「断らない賃貸」広がらず
高齢者ら支援制度1年
「断らない賃貸」広がらず 高齢者ら支援制度1年
https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/201811/0011855339.shtml 賃貸住宅への入居を断られることが多い1人暮らしの高齢者や低所得者らの住宅を確保するため、国が
昨年10月から始めた空き家登録制度が低調だ。国土交通省は2020年度までに入居を拒まない民間登
録住宅を17万5千戸にすることを目標に掲げているが、12県がいまだ登録数ゼロ。兵庫県も25年ま
でに7千戸にする計画案をまとめたが、現状はわずか53戸と実現のハードルは極めて高そうだ。(前川
茂之) 高齢化の進展で1人暮らしの高齢者が増える中、孤独死や家賃滞納の懸念などから、お年寄りが賃貸住
宅の入居を断られるケースは年々、増加傾向にある。
県によると、賃貸住宅オーナーへの調査で、入居を断った経験を複数回答可で聞いたところ、最も多
かった対象者は高齢者で58・1%に上った。次いで外国人46・5%、障害者27・6%、ひとり親家
庭20・7%と続く。
こうした「住宅確保要配慮者」に、地域の空き家を活用してもらおうと、国は昨年4月に住宅セーフ
ティーネット法を改正し、民間の不動産業者らに、高齢者らの入居を拒まない空き家を都道府県や政令
市・中核市に登録してもらう制度を同10月から始めた。制度に登録すれば、低所得者の家賃を月額4万
円まで行政が補助するなどの仕組みも用意した。
ただ、開始から1年余りの26日時点で全国の総登録数は5131戸と、目標値の2・9%にとどま
る。兵庫県内は神戸市の53戸のみ。お隣の大阪府は全国最多の3810戸で、大きく水をあけられてい
る。
県住宅政策課は低調の理由を「制度の認知度が低い上、登録する明確なメリットが少ない」と説明す
る。県はてこ入れ策として、登録の壁となっていた手数料(6700~2万円)を10月から無料にし、
供給目標数や支援策などを示した計画案を策定。高齢者らの見守り活動などをする団体を「居住支援法
人」として認定し、登録オーナーに安心感を与える体制づくりに注力する。同課は「高齢者や低所得者ら
の支援体制が整えば、オーナー側も登録もしやすくなるはず。地域の空き家解消にもつながり、好循環が
生まれるはず」としている。■支援団体「福祉目線の制度に」
「アパートの建て替えで立ち退きが決まったが、行き場所がない」
神戸すまいまちづくり公社が運営する「市すまいとまちの安心支援センター」(すまいるネット)に
は、転居先に悩む高齢者らから数多くの相談が寄せられる。身寄りもなく、頼れる友人もいない。保証人
や緊急時の連絡人がいない単身高齢者は公営住宅にも入れず、家賃のより安い、環境の悪い住宅へと流れ
ていくケースが多いという。担当者は「登録されているセーフティーネット住宅では物件数が少なく、案
内が難しい」と頭を抱える。
一方、不動産業界からは「貸主が求めているのは安定的な家賃収入。家賃滞納やトラブルの可能性があ
る人を、登録してまで受け入れようとする業者は少ない」(神戸市の業者)との本音も聞かれる。
低額所得者に4万円を家賃補助する制度も、財源を市町が一部負担するため、兵庫県内に導入市町はな
いという。県の居住支援法人に指定されている「県社会福祉会」は「住宅確保要配慮者は生活保護や介護
支援など、行政の福祉サービスを必要としている人が大半。本当に必要なのは、そうした住宅困窮者をど
う見つけ、支援するかという福祉的な視点だ」と指摘する。【セーフティーネット住宅制度】入居拒否を受けることが多い単身高齢者やひとり親家庭などの住まいを
確保する制度。登録住宅は「セーフティーネット住宅」としてホームページで公開されており、?住宅確
保要配慮者の入居を拒まない?床面積25平方メートル以上(シェアハウスは専用部分9平方メートル以
上)?耐震性がある-などが要件。兵庫県は要配慮者を高齢者や低額所得者以外に、被災者や障害者、犯
罪被害者、LGBTなどと規定。土砂災害特別警戒区域では登録制限を設けるなどの独自要件も課してい
る。