに
生活保護受給者が30名入居しているのであれば、1回訪問すれば30名の安否確認ができる。訪問調査の手
間暇も節約できることになる。

 自治体や福祉事務所が、当事者の生活の質や幸福感に高い関心を寄せていれば、「そんな施設なら、制
度利用者さんを入所させるとしても一時的に」と考えるだろう。しかし、当事者自身の生活や幸福に関心
がない自治体や福祉事務所から見れば、「これこそ施設の理想」ということになる。

結論を急ぐ厚労省にとって 理想の住居対策なのか

 そして厚労省はなぜか、結論を急いでいるようだ。今後の開催予定によれば、社会福祉住居施設(無料
低額宿泊所)のハード面についての議論は、12月17日に開催される第2回で終了するようだ。2019年1月に
開催される第3回に一部が持ち越される可能性はあるが、スケジュールを見ると、厚労省は2019年3月から
省令案の作成に入る。逆算すると、間仕切り壁による「なんちゃって個室」、すなわち「簡易個室」が許
容されるかどうかは12月17日までに、遅くとも2019年1月に決定する。

 日本の「住」の最低限度については、国交省の「最低居住面積水準」がすでにある。単身者で「居室は
4畳半で浴室・トイレ・収納がある1K」というイメージだ。それ以下の「住」を厚労省が公認すること
は、日本のあらゆる側面に破壊的な影響を及ぼしかねない。
 どうかご一緒に「ガクガクブルブル」と、成り行きを見守っていただきたい。

●参考
厚労省:社会福祉住居施設及び生活保護受給者の日常生活支援の在り方に関する検討会
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-syakai_390337_00001.html
ダイヤモンド・オンライン『生活保護のリアル~私たちの明日は?』 川崎・簡易宿泊所火災を引き起こ
した貧困の深層
https://diamond.jp/articles/-/72317

(フリーランスライター みわよしこ)


奨学金全額返還中の保証人、一部救済へ 学生支援機構

2018-11-03 11:14:16 | Weblog

           奨学金全額返還中の保証人 

           一部救済へ 学生支援機構  

奨学金全額返還中の保証人、一部救済へ 学生支援機構
https://www.asahi.com/articles/ASLC25Q7MLC2UUPI001.html

 未返還の奨学金をめぐり、日本学生支援機構が保証人に半額の支払い義務しかないことを伝えずに全額
を請求している問題で、機構は2日、奨学金を返還中の保証人の一部について救済する考えを示した。た
だ、返還が完了した人や裁判で返還計画が確定した人は対象にはならない。

 機構が朝日新聞の取材に答えた。奨学金の人的保証制度は、借りた本人が返せない場合に備え、連帯保
証人(父か母)と保証人(4親等以内の親族)の2人が返還義務を負う。連帯保証人は本人と同じ全額を
返す義務を負うが、保証人は2分の1になる。民法で「分別の利益」と呼ばれる。

 機構によると、救済されるのは、全額請求を受けて機構との返還計画に合意し、返還中の保証人。計画
に沿って返還中であっても、分別の利益を主張すれば機構は減額に応じる。すでに返還した額が総額の2
分の1を超えている場合、超過分は返金しないという。

 返還を終えた人や、裁判の判決や和解で返還計画が確定した人は、返還中でも減額に応じない。担当者
は「法的に問題のない請求に基づいているため」と説明している。

 機構との返還計画に合意して返還中の保証人について、機構は人数などを明らかにしていない。また、
機構側から保証人に対し、分別の利益を伝えるかどうかは検討中という。(諸永裕司、大津智義)

日本学生支援機構が示した減額を認めるケース
(保証人から分別の利益を主張した場合)
           <返還中>  <返還完了>
機構と返還計画を合意   ○      ×
裁判・和解で確定     ×      ×