一韶の俳句ブログ

俳句を詠うのは自然・私・家族・夢や希望・社会など。読む時はどんな解釈が浮かぶか読み手の経験や生活によって様々

434   灰色の路傍に石蕗の一葎    豊春

2011年11月30日 | 

(はいいろの/ろぼうにつわの/ひとむぐら)

 

 この句、「灰色の路傍」という、訳の分からないものを持って来たのが成功している。

 つまり、石垣だろうか、アスファルトだろうか、コンクリートだろうか、時間が夕方だからか、曇天だからか、などと様々な「灰色」に思いを巡らさせ、読者に想像させるからだ。

 

 この曖昧模糊とした「灰色」を、絵画で言えばキャンバスの背景として置き、一葎のツワブキ(石蕗)の黄金色を実にうまく引き立たせた。

 

 


433  2011年 11月 岩戸句会

2011年11月29日 | 岩戸句会

 

灰色の路傍に石蕗の一葎       豊春

大根干すラインダンスと一人笑む

 

声揃ふ手拍子揃ふ酉の市       稱子

落葉して一山軽くなりにけり

 

幸せはどこにでもある小春かな    章子

マフラーを背に流して荘年期

 

冬の虹晩年という未来あり      歩智

北風吹くや朝の庭の竹箒

 

朝食はパンとコーヒー新嘗祭     炎火

草紅葉足裏のタコ疼く風呂

 

熱海駅暖か帽子が群れていく     静江 

青いまま銀杏祭りの大都会

 

小春日や油で揚げしパンの耳     洋子

立冬やテーブルクロス新しく

 

在るがまま瘤かかえおり冬の幹    正太

暮早しうたたねあとの渇きかな

 

今日も又同じ布団に足を入れ     遊石

木枯の公園を斜めに過ぎる

 

短日や繰り言のように編目解く    

青鷺の古老佇む文化の日

 

顔は春心は冬の色模様        空白

霜月や虫も野球も鳴き止みて

 

窯焚きの煙昇らせ憂国忌       雲水

攻め窯にコレルリ聞かす冬の山

 


432  煉らし窯朴葉も混じる木の葉雨

2011年11月26日 | 

(ねらしがま/ほうばもまじる/このはあめ)

  

穴窯における「煉らし」とは、1300度の最高温度に達してから、丸2日間、その温度を保ちながら焚き続けること。

燃料の薪の灰が作品に降り積もり、自然の釉薬(うわぐすり)となって、作品を彩る。色は、黒、赤、茶、灰色、緑、青などさまざま。

 

「木の葉雨」は、雨の如く降る落葉のこと。木の葉に降る雨ではない。

朴の木は、煙突のすぐそばにあり、煙突から出る炎に朴葉が焙られて燃えそうになることもあるが、実際に火が付くことはない。

煙突から、火の粉が飛び出ることは、全くない。何故なら全ての灰は、途中の作品に降り積もってしまうからだ。

 


431  攻め窯にコレルリ聞かす冬の山

2011年11月25日 | 

 

攻め窯は、火力を上げて行くために、次々と薪を投げ入れる頃の窯。温度は、1300に近づく。外気温は、10度だが、窯焚きには丁度いい位だ。

 

アルカンジェロ・コレルリは、17世紀イタリアの作曲家で、ヴィヴァルディやバッハ、ヘンデルより2.30年、年長。彼の合奏協奏曲の中に、クリスマス協奏曲と呼ばれているものがあり、久し振りに聞いてみた。

 

 火が入ると、生き物のように活動する穴窯。きっと作品の出来に良い影響を与えるはずだ。

 

 

温度計では1250度

蓋を開けると熱で火傷しそう


430  木枯や御饌御酒奉り火入窯

2011年11月24日 | 

(こがらしや/みけみきまつり/ひいれがま) 

 

今回で82回目の火入れ。一応、神棚には榊、お神酒、洗米、塩、海山のものを備えて、祝詞を上げる。全員が、地震や火災、怪我などの災害に遭わないように、祈るばかりだ。

  

これから72時間、不休の窯焚きが続く。今朝の散歩では、かなり強い風が吹いていた。風も冷たい。たぶん、木枯1号だろう、いやそうに違いない。 

 

窯の中ほどの温度計は500度だが、

手前は600度はある。

 

 


429  禁煙のはずのタバコや神無月

2011年11月23日 | 

(きんえんの/  はずのたばこや/  かんなづき) 

禁煙して1年になる。未だに煙草を吸っている人を見かけると、吸いたくなる。実際、知り合いならば、貰って吸う。それでも一ト月に、そんなことは5回ぐらいだろうか。つまり、月5本は吸っている。

 

1年経って、「良く頑張ったね、1度きりだが煙草を一箱買って、吸ってもいいよ」ということになった。よせばいいのに、本当に買ってしまった。

しかし、買ってから一ト月になるが、まだ数本しか吸っていない。もう、湿気ていて不味いんじゃないか、と思う。捨てた方が良いかもしれない。

 

つまり、煙草に関して、完全に中毒症状から脱したのだろうか。次は酒だ。しかし、こいつだけは自信がない。

 

 

食用菊だそうだが、食べたことがない

育てていると、食べる気にならない

ブータンでは、切り花にさえしないそうだからすごい。

私達も見習わなくっちゃ!!!


428  落葉掻きして始まれり窯準備

2011年11月22日 | 

 (おちばかき/してはじまれり/かまじゅんび)  

 窯詰めが終わって、昨日から窯を焙(あぶ)っている。窯と作品の湿気を抜くための予備焚き、又は焙りとも言う。その前に、窯の回りの草刈りや半年間に溜まった落葉や埃を掃き清める。

 夏の間、放っておいた庭を一斉に草刈るのもこの時期。刈り草が、軽トラックに56台分は楽に出る。これは、冬への準備とも言えるかもしれない。

 

4日間、100度程度で窯を焚く

夕べ火を止めてから12時間経っていたが65度あった 

これは、今朝火を付ける前の状態


428  窯焚きの煙立たせて憂国忌    

2011年11月21日 | 

  

(かまたきの/けむりたたせて/ゆうこくき)

 

41年前の1125日、放浪の途中の長崎の食堂で三島由紀夫の自決をテレビニュースで知った。

私は、この事件を誰かと話したくて、長崎の街をさまよった。勿論、見知らぬ土地で話し合える知人などおらず、誰かに話しかける勇気もなく、唯うろうろとさまよい歩いただけだった。

 

当時の私は、三島由紀夫を馬鹿にしていたのである。三島の作品や言動を見ていると、「彼は、とっくに死んでいるはずであり、生きているのはおかしい」と思っていたからである。

 

その三島由紀夫が、彼の信念に則り自決した。彼は、自分の思いを実行に移し、成し遂げてしまった。自決の仕方とか、場所とか、そんなことはどうでも良かった。実行したことに驚愕したのである。

 

ハナユズ(花柚子)

 


427  牡蠣すする旅の港のレストラン

2011年11月20日 | 

(かきすする/ たびのみなとの/ レストラン)

 

7,8年前のことだが、テニス仲間に誘われて、オーストラリアのケアンズに行ったことがある。午前中はテニス、午後から町を散策といったような呑気な旅だった。

 

ケアンズから、北へ数十キロのポートダグラスへレンタカーでドライブ。ポートダグラスは、田舎の小さな港町のはずだが、白いヨットがずらりと並び、洒落た大きなレストランもあって、オーストラリアの豊かさを実感した。

 

このレストラン、Googleで地図検索したらありました。「Lure restaurant &bar」ルアーと言えば、魚に似せた釣りの疑似餌を思い出すが、ルアーには、魅力、魅惑と言う意味もあるようだから、なかなか良い命名だ。このレストランの生牡蠣、殻付きで大きく魅力的だったことは言うまでもない。

 

 

のぶき(野蕗)


426  冬晴や磨き終えたる焦がし鍋

2011年11月19日 | 

 (ふゆばれや/ みがきおえたる/  こがしなべ)

 

気が付いた時は、すでに遅かった。全くしょうがない、又鍋をこがしてしまった。・・・・・ある時はやかんを焦がし・・・・ある時は魚を焦がし・・・・

 

最近は、ステンレスの鍋に替えて、丈夫になったので磨き甲斐がある。しかし、こびり付いた焦げを落とすのは、容易ではない。兎に角、根気よくやるしかない。

 

ところで、最近の「なんとか加工」の鍋やフライパンは、焦がしても簡単に剥がれるらしい。更に、オール電化のIHクッキングヒーターは言うに及ばず、最新式のガスコンロでも、タイマーが付いていたり、高温を感知すると自動停止装置が働いたりと、至れり尽くせりだそうだ。

 

「そういうのに買い替えたらどうか」と勧める方もいるが、「そんな便利なものを使うと、益々ボケが進むのではないか」と心配になる。

 

 


425  積む薪に美学のありて冬構

2011年11月18日 | 

(つむまきに/ びがくのありて/  ふゆがまえ)

 

32年前のことである。一度も薪を割ったこともなく、薪の窯を焚いたこともないのに、穴窯を造り薪を割り始めた。今考えたら、全くの無謀な行為と言えるが、それが貴重な経験となり、今を支えているのは確かだ。 

 

寄りかかる壁のない所に薪を積むのは、結構難しい。いいかげんに積むと、必ず崩れるのだ。何度か崩して、ようやく崩れない方法を発見した。

そして、上手く積むためには、美しく積む必要がある。美学というのは、自作ながら少しオーバーな表現で照れるが、意気込みとしてお許しいただきたい。

 

コダチダリア(木立ちダリア)、皇帝ダリアとも

 


424  櫨紅葉テニスコートに舞い下りて   洋子

2011年11月17日 | 

(はぜもみじ/テニスコートにまいおりて)

 

テニスの起源は、4500年前のエジプトにまで遡る、という。そして、現在のローンテニスは、イギリスで考案されたらしい。

 

日本にも蹴鞠(けまり)というスポーツらしきものが平安時代にあったようだが、何故か普及しなかった。ところがどうしてか、ヨーロッパでは様々なスポーツが発達した。理由はやはり、経済的な豊かさと時間的余裕ではないか、と思う。

 

球技と一口に言っても、沢山ある。

 

○ネットに向かい合って、ボールを打ち合うテニス、卓球、バレー、バドミントン

○相手のゴールにボールを入れ合うサッカー、ホッケー、ハンドボール、バスケットボール。フットボール、クリケット、ラグビー、

○その他、ゴルフ、野球、ボーリング、ビリヤード、ゲートボール

 

よくぞこれだけ考え出したものだ、と感心してしまう。折角こんなに沢山あるのだから、一つくらいはやらないと損ですぞ。

私は、50才からテニスを始めた。遅すぎたことを後悔しているが、遅くとも始めたことには、感謝している。

 

ナンテン(南天)


423  店中の時計が動く歳の市

2011年11月16日 | 

(みせじゅうの/ とけいがうごく/  としのいち)

 

 中小の小売店を守るための「大規模小売店舗法」が廃止されて、全国の商店街が疲弊してしまった。郊外に大駐車場を備えた大型店が続出し、日本全国の駅前商店街がさびれてしまったのだ。この法律は、日本を変えてしまった悪法だろう。これも、アメリカの圧力に屈したためだという。

 

 今話題の、TPPにしても日本の将来をどうするのか、という大前提がない。工業は、産業廃棄物を大量生産して、国土を汚染するばかりなのであって、農業こそが、未来の日本を守る一番大事な産業だ、ということを政治家は無視している。

 

 さて、壁にずらりと並んだ掛時計。勿論、ゼンマイ仕掛けの頃の時計のことだ。今では大型店に仕事を奪われ、掛け時計を並べる町の時計店は、たぶん日本から絶滅しただろう。

 

ウンシュウミカン(温州蜜柑)、早生蜜柑とも

 

 

 


422  窯封ずよく梟の鳴く日なり

2011年11月15日 | 

(かまふうず/よくフクロウの/なくひなり)

 

 回りを山に囲まれているからと言って、毎日フクロウが鳴いているわけではない。どういうわけか毎年冬になるとやって来て、鳴いている。留鳥だから1年中いるわけだが、子育ても終わっているし、国内を移動している途中なのかもしれない。

 

 素人の私でも、フクロウ、ミミズク、アオバズク、コノハズクなど、見たことはなくとも名前だけはテレビなどで知っているから、鳴き声はインターネットで調べた。フクロウに間違いない。

 

 私は只今、窯詰めの真っ最中で、24日から窯焚きの予定。だから事実は「窯詰やよく梟の鳴く日なり」とすべきだが、「窯封ず』の方が、窯詰めの終わった達成感と、これから始まるべき窯焚きへの期待感があるはずだ。

 

コブクザクラ(小福桜)


421  埋火や風の音にも心寄せ   聡子

2011年11月14日 | 

(うづみびや/かぜのおとにも/こころよせ)

 

 埋火とは、消えないように灰の中に埋めた炭火のことで、現代では囲炉裏か茶道の炭だろう。しかし、最近の気密性の高い住宅では、一酸化炭素中毒で死亡することがあるから、注意が必要だ。

 

 さて、この句。「埋火」というが、419回の「火事赤し」と同様、恋愛感情を指しているのではないのか。下司の勘繰りと言われるかもしれないが・・・・・そう解釈させる理由は、「心寄せ」にもあるし、「風の音にも」の「も」にもある。

 

つまり、ひそかにある男性に心を寄せている作者が、その切ない思いに沈みながら、風の音を聞いている。これで謎が解けたような気がするが、意味深長な句ではある。

 

アサギマダラ

 

こいつは、日本で唯一渡りをする蝶

信州から台湾まで

2000キロを飛ぶというからすごい。

 

しかし、今頃は四国か九州あたりのはずなのに

随分のんびりやさんだ。

これから、箱根を越えるのだが、

寒くならないうちに

早くお行き!!!